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JPPP stroke substudy
結論 脳卒中リスクを有する高齢の日本人患者における脳卒中一次予防について,aspirinによる正味のベネフィットは示されなかった。aspirin治療にかかわらず,年齢>70歳,喫煙,糖尿病は脳卒中のリスク因子であった。
コメント JAMA(2014年)に掲載されたJPPPの,脳卒中に関するアスピリンの有効性を評価したサブ解析研究である。5年間の脳卒中の累積発症率は2%強と低く,良好なリスク管理が寄与したと考えられる。虚血性脳卒中,出血性脳卒中への影響については,欧米データ(ATT)と同様の傾向を示した。わが国における脳卒中リスクを有する高齢者の脳卒中一次予防に対する抗血小板療法のエビデンスとして,意義深い。(岡田靖

目的 aspirinによる脳卒中一次予防の有効性については,欧米で行われた臨床試験では議論がわかれている一方,脳内出血リスクが高いアジア人では試験が行われていない。本解析では,日本人患者における虚血性脳卒中および脳内出血について,探索的事後解析によりaspirinの有効性を評価した。なおJPPPの有効性主要評価項目は非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中+心血管死の複合であった。
デザイン JPPPはPROBE試験。NCT00225849。
セッティング 多施設(1,007施設),日本。
期間 登録期間は2005年3月~2007年6月。追跡終了は2012年5月。追跡期間中央値は5.02年。
対象患者 14,464例。60~85歳,アテローム動脈硬化性疾患の診断をうけておらず,高血圧(SBP≧140mmHgまたはDBP≧90mmHg),脂質異常症(総コレステロール[C]≧220mg/dL,LDL-C≧140mg/dL,HDL-C≦40mg/dL,トリグリセリド≧150mg/dL),糖尿病(空腹時血糖値≧126mg/dL,75g糖負荷試験にて全血糖値または2時間血糖値≧200mg/dL,糖化ヘモグロビン≧6.5%)のいずれかを有する患者。
【除外基準】冠動脈疾患または脳血管疾患(TIAを含む)既往,手術もしくはインターベンションを必要とするアテローム動脈硬化性疾患,心房細動,消化性潰瘍,出血性疾患,aspirinアレルギー/過敏,抗血小板薬/抗凝固薬服用中。
【患者背景】平均年齢はaspirin群70.6歳,非投与群70.5歳。各群の男性42.3%,42.4%。BMI 24.2kg/m2,24.2kg/m2。高血圧84.9%,84.8%。脂質異常症72.0%,71.8%。糖尿病33.9%,33.9%。喫煙13.3%,12.9%。
治療法 JPPPは,リスク因子により層別化後,以下の2群に無作為割付。
aspirin群:7,220例。投与中の薬物療法+低用量aspirin 腸溶錠1日1回投与。
非投与群:7,244例。投与中の薬物療法のみ。
追跡完了率 追跡脱落はaspirin群791例,非投与群753例。
結果

●評価項目
致死的/非致死的脳卒中の5年累積発症率は,両群で同程度であった(aspirin群2.068%,非投与群2.299%,HR 0.927,95%CI 0.741-1.160,p=0.509)。
全脳卒中(1.809%,1.828%,HR 1.011,0.791-1.291,p=0.932),虚血性脳卒中(1.199%,1.451%,HR 0.842,0.631-1.123,p=0.240)も同様の結果であった。
aspirinは有意ではないが虚血性脳卒中/TIAリスクを低減し(HR 0.783,95%CI 0.606-1.012,p=0.061),同様に有意ではないが脳内出血リスクを上昇させた(0.748%,0.511%,HR 1.463,95%CI 0.956-2.237,p=0.078)。
脳血管イベントのリスク因子は,70歳以上(HR 2.207,1.718-2.836,p<0.001),喫煙(HR 1.513,1.111-2.061,p=0.009),糖尿病(HR 1.555,1.237-1.954,p<0.001)であった。
70歳以上を2点,喫煙,糖尿病を各1点とし,低リスク(0~1点),高リスク(2点以上)に分けて解析を行ったが,脳血管イベントの5年累積発症率はaspirin群,非投与群で同程度であった。
低リスク:1.154%,1.390%,HR 0.839,0.529-1.330,p=0.4538。
高リスク:2.722%,2.961%,HR 0.955,0.739-1.234,p=0.7246。

●有害事象

文献: Uchiyama S, et al.; JPPP Study Group. Aspirin for Stroke Prevention in Elderly Patients With Vascular Risk Factors: Japanese Primary Prevention Project. Stroke 2016; 47: 1605-11. pubmed
関連トライアル AAA, aspirinの一次および二次予防効果(ATT), AVERROES, AVERROES previous stroke/TIA, CAST-IST, CHANCE, CHARISMA bleeding complications, clopidogrel追加による死亡率抑制効果, COMPASS, Dutch-TIA Trial, EAFT 1993, FASTER, INSPIRE, JPPP, MATCH, PRoFESS, SPIRIT, SPS3, SPS3 post hoc analysis, SPS3 predictors of mortality, TRA 2P-TIMI 50 diabetes mellitus, TRILOGY ACS elderly patients, WARCEF, WARSS, WASID, WHS, 血管疾患患者に対する抗血小板療法, 脳卒中/TIA後のDAPTによる二次予防
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