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EmbraceAC
結論 TTRについて,tecarfarinのwarfarinに対する優越性は認められなかった。tecarfarin投与患者におけるTTRは,良好に管理されたワルファリン患者におけるそれと同等であり,大出血は少なく,血栓イベントを認めなかったことから,tecarfarinは安全で忍容性にすぐれているようであった。一部の集団でtecarfarinの好ましい傾向がみられたことから,本剤は有望な経口抗凝固薬であり,更なる研究に値する。
コメント tecarfarinはカルボキシルエステラーゼにより代謝されるため,チトクロームが介在する代謝に関連する変動性を回避できる。したがって本研究は,tecarfarinがwarfarinに比してTTRが優れていることを示すため,プロトコールが立案されている。しかしながら,結果的にはTTRの優越性,イベント発症率の低下は認められなかった。一部の集団でtecarfarinの好ましい傾向がみられたとの記載があるが,primary endpointで差がないサブグループ解析の意義は低い。今後,さらなる検討が必要であろう。(是恒之宏

目的 新規ビタミンK拮抗薬tecarfarinは,カルボキシルエステラーゼにより代謝されるため,チトクロームが介在する代謝に関連する変動性を回避できる。本試験は,tecarfarinによる抗凝固療法の質をワルファリンと比較した。主要評価項目:%TTR。
デザイン 無作為割付,二重盲検,intention-to-treat解析(有効性),第II/III相,NCT00691470。
セッティング 多施設(49施設),米国。
期間 登録期間は2008年5月12日~2009年5月12日。平均治療期間はtecarfarin群272日,warfarin群287日。
対象患者 612例(ITT解析対象は607例)。18歳超,warfarin服用経験の有無は問わず,長期経口抗凝固療法の適応(心房細動,長期抗凝固療法を要する人工心臓弁,静脈血栓塞栓症既往により長期間の抗凝固療法が必要,心筋梗塞既往,抗凝固療法を要する心筋症,抗凝固療法を要する凝固能亢進状態)を1つ以上有する患者。
【除外基準】脳梗塞発症から3ヵ月以内または頭蓋内出血/障害を伴う脳梗塞の既往,末期腎不全,酸素補給療法中の進行性肺疾患,うっ血性心不全(クラスIV),コンプライアンスおよびデータ評価に影響を及ぼす状態(認知症,重度の精神障害,薬物乱用),NSAIDsを日常的に服用中の患者。
【患者背景】平均年齢はwarfarin群67.2歳,tecarfarin群68.5歳。それぞれの男性62.0%,65.5%。白人93.8%,94.1%。高血圧73.8%,79.5%。脂質異常症71.8%,75.9%。糖尿病21.6%,26.7%。癌既往20.7%,29.6%。aspirin服用33.1%,32.6%。心房細動患者における平均CHA2DS2-VAScスコア3.0,3.1。warfarin服用経験あり94.4%,94.1%。狭心症15.4%,15.0%,心筋梗塞既往16.5%,15.3%,冠血行再建術既往25.6%,26.7%。一過性脳虚血発作/頸動脈疾患9.8%,12.4%,脳梗塞既往8.9%,7.8%。抗凝固療法の適応:心房細動72.8%,76.5%,深部静脈血栓症/肺塞栓症16.1%,15.0%,心筋症14.1%,14.7%,機械弁15.7%,14.7%。出血既往:小出血34.1%,37.5%,大出血2.0%,1.6%,貧血既往9.8%,11.4%,CPY2C9遺伝子型:野生型(*1/*1) 63.0%,70.4%,ヘテロ接合体(*1/*2,*1/*3) 33.1%,26.0%。
治療法 warfarin服用歴*,機械弁,低用量aspirin服用の有無により層別後,以下の2群に無作為割付。試験薬は試験登録時期により6~12ヵ月投与した。
tecarfarin群:307例(ITT解析303例)。
warfarin群:305例(304例)。
warfarin服用歴を有する患者は,tecarfarinによるrun-in(3週間,オープンラベル)を実施後無作為割付行い,tecarfarin群に割り付けられた場合はrun-inの用量,warfarin群の場合は過去の維持用量を投与した。
試験薬の用量調整は盲検化されていない中央委員会により行った。tecarfarinの初回用量はVKORC1遺伝子型にもとづくノモグラムより調整し,その後は委員会の裁量とした。warfarin群に割り付けられたwarfarin服用未経験の患者では,3日目よりINRによる用量調整を開始するまで,5mg 1日2回を2日間投与した。抗凝固薬に対する感受性の増強が予測される患者では,両群とも低用量から開始した。warfarin群では,CYP2C9阻害薬投与中,>75歳,衰弱,体重<60 kg,栄養不良状態,うっ血性心不全,肝疾患,最近の大手術施行例に対しては,負荷用量を減量した。
なお,低用量aspirin(81~100mg)は許可した。clopidogrelは前向きには禁止としたが,ステントなど適応が生じた場合は許可した。経口抗凝固療法の中断を要する低分子量heparinによるブリッジングは許可とした。
*:warfarin未経験は,warfarinの服用経験がない,現在服用していない,経口抗凝固薬の新規適応により≦7日間投与したものと定義。
追跡完了率 99.9%(追跡不能2例)。
結果

●評価項目
tecarfarin群のTTRは72.3%で,warfarin群71.5%と同程度であった(p=0.51)。
以下のサブグループでも群間差および交互作用を認めなかった。
CYP2C9と相互作用を有する薬剤を服用している患者(tecarfarin群92例, warfarin群87例):72.2%,69.0%,p=0.15,交互作用p=0.16。
機械弁患者(42例,41例):68.4%,66.3%,p=0.51,交互作用p=0.66。
何らかのCYP2C9変異を有し,CYP2C9と相互作用を有する薬剤を服用している患者(24例,31例):76.5%,69.5%,p=0.09,交互作用p=0.24。
血栓塞栓イベント(tecarfarin群1例 vs. warfarin群6例),大出血(5例, 6例),死亡(3例,2例)は同程度であった(p=0.41)。

●有害事象
治療に関連した有害事象はtecarfarin群89.9%,warfarin群88.2%,重篤な有害事象を1回以上経験した患者は21.8%,17.7%。

文献: Whitlock RP, et al. A randomised, double blind comparison of tecarfarin, a novel vitamin K antagonist, with warfarin. The EmbraceAC Trial. Thromb Haemost 2016; 116: 241-50. pubmed
関連トライアル ARISTOTLE time in therapeutic range, Crowther MA et al, ENGAGE AF-TIMI 48 transition to open-label anticoagulation, EU-PACT, RE-LY quality of INR control, warfarin投与における遺伝子型用量調整と臨床的アルゴリズムの比較, 新規経口抗凝固薬4剤のwarfarinに対する有効性・安全性
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