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Loire Valley Atrial Fibrillation Project
結論 生体弁置換の心房細動患者は,非弁膜症性心房細動(NVAF)患者にくらべ,有意ではないものの,脳卒中/血栓塞栓リスクが高かった。また,CHA2DS2-VAScスコアは血栓塞栓イベントリスク上昇と独立して関連しており,経口抗凝固薬投与の有無にかかわらず,NVAF患者,生体弁置換のAF患者双方における血栓塞栓リスクの有用な決定因子であった。
コメント 現在,日本循環器学会のガイドラインには,弁膜症性心房細動の中に僧帽弁狭窄症と人工弁置換術が含まれており,人工弁置換術の中には,生体弁置換術も含まれている。これまで,心房細動で生体弁置換術を行った症例のthrombotic riskについては十分なエビデンスがなかった訳であるが,今回この論文で,生体弁自体は,独立したリスクとはならなかったことが示された。今後,ガイドラインが改定されていく中で,人工弁置換術をより限定し,機械弁置換術とする方向が示されたのではないだろうか。その意味において,たいへんキーとなる論文と考えられる。(是恒之宏

目的 僧房弁狭窄症や人工弁などの弁膜症性心房細動患者に対しては,ビタミンK拮抗薬(VKA)の投与が推奨されている。ここでは,NVAF患者ならびに生体弁置換のAF患者において,血栓塞栓症リスクを比較した。
デザイン 登録研究の後ろ向き解析。
セッティング 単施設,フランス。
期間 登録期間は2000年1月~2010年12月。追跡期間876日(中央値400日)。
対象患者 8,602例。当該期間に心房細動の診断をうけた患者全例。NVAF患者(8,053例)の定義はESC(リウマチ性弁疾患も弁補綴もないなど)にしたがい,生体弁置換のAF患者(549例)も対象とした。
【除外基準】リウマチ性僧房弁狭窄,機械弁。
【患者背景】平均年齢はNVAF患者71歳,生体弁置換のAF患者75歳(p<0.0001)。それぞれの女性38%,35%。ペースメーカーまたは植え込み型除細動器16%,23%(p<0.0001)。脳梗塞既往8%,7%。心房細動の病型(永続性)37%,52%(p<0.0001)。平均CHA2DS2-VAScスコア3.2,3.6(p<0.0001)。平均HAS-BLED出血リスクスコア1.6,1.8。
治療法 追跡期間中の薬物療法実施率は以下の通り。経口抗凝固薬:NVAF患者56%,生体弁置換のAF患者64%(p=0.0002),抗血小板薬:それぞれ36%,30%(p=0.02),ACE阻害薬/A II受容体拮抗薬:34%,44%(p<0.0001),β遮断薬:45%,40%(p=0.01),利尿薬39%,60%(p<0.0001),クラスIII抗不整脈薬42%,41%。
追跡完了率
結果

●評価項目
追跡期間中に血栓塞栓イベントは681例発症した。生体弁置換のAF患者の血栓塞栓イベント発症率は,NVAF患者と同程度であった(HR 1.10,95%CI 0.83-1.45,p=0.52,補正後HR 0.93,95%CI 0.68-1.25,p=0.61)。
脳卒中/血栓塞栓イベントリスク上昇の独立予測因子は,以下の通りであった。高齢:10歳上昇ごと,HR 1.25,95%CI 1.16-1.34,p<0.0001。
CHA2DS2-VAScスコア高値:HR 1.35,95%CI 1.24-1.46,p<0.0001。
一方,以下の項目は脳卒中/血栓塞栓イベントリスク低下と独立して関連していた。
女性:HR 0.75,95%CI 0.62-0.90,p=0.002。
退院時のVKA投与:HR 0.83,95%CI 0.71-0.98,p=0.03。
生体弁置換,部位はともに血栓塞栓イベントの独立予測因子ではなかった。
CHA2DS2-VAScスコアはNVAF患者,生体弁置換のAF患者の双方において,血栓塞栓リスクを予測した。
NVAF患者における,リスク別の脳卒中/血栓塞栓症発症率は以下の通り。
低リスク(男性0点,女性1点):VKAなし0.69%/年,VKAあり0.67%/年,中等度リスク(男性1点,女性2点):VKAなし1.71%/年,VKAあり2.06%/年,NOACあり1.67%/年,高リスク(男性>1点,女性>2点):VKAなし5.07%/年,VKAあり3.73%/年,NOACあり3.02%/年。

●有害事象

文献: Philippart R, et al. Oral anticoagulation, stroke and thromboembolism in patients with atrial fibrillation and valve bioprosthesis. The Loire Valley Atrial Fibrillation Project. Thromb Haemost 2016; 115: 1056-63. pubmed
関連トライアル Abraham JM et al, ACTIVE W paroxysmal vs sustained, ROCKET AF post hoc analysis, Sambola A et al, Suzuki S et al, Swedish Atrial Fibrillation cohort study
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