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Illan-Gala I et al Effect of anticoagulation on cardioembolic stroke severity, outcomes and response to intravenous thrombolysis
結論 脳卒中発症時(入院時)の抗凝固療法の治療強度(INR>2)は心原性脳塞栓症重症度の低減と,脳卒中発症前の抗凝固療法は転帰良好と関連していた。本研究では,抗凝固療法の血栓溶解療法への治療反応性との関連はみられなかった。
コメント PT-INR>2.0での抗凝固療法が急性期軽症脳梗塞と有意に関連するのみならず,低用量のPT-INR 1.5~1.9での抗凝固療法が急性期軽症脳梗塞と関連傾向を示し,3ヵ月後の転帰良好と有意に関連した。この背景には,低用量ワルファリン療法によって惹起される相対的線溶亢進状態があるものと推察される。本邦における高齢の非弁膜症性心房細動患者の至適治療域の低用量部分(1.6~1.9)が,本試験の低用量治療域に含まれることは興味深い。発症前抗凝固療法がrt-PA血栓溶解療法の効果に影響を及ぼさなかったのは,PT-INR>1.7の症例にrt-PA 血栓溶解療法を行わないことから,十分な抗凝固作用を呈したほとんどの症例にはrt-PA血栓溶解療法が行われなかったためであろう。(矢坂正弘

目的 先行研究より,脳梗塞発症時に至適治療域にある抗凝固療法をうけていた患者は脳卒中の重症度が低く,転帰が良好であると報告されているが,脳卒中に対する適切な治療をうけた患者においても抗凝固療法の好ましい効果が持続するかについては議論がわかれている。本研究では,心原性脳塞栓症患者において,入院時の抗凝固療法の治療域が至適である場合,血栓溶解療法静注をうけた患者を含むすべての脳梗塞患者において臨床転帰が良好となるという仮説を検証した。
デザイン 観察研究。
セッティング 単施設,スペイン。
期間 登録期間は2010年1月~2013年12月。
対象患者 475例。症状発現後72時間以内に脳卒中ユニットに入院した急性脳梗塞連続患者のうち,>18歳,発症前に機能的に自立している(modified Rankin Score[mRS]<2),心原性脳塞栓症の症例。
【除外基準】一過性脳虚血発作(TIA),脳出血。
【患者背景】年齢中央値はINR<1.5群では75.4歳,INR 1.5~1.99群 77.9歳,INR≧2群 72.8歳(p=0.017)。各群の男性46.7%,41.3%,58%。病前mRS>1 34.3%,52.4%,56%(p=0.001)。高血圧61%,71.4%,72%。糖尿病36.5%,39.7%,44%。冠動脈疾患20.4%,22.2%,18%。脂質異常症58%,65.1%,54%。喫煙13.5%,11.1%,18%。心房細動既往39.8%,81%,76%*。新規の心房細動45.3%,14.3%,8%*。うっ血性心不全12.7%,12.7%,12%。脳卒中の既往:脳梗塞10.5%,28.6%,20%*,TIA 5.2%,4.8%,8%,脳出血0.6%,1.6%,0%。脳卒中発症時の治療:抗血小板薬療法42.5%,6.3%,4%*,経口抗凝固薬10.5%,100%,100%*。心臓病および心エコー:NVAF 67.4%,63.5%,40%*;心房動脈瘤1.4%,1.6%,2%;機械弁1.9%,11.1%,34%*,生体弁0.8%,3.2%,2%,僧帽弁狭窄5.2%,9.5%,16%(p=0.014)。*p<0.001
治療法 脳卒中発症時に抗凝固薬(全例acenocumarol)を服用中であったのは151例(31.8%)で,warfarinまたは直接トロンビン阻害薬を投与されている症例はなかった。入院時のINRにより,対象患者を以下の3群に分け解析した。血栓溶解療法をうけたのは全体で34.9%であった。
INR<1.5群(抗凝固薬非投与か,投与されていてもINR<1.5):362例(76.2%)。血栓溶解療法施行は43.2%。
INR 1.5~1.99群:63例(13.3%)。同20.6%。
INR≧2群:50例(10.5%)。同0%。
追跡完了率 3ヵ月後の転帰の評価は94%。
結果

●評価項目
症候性頭蓋内出血は,血栓溶解療法施行例では2例(1.2%,すべてINR<1.5群),非施行例では5例(1.6%)で,有意差はみられなかった。
脳卒中発症前の抗凝固療法の有無を二値変数とした多変量解析では,発症前の抗凝固療法と脳卒中重症度との関連は認められなかった。INRの3群での解析では,INR≧2群はINR<1.5群に対し,軽症脳卒中(National Institute of Health stroke scale[NIHSS]<10)の可能性上昇と関連していた(OR 2.026,95%CI 1.006-4.082,p=0.048)。
発症前の抗凝固療法は,3ヵ月後の転帰良好(mRS≦2)との関連を認めた(OR 2.109,95%CI 1.173-3.789,p=0.013)。さらにINRの3群での解析では,INR 1.5~1.9群はINR<1.5群に対し,転帰良好との関連を認めた(OR 3.676,95%CI 1.510-8.946,p=0.004)。
血栓溶解療法施行のサブグループでは,発症前の抗凝固療法は転帰良好とは関連しなかった。

●有害事象

文献: Illán-Gala I, et al. Effect of anticoagulation on cardioembolic stroke severity, outcomes and response to intravenous thrombolysis. J Thromb Thrombolysis 2016; 42: 99-106. pubmed
関連トライアル ACTION Registry-GWTG stratified analysis, ASTRAL influence of arterial occlusion, Bichat Clinical Registry, De Marchis GM et al, Engelter ST et al, Fuentes B et al, Fukuoka Stroke Registry, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, Hylek EM et al, Kuramatsu JB et al, Lamberts M et al, Madrid Stroke Network, North Dublin Population Stroke Study, Power A et al, Prefasi D et al, Ruecker M et al, SAMURAI rt-PA Registry early neurological deterioration, Sarikaya H et al, Tziomalos K et al, 血栓溶解療法後の頭蓋内出血
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