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メタ解析
頸部動脈解離関連脳梗塞患者に対する血栓溶解療法
Safety and Efficacy of Thrombolysis in Cervical Artery Dissection-Related Ischemic Stroke: A Meta-Analysis of Observational Studies
結論 頸部動脈解離(CAD)による急性脳梗塞患者において,血栓溶解療法の安全性は非施行と同等のようであり,また有効性も同様と考えられた。CAD患者に対する血栓溶解療法の有効性は,さまざまな原因による脳卒中患者に対するそれと同様に有効であったことから,CAD関連脳梗塞患者に対する血栓溶解療法を否定すべきではない。しかしながら,本結果は大規模無作為化試験による検証が必要である。
コメント 急性脳梗塞おける血栓溶解療法は大動脈解離合併例では禁忌であるが,頸部動脈解離に伴う脳梗塞は「rt-PA静注療法適正治療指針第2版」でも禁忌として言及されていない。本研究は,内頸動脈や椎骨動脈の頸部での動脈解離に伴う脳梗塞における血栓溶解療法を支持する研究結果として,重要である。(矢坂正弘

目的 血栓溶解療法は脳梗塞患者に対する第一選択の治療法と考えられているが, CAD患者に対する血栓溶解療法の安全性・有効性については議論が分かれている。本メタ解析では,観察研究のデータを用い,CAD関連脳梗塞患者における血栓溶解療法の有効性(転帰良好[modified Rankin Score:mRS 0~2],転帰優良[mRS 0~1]),安全性(頭蓋内出血,死亡,脳卒中再発)を検討した。
方法 PubMed,Web of Science,EMBASE,Cochrane Library,CNKIデータベースを,以下の検索語を組み合わせて検索(2015年5月まで)。
(‘carotid artery dissection’ or ‘vertebral artery dissection’ or ‘cervical artery dissection’) and (‘stroke’ or ‘brain ischemia’ or ‘brain infarction’) and (‘thrombolysis’ or ‘recombinant tissue plasminogen activator’ or ‘rtPA’ or ‘tissue plasminogen activator’ or ‘tPA’ or ‘urokinase’ or ‘pro-urokinase’)
言語は英語または中国語に限定した。
対象:(1) CADによる脳梗塞患者において血栓溶解療法と非血栓溶解療法を比較,または血栓溶解療法のみを検討(主要解析またはサブ解析の別は問わない),(2)全対象がCAD関連脳梗塞患者であり,WHO基準により脳梗塞を診断,(3)適切な画像検査によりCADを確認(カラーデュプレックス超音波,CT血管造影,MRA,デジタルサブトラクション血管造影),(4)観察研究,(5)追跡不能10%未満。
除外:頭蓋内へ解離が進展した患者,頸部動脈に進展したその他の動脈解離を有する患者,個別症例報告(対象が2例未満)。
対象 後向き観察研究10件。
846例(血栓溶解療法施行174例[うち静注148例]+非施行672例)。
主な結果 ・3ヵ月後の転帰良好(血栓溶解療法施行9研究,非施行3研究)
3ヵ月後の転帰良好について,血栓溶解療法群(53.7%)と非施行群(58.2%)の間に有意差は認められなかった(統合OR 0.782,95%CI 0.495-1.332,χ2= 0.594,p=0.441)。
非施行群で出版バイアスが認められた(Begg’s test:p=0.296,Egger’s test:p=0.04)。

・3ヵ月後の転帰優良(血栓溶解療法施行9研究,非施行4研究)
3ヵ月後の転帰優良は,血栓溶解療法群(34.4%)のほうが非施行群(52.4%)より少なかった(統合OR 0.489,0.312-0.767,χ2 = 9.143,p=0.002)。
非施行群で試験間の不均一性が認められた(I2=79.266,p=0.002)。

・頭蓋内出血(血栓溶解療法施行9研究,非施行4研究)
症候性頭蓋内出血は非施行群の1例のみであった。
頭蓋内出血発現率は血栓溶解療法群(12.3%)のほうが非施行群(7.4%)より高かった(統合OR 2.647,1.101-6.365,χ2=4.127,p=0.042)。
非施行群における頭蓋内出血の結果について,試験間の不均一性が認められた(I2=85.563,p=0.000)。

・死亡(血栓溶解療法施行9研究,非施行4研究)
死亡は血栓溶解療法群7.8%,非施行群1.6%で,有意差を認めなかった(統合OR 6.361,0.735-55.038,χ2=2.268,p=0.132)。

・脳卒中再発(血栓溶解療法施行5研究,非施行3研究)
脳卒中再発は血栓溶解療法群4.9%,非施行群6.3%で,有意差を認めなかった(統合OR 0.522,0.135-2.011,χ2=0.420,p=0.517)。
文献: Lin J, et al. Safety and Efficacy of Thrombolysis in Cervical Artery Dissection-Related Ischemic Stroke: A Meta-Analysis of Observational Studies. Cerebrovasc Dis 2016; 42: 272-9. pubmed
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