抗血栓トライアルデータベース
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Chao TF et al
結論 脳内出血既往の心房細動患者において,CHA2DS2-VAScスコア≧6ではwarfarinの使用が有用かもしれない。非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の使用により抗凝固療法の閾値を下げられるかについては,さらなる研究が必要である。
コメント 脳内出血の既往を有する心房細動患者において,CHA2DS2-VAScスコア≧6でのワルファリンの有用性をNNT(number needed to treat)やNNH(number needed to harm)を用いて示したのは興味深い。頭蓋内出血の少ないNOACの導入や十分な降圧療法によって閾値が低下するかに関する研究が,今後行われることに期待したい。(矢坂正弘

目的 脳内出血既往を有する心房細動患者において,経口抗凝固薬による脳内出血再発リスク,脳卒中抑制効果ははっきりしていない。本研究は,台湾の医療保険データベースより,warfarinまたは抗血小板薬治療下の患者と抗血栓療法を実施していない患者のリスクとベネフィットを比較した。
デザイン コホート研究。
セッティング 多施設,台湾。
期間 登録期間は1996年1月1日~2011年12月31日。
対象患者 307,640例。登録期間中に新規に心房細動の診断をうけた(退院時に,もしくは外来で2回以上診断),20歳以上,CHA2DS2-VAScスコア≧2点の患者。
【除外基準】-
【脳内出血既往例12,917例における治療別の患者背景】平均年齢*は非抗血栓療法群75.5歳,抗血小板薬群74.6歳,warfarin群69.4歳。それぞれの男性58%,58%,54%。CHA2DS2-VAScスコア中央値*6,6,6。脳卒中/一過性脳虚血発作既往*53%,65%,66%。
脳内出血の内訳はくも膜下出血12.3%,脳内出血68.6%,硬膜外出血2.5%,硬膜下出血12.6%,不明4.0%。脳内出血発症時,頭部外傷と同時4.9%,抗血小板薬投与中6.8%,warfarin投与中0.5%。脳内出血発症から心房細動と診断されるまでの平均経過時間3.3年。
*p<0.001
治療法 脳卒中予防のための治療法により,warfarin群(1,154例),抗血小板薬群(3,552例),非抗血栓療法群(8,211例)に分け,解析した。
追跡完了率
結果

●評価項目
追跡期間3.3年の間に,脳内出血は3,857例(2.4%),脳梗塞は21,017例(13.3%)発症した。
[抗血栓療法をうけていなかった157,829例における解析]
脳内出血発症率は,脳内出血既往例(8,211例)では4.2%/年で,非既往例(149,618例)0.6%/年にくらべ高かった(HR 5.27,95%CI 4.83-5.75,p<0.001)。
脳梗塞発症率も,脳内出血既往例では5.8%/年で,非既往例4.4%/年にくらべ高かった(HR 1.10,95%CI 1.02-1.19,p=0.015)。
[脳内出血既往例12,917例における解析]
脳内出血再発率は,非抗血栓療法群4.2%/年に対し,warfarin群5.9%/年(HR 1.60,95%CI 1.38-1.86,p<0.001),抗血小板薬群5.3%/年(HR 1.35,1.21-1.51,p<0.001)とも上昇した。
脳梗塞発症率は,非抗血栓療法群5.8%/年に対し,warfarin群では3.4%/年と低減(HR 0.66,95%CI 0.55-0.79,p<0.001),抗血小板薬群では5.2%/年と同程度であった(HR 0.90,0.81-1.01,p=0.060)。
[warfarin群1,154例におけるCHA2DS2-VAScスコア別の解析]
CHA2DS2-VAScスコア≧6のwarfarin投与例における脳梗塞の治療必要数(number needed to treat: NNT)は37で,脳内出血の有害必要数(number needed to harm: NNH)56より低かった。しかし,同スコア<6の患者では,NNTはNNHよりも高かった(63 vs. 53)。

●有害事象

文献: Chao TF, et al. Use of Oral Anticoagulants for Stroke Prevention in Patients With Atrial Fibrillation Who Have a History of Intracranial Hemorrhage. Circulation 2016; 133: 1540-7. pubmed
関連トライアル Abraham JM et al, ARISTOTLE risk score, ATRIA on and off anticoagulants, Ho CW et al, Lip GY et al, Nielsen PB et al, RAF, ROCKET AF intracranial hemorrhage, SPAF II 1996, Swedish Atrial Fibrillation cohort study, 脳卒中/TIA既往を有する心房細動患者における新規抗凝固薬
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