抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
ENCHANTED Enhanced Control of Hypertension and Thrombolysis Stroke Study
結論 本試験の登録患者はおもにアジア人であったが,低用量alteplaseは標準用量にくらべ,90日後の死亡または後遺障害について非劣性は認められなかった。症候性脳内出血は低用量群のほうが有意に少なかった。
コメント 本試験の登録患者には,わが国以外のアジア人種が60%以上を占めており,alteplaseのグローバル標準用量(0.9mg/kg)と低用量(0.6mg/kg)とで転帰を比較した,意義ある研究である。低用量で頭蓋内出血が低下しても,後遺症の割合で非劣性が示せないことが明らかになった。今後,アジア太平洋地区では,適正なリスク管理の対象患者について,標準用量治療がより普及するかもしれない。(岡田靖

目的 虚血性脳卒中患者に対し,rt-PA 0.9mg/kg静注は脳内出血リスクが上昇するものの,有効な治療法である。しかし,日本では0.6mg/kg静注が用いられており,また0.9mg/kgを投与された米国のアジア人患者で症候性脳内出血リスクの上昇が報告されたことなどから,アジアでの投与量にはばらつきがみられる。本試験は,alteplase低用量の有効性について,標準用量との比較を行った。有効性主要評価項目:90日後の死亡+後遺障害(mRS 2~6)の複合。安全性主要評価項目:脳内出血( SITS-MOST基準を主に用いた)。
なお本試験では,2×2 quasi-factorialデザインより,SBP 150~220mmHgの患者935例において,早期の強力な降圧治療とガイドラインにしたがった降圧治療との比較も行った。
デザイン 2×2 quasi-factorial,PROBE,非劣性試験(非劣性マージン1.14)。modified-intention-to-treat解析。NCT01422616。
セッティング 多施設(111施設),13ヵ国。
期間 登録期間は2012年3月~2015年8月。
対象患者 3,310例。18歳以上,alteplase静注に関するガイドライン推奨基準に合致した,急性虚血性脳卒中患者。
【除外基準】-
【患者背景】年齢中央値は低用量群68歳,標準用量群67歳。各群の女性38.3%,37.4%。アジア人63.2%,63.2%。病歴:高血圧62.6%,63.0%,脳卒中17.4%,18.4%,冠動脈疾患15.5%,13.6%,心房細動20.1%,18.7%,糖尿病19.7%,19.6%,高コレステロール血症18.0%,15.7%,現喫煙22.9%,24.0%,脳卒中前のmodified Rankin Score(mRS) 0:81.9%,80.8%,降圧薬使用45.8%,45.3%,スタチンまたは脂質低下薬使用20.2%,17.2%,aspirinまたは他の抗血小板薬使用24.7%,21.1%,warfarin 2.9%,2.1%。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)中央値8,8。発症-治療時間中央値170分,170分。
治療法 発症-経過時間(3時間以上/未満)およびNIHSS(10以上/未満)により層別化後,以下の2群に無作為割付。治療は発症から4.5時間以内に開始した。
低用量群:1,654例。alteplase 0.6mg/kg(最大60mg)を,15%はボーラス,85%は60分かけて静注。
標準用量群:1,643例。alteplase 0.9mg/kg(最大90mg)を,10%はボーラス,90%は60分かけて静注。
併用治療(血管内治療を含む)はその国のガイドラインにしたがい行った。
追跡完了率 試験参加合意撤回または追跡脱落は,低用量群47例,標準用量群44例。
結果

●評価項目
主要転帰(mRS 2~6)は低用量群855/1,607例(53.2%),標準用量群817/1,599群(51.1%),OR 1.09,95%CI 0.95-1.25で,非劣性は認められなかった(非劣性p=0.51)。降圧治療との交互作用は認めなかった(p=0.29)。mRSの分布について,低用量群は標準用量群に対し非劣性を示した(未補正OR 1.00,95%CI 0.89-1.13,非劣性p=0.04)。
SITS-MOST定義脳内出血は低用量群17例(1.0%)で,標準用量群35例(2.1%)にくらべ抑制された(OR 0.48,95%CI 0.27-0.86,p=0.01)。降圧治療との交互作用は認めなかった(p=0.71)。
7日後の死亡は低用量群3.6%,標準用量群5.3%(OR 0.67,0.48-0.94,p=0.02),90日後の死亡はそれぞれ8.5%,10.3%(OR 0.80,95%CI 0.63-1.01,p=0.07)。

●有害事象
重篤な有害事象は低用量群25.1%で,標準用量群27.3%と同程度であった(p=0.16)。

文献: Anderson CS, et al.; ENCHANTED Investigators and Coordinators. Low-Dose versus Standard-Dose Intravenous Alteplase in Acute Ischemic Stroke. N Engl J Med 2016; 374: 2313-23. pubmed
関連トライアル alteplase静注における治療時間の遅れ,年齢,脳卒中重症度の影響, ECASS III, ECASS III additional outcomes, ESCAPE, IMS III, IST-3, IST-3 brain imaging signs, IST-3 clinically important subgroups, IST-3 mortality, J-ACT, J-MARS, Kellert L et al, Kim BJ et al, Power A et al, SAINT postthrombolysis ICH, SAMURAI rtPA Registry SITS-MOST criteria, SITS-ISTR, SITS-ISTR elderly, SITS-ISTR young patients, SITS-MOST multivariable analysis, SWIFT PRIME, SYNTHESIS Expansion, TIMS-China, Toni D et al, TTT-AIS, TTT-AIS II, 前方循環閉塞に対する血栓溶解療法
関連記事