抗血栓トライアルデータベース
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J-RHYTHM Registry regional differences
結論 日本において,血栓塞栓症リスク,warfarinの使用頻度,強度,質には地域差がみられた。地域は血栓塞栓症イベントの独立予測因子であった。
コメント 全国規模で行われた心房細動レジストリーとして代表的なJ-RHYTHM Registryで,大変興味あるサブ解析結果が示された。ワルファリンの使用頻度,強度,クオリティに地域差があり,地域が血栓塞栓症の独立したイベント予測因子であるというのである。一方,大出血には地域差を認めていない。読者の方々は,是非自分が治療を行っている地域が全国の中でどのようなポジションにあるかを見ていただきたい。論文をそういう目で見ると,より興味がわいてくるだろう。ただ,これは地域ごとの平均値であり,個々人の診療アウトカムとは異なることはいうまでもない。(是恒之宏

目的 心房細動患者のうち抗凝固療法をうけている割合は国により異なるが,日本では,warfarinの使用頻度や非弁膜症性心房細動患者の予後の地域差についてはあまり知られていない。ここでは,J-RHYTHM Registry対象患者について,warfarinをベースとした抗凝固療法や転帰についての地域差を検討した。主要評価項目:血栓塞栓イベント(症候性脳梗塞,一過性脳虚血発作,全身性塞栓症)および大出血イベント(頭蓋内出血,入院を要する出血)。
デザイン 前向き登録研究。
セッティング 多施設,日本。
期間 登録期間は2009年1~7月。追跡期間は2年。
対象患者 7,516例。外来の心房細動患者連続例(病型は問わない)。
【除外基準】本解析では,僧房弁狭窄,機械弁置換,2年の追跡期間中に脱落した症例は除外。
【患者背景】症例数,平均年齢(p<0.001),男性の割合(p=0.002),平均CHADS2スコアp<0.001),warfarin使用頻度(p<0.001)を順に記す。北海道:396例,71.3歳,72.7%,1.7,79.3%,東北:655例,69.5歳,66.1%,1.7,94.2%,北関東:678例,69.9歳,73.9%,1.7,85.7%,南関東:1,582例,69.1歳,72.8%,1.5,85.7%,北越:304例,70.0歳,70.7%,1.6,94.4%,中部:1,114例,69.6歳,71.3%,1.8,83.2%,関西:948例,69.8歳,72.0%,1.6,87.1%,中国:612例,71.0歳,64.7%,1.7,86.4%,四国:384例,71.4歳,70.1%,2.1,81.0%,九州:733例,69.7歳,69.7%,1.8,89.5%。
治療法 抗凝固薬および用量は担当医の裁量により選択された。なお,本研究の患者登録は直接的経口抗凝固薬(DOAC)が認可される前に開始されたため,本解析で用いられた抗凝固薬はwarfarinのみである。INR目標治療域は日本のガイドラインにしたがい, 70歳以上では1.6~2.6,70歳未満では2.0~3.0とした。
追跡完了率 追跡脱落は110例(1.5%)。
結果

●評価項目
ベースライン時,地域により年齢,性別,心房細動の病型,合併症,CHADS2スコアを含むさまざまな臨床特性に差異がみられた。平均CHADS2スコアは四国が2.1ともっとも高く,南関東が1.5ともっとも低かった。warfarinの使用頻度は地域により異なり(p<0.001),北海道(79.3%),四国(81.0%)で低かった。ベースライン時のINRの違いは小さかったが,地域により有意差を認めた(p<0.05)。
単変量解析では,血栓塞栓イベントには地域差がみられ(p<0.001),四国がもっとも高く,北越がもっとも低かった(2年発症率:北海道2.5%,東北0.8%,北関東2.9%,南関東1.5%,北越0.3%,中部2.2%,関西0.7%,中国1.8%,四国3.6%,九州1.4%)。
大出血には地域差を認めなかった(2年発症率:北海道0.8%,東北1.5%,北関東1.3%,南関東1.7%,北越2.6%,中部2.1%,関西2.2%,中国2.6%,四国1.3%,九州2.5%,p=0.352)。
血栓塞栓症発症率と大出血イベント発症率の間に逆相関がみられた(p=0.062)。
多変量解析では,地域は血栓塞栓症の独立リスク因子であった(四国を参照として,東北:HR 0.28,95%CI 0.09-0.75,p=0.010,北越:HR 0.12,0.01-0.61,p=0.007,関西:HR 0.26,0.09-0.64,p=0.003)。

●有害事象

文献: Inoue H, et al.; J-RHYTHM Registry Investigators. Regional Differences in Frequency of Warfarin Therapy and Thromboembolism in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation - Analysis of the J-RHYTHM Registry. Circ J 2016; 80: 1548-55. pubmed
関連トライアル AFASAK 2 1999, ARISTOTLE-J, COMPARE, HAT 1, J-RHYTHM Registry anticoagulation, J-RHYTHM Registry paroxysmal vs. permanent, J-RHYTHM Registry use of warfarin, J-RHYTHM Registry warfarin use, J-RHYTHM target INR values, J-ROCKET AF, Kim TH et al, Lakkireddy D et al, Lakkireddy D et al, ROCKET AF post hoc analysis, SPAF III 1996, Suzuki S et al
関連記事 [JHRS 2014]血栓塞栓性イベント発症率の地域差―J-RHYTHM Registryより(井上博氏)