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メタ解析
脳梗塞再発予防におけるaspirin早期投与の効果
Effects of aspirin on risk and severity of early recurrent stroke after transient ischaemic attack and ischaemic stroke: time-course analysis of randomised trials
結論 一過性脳虚血発作(TIA)または軽症脳卒中発症後の患者において,薬物治療は早期再発リスクを大幅に低減し,治療の鍵を握るのはaspirinであった。aspirinの早期有効性が大きかったことから,TIAの可能性が考えられる場合には自己投与するよう,一般に啓発するべきである。
コメント TIAや軽症脳梗塞患者におけるアスピリンによる早期再発リスクの低減効果を12試験のメタ解析で示し,発症早期のアスピリン投与を勧めている。考察で,TIAの可能性が考えられる場合は自己判断でアスピリンを内服するように啓発すべきと記されているが,小さな脳内出血がTIA様症状を呈し得ること,本邦では脳出血症例が多いことや頭部画像診断を容易に受けられることを考慮すると,本邦ではまず,脳卒中診療施設への早期の受診を勧めるべきであろう。(矢坂正弘

目的 先行研究より,aspirinがTIAまたは脳卒中後の再発の長期リスクを13%低減することが示されたことから,aspirinは二次予防に推奨されている。しかしながら,重症脳卒中リスクが非常に高いのはTIAまたは軽症脳梗塞発症後の数日のみで,観察研究からは,早期薬物療法のベネフィットは急性期のほうが長期より大きいことが示されている。そこで,早期aspirin投与の短期ベネフィットは過小評価されているという仮説を検証するため,aspirinまたはdipyridamoleの脳卒中再発リスクおよび重症度に対する有効性を,無作為割付後6週未満,6~12週,12週超に層別化して検討した。評価項目:脳梗塞再発,後遺障害のあるもしくは致死的脳梗塞再発,全脳卒中再発,全致死的脳卒中,脳内出血,急性心筋梗塞。
方法 2016年1月31日まで,ATT Collaboration,システマティックレビュー,Cochrane Collaborationにて,TIA/脳梗塞後の二次予防としてaspirinまたはdipyridamoleを対照薬と比較したRCTを検索。進行中の試験,学会発表アブストラクトは含めなかった。
対象:(1)TIA/脳梗塞患者における脳卒中その他の血管イベント二次予防として,aspirin(用量,併用薬の有無は問わず)を抗血小板薬非投与または抗凝固薬と比較した試験,(2)急性脳梗塞患者における早期治療と早期二次予防について,他の抗血栓薬の併用の有無に関わらず,aspirin(用量は問わず)を非aspirinと比較した試験,(3) TIA/脳梗塞患者における脳卒中またはその他の血管イベントの二次予防として,dipyridamole(用量は問わず)を非dipyridamole(他の抗血小板薬の併用の有無を問わず)と比較した試験。
対象 12試験(aspirin単独 vs. プラセボ:11試験,aspirin+dipyridamole vs. 非 aspirin:3試験),15,778例。
主な結果 ・脳梗塞再発
aspirinは対照薬にくらべ,発症後6週以内の脳梗塞再発リスクを抑制し(aspirin群84/8,452 例,対照薬群175/7,326例,HR 0.42,95%CI 0.32-0.55,p<0.0001),その効果は12週まで維持されたが(HR 0.47,0.38-0.58,p<0.0001),12週以後は効果が消失した(HR 0.97,0.84-1.12,p=0.67,mRSシフト解析:OR 1.00,0.77-1.29,p=0.97)。試験間の不均一性は認めなかった。
TIAまたは軽症脳卒中患者では,aspirinの対照薬に対する効果が特に大きかった(0~6週:HR 0.38,0.27-0.53,p<0.0001,1~12週:HR 0.46,0.35-0.59,p<0.0001)。
重症脳卒中患者を対象とした3試験(40,531例)では,14日後の脳梗塞再発リスク低減は,ベースライン時の神経学的欠損がそれほど重篤でない患者において明白で,治療開始2日目までが大きかった(2~3日:HR 0.37,95%CI 0.25-0.57,p<0.0001)。

・後遺障害を伴う/致死的脳梗塞
aspirinは対照薬にくらべ,後遺障害を伴う/致死的脳梗塞を抑制した(0~6週:36/8,452例 vs 110/7,326例,HR 0.29,0.20-0.42,p<0.0001,0~12週:HR 0.34,0.25-0.46,p<0.0001)。
TIA/軽症脳卒中患者では,aspirinの対照薬に対する効果は特に大きかった(0~2週:HR:0.07,0.02-0.31,p=0.0004,0~6週: HR 0.19,0.11-0.34,p<0.0001,0~12週:HR 0.26,0.17-0.40,p<0.0001)。

・早期脳梗塞再発の重症度
aspirinの有効性の一因として,再発脳梗塞の重症度の大幅な低減があげられた(mRSシフト解析:OR 0.42,0.26-0.70,p=0.0007)。この効果は用量,患者特性,TIAまたは脳卒中の病因とは独立していた。

・dipyridamole+aspirinとaspirin単独の比較
dipyridamoleのaspirinへの追加投与について,12週以内の脳梗塞再発リスクおよび重症度に対する有効性を認めなかった(OR 0.90,0.65-1.25,p=0.53,mRSシフト:OR 0.90,0.37-1.72,p=0.99)。
しかし,dipyridamole追加投与は12週以後のリスクを抑制し(OR 0.76,0.63-0.92,p=0.005),特に後遺障害を伴う/致死的脳梗塞に対する有効性が認められた(OR 0.64,0.49-0.84,p=0.0010)。
文献: Rothwell PM, et al. Effects of aspirin on risk and severity of early recurrent stroke after transient ischaemic attack and ischaemic stroke: time-course analysis of randomised trials. Lancet 2016; 388: 365-75. pubmed
関連トライアル alteplase静注における治療時間の遅れ,年齢,脳卒中重症度の影響, aspirin長期連用による癌死リスク抑制効果, aspirin連日投与による癌転移抑制効果, aspirin連日投与による短期の癌発生,癌死,非血管死抑制効果, AVERROES previous stroke/TIA, CAST, CHANCE functional outcome, EAFT 1993, EARLY, ESPRIT , ESPRIT 2006, EXPRESS risk of bleeding, FASTER, HERMES, IST 1997, Koton S et al, MATCH, PERFORM, PRoFESS disability and cognitive function, 虚血性脳卒中患者に対するrt-PA療法, 脳卒中/TIA既往患者におけるaspirin+dipyridamole併用とaspirin単独投与の比較, 脳卒中/TIA後のDAPTによる二次予防
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