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GWTG-Stroke prior antithrombotic use
結論 脳梗塞発症前の抗血栓療法は,発症後の転帰改善と独立して関連していた。適切な患者に対する抗血栓療法は,脳卒中予防を超えたベネフィットをもたらす可能性がある。
コメント 心房細動や心房粗動例における抗凝固療法の転帰への影響に注目すると,未施行群と比較し,脳梗塞発症前にワルファリンがPT-INR>1.4で管理されていた群では転帰が良く,≦1.4で管理されていた群では転帰がより不良だったと報告されている。これは,低用量を含めPT-INR>1.4でのワルファリンによる抗凝固作用によって惹起される線溶系相対的優位状態が,脳梗塞の軽減に貢献しているものと推察される。一方,PT-INR≦1.4で管理されていた群では,凝固因子の産生は抑制されずにプロテインCの産生のみが抑制され,未施行群よりも強い凝固亢進状態が惹起されていた可能性がある。(矢坂正弘

目的 抗血栓療法は脳卒中一次/二次予防の柱であり,発症前の使用は初期の梗塞拡大を抑え,転帰良好と関連する可能性がある。本研究は米国のGet With The Guidelines-Strokeのデータを用い,(1)脳卒中発症前の抗血栓療法施行の有無別による患者特性,(2)発症前の抗血栓療法が退院時の転帰と関連しているか,またその関連は抗血栓療法の適応病態により異なるか,(3)心房細動/粗動患者において,発症前のwarfarin使用が転帰と関連しているかについて,検討を行った。評価項目:院内死亡率,自宅への退院,退院時の自立歩行,退院時の後遺障害(modified Rankin Score:mRS≧2),入院期間。
デザイン 登録研究。
セッティング 多施設(1,661施設),米国。
期間 対象入院期間は2011年10月1日~2014年3月31日。
対象患者 540,993例。当該期間に脳梗塞のため入院した患者連続例。
【除外基準】他施設へ搬送,発症前の抗血栓療法に関するデータがない,など。
【発症前の抗血栓療法の有無別の患者背景】年齢中央値は抗血栓療法群75歳,非治療群67歳。それぞれの女性50.97%,51.41%。人種:白人73.97%,65.86%,黒人14.73%,19.38%,ヒスパニック5.64%,7.56%,アジア人2.23%,3.15%。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)中央値4,4。高血圧82.96%,69.11%,糖尿病38.60%,27.86%,冠動脈疾患/心筋梗塞既往36.08%,12.43%,脳卒中既往34.98%,14.18%,心房細動/粗動26.84%,9.37%。頸動脈狭窄5.48%,1.59%。(ここにあげた項目は,性別[p=0.001]以外p<0.0001)
抗血栓療法群における入院時の治療法:抗血小板薬87.34%,抗凝固薬19.82%。warfarin投与例におけるINR中央値1.69。
治療法 発症前の抗血栓療法は,当該脳卒中発症前になんらかの抗凝固療法(内訳:warfarin 77.7%,dabigatran 7.8%,rivaroxaban 6.6%など)または抗血小板療法(内訳:aspirin 86.6%,clopidogrel 23.1%など)をうけていたものと定義。
追跡完了率
結果

●評価項目
250,104例(46%)は脳卒中発症前にいかなる抗血栓薬も投与されていなかったが,このうち約1/3は血管疾患(冠動脈疾患,脳卒中/TIA既往,心房細動/粗動)を有していた。
臨床および施設関連の因子で補正後,脳卒中発症前に抗血栓療法をうけていた症例は非治療例にくらべ,血管疾患の有無にかかわらず,転帰が良好であった。入院期間については,血管疾患を有する症例で抗血栓療法のベネフィットを認めた。
院内死亡率:補正後OR 0.82,95%CI 0.80-0.84,p<0.0001,交互作用のp=0.29。
自宅への退院:OR 1.18,1.16-1.19,p<0.0001,交互作用のp=0.33。
退院時の自立歩行:OR 1.15,1.13-1.16,p<0.0001,交互作用のp=0.43。
退院時のmRS 0~1:OR 1.15,1.12-1.17,p<0.0001,交互作用のp=0.55。
入院期間:OR 0.96,0.95-0.97,p<0.0001,交互作用のp=0.0049。
心房細動/粗動患者121,287例(抗凝固療法をうけていた患者はINR値データのある症例に限定)のうち,INR≦1.4の症例はwarfarin非投与にくらべ,院内死亡率が高く,自宅への退院の割合が低く,入院期間が長かった。退院時の自立歩行については有意差を認めなかった。
院内死亡率:INR>1.4;OR 0.99,0.92-1.07,p=0.79,INR≦1.4;OR 1.19,1.08-1.31,p=0.0005。
自宅への退院:INR>1.4;OR 1.12,1.08-1.18,p<0.0001,INR≦1.4;OR 0.81,0.76-0.87,p<0.0001。
退院時の自立歩行:INR>1.4;OR 1.20,1.15-1.26,p<0.0001,INR≦1.4;OR 0.96,0.90-1.03,p=0.29。
退院時のmRS 0~1:INR>1.4;OR 1.09,1.01-1.17,p=0.028,INR≦1.4;OR 0.89,0.80-0.99,p=0.028。
入院期間:INR>1.4;OR 0.93,0.92-0.95,p<0.0001,INR≦1.4;OR 1.10,1.08-1.13,p<0.0001。

●有害事象

文献: Myint PK, et al. Prior Antithrombotic Use Is Associated With Favorable Mortality and Functional Outcomes in Acute Ischemic Stroke. Stroke 2016; 47: 2066-74. pubmed
関連トライアル GWTG-Stroke Registry risk of sICH, GWTG-Stroke time to treatment, Muchada M et al, North Dublin Population Stroke Study, Ontario Stroke Registry, PROSPER, Tziomalos K et al, WASID antithrombotic failures
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