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CATCH Comparison of Acute Treatments in Cancer Hemostasis
結論 活動性がんおよび症候性静脈血栓塞栓症(VTE)合併患者において,十分量のtinzaparin(175 IU/kg)6ヵ月投与はwarfarinにくらべ,VTE再発の複合評価項目を抑制せず,全死亡ならびに大出血抑制との関連はみられなかったものの,大出血ではないが臨床的に問題となる出血の抑制との関連が認められた。高リスクVTE患者における有効性の転帰が異なるかどうかについては,更なる研究が必要である。
コメント 活動性がんを有する静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象とした抗凝固療法についての研究では,過去に報告されたCLOT研究において,低分子量ヘパリンdalteparinとビタミンK阻害経口抗凝固薬とが比較され,dalteparin群で有意にVTEの再発抑制効果が示されている。しかしながら,今回のCATCH研究では,低分子量ヘパリンtinzaparinとビタミンK阻害経口抗凝固薬の間で,臨床的に問題となる出血の頻度はtinzaparin群に有意に低率であったものの,VTE再発率には両群間で差はみられなかった。これは,二つの研究間で対象患者の背景が異なり,CATCH研究では想定されたVTE再発が生じ得ず,有意差が得られなかったのか,あるいはdalteparinとtinzaparinの低分子量ヘパリンの薬剤間における効果の差なのかは明らかではない。更なる研究が必要と考えられる。(山田典一

目的 低分子量heparinは,10年以上前に行われた1件のRCTの結果にもとづき,活動性がん患者における急性VTEの治療に推奨されている。本試験ではこれらの患者において,tinzaparinの有効性および安全性をwarfarinと比較した。有効性主要評価項目:無作為割付から180日後の症候性深部静脈血栓症(DVT),症候性非致死的/致死的肺塞栓症(PE),偶発的VTE(膝窩静脈または解剖学的により近位部),偶発的PE(区域枝動脈またはそれより広範囲)の複合。安全性主要評価項目:大出血,大出血ではないが臨床的に問題となる出血,全死亡。
デザイン PROBE試験。NCT01130025。
セッティング 多施設(164施設),32ヵ国。
期間 登録期間は2010年8月~2013年11月。
対象患者 900例。活動性がんと急性症候性近位部(膝窩/大腿/腸骨静脈)DVTまたはPE,もしくはDVTとPEの両者を合併している患者で,Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)の指標でスコア0(活動に制限なし)から2(歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない)の症例。活動性がんは,悪性腫瘍を組織学的または細胞学的に確認し(基底細胞がんまたは非黒色腫皮膚がんを除く),さらに,がんの診断から6ヵ月以内,再発/局所進行/転移性疾患,がんの治療から6ヵ月以内,血液学的悪性腫瘍の完全寛解が得られていない,のいずれかに該当するものとした。
【除外基準】クレアチニンクリアランス≦20mL/分/1.73m2,抗凝固療法禁忌,試験薬への過敏性,ヘパリン起因性血小板減少症既往,無作為割付前に72時間以上の治療用量の抗凝固薬投与,血栓イベント時に治療用量の抗凝固薬投与,余命<6ヵ月,出産可能な女性,適切な避妊を用いていない男性など。
【患者背景】平均年齢はtinzaparin群59.7歳,warfarin群58.8歳。各群の女性58.4%,60.5%。平均体重67.3kg,67.1kg。原発腫瘍部位:婦人科22.5%,22.6%,結腸直腸14.7%,11.8%,上部消化管12.5%,10.9%,肺10.7%,12.4%,泌尿生殖器11.8%,9.1%,血液9.8%,11.1%,乳がん8.2%,10.4%。当該血栓イベント:症候性DVT 56.1%,57.4%,症候性DVT(偶発的PE合併)18.3%,20.0%,症候性PE 10.7%,9.8%,症候性PE(偶発的DVT合併)2.4%,2.4%,症候性PEおよび症候性DVT 10.7%,7.1%。試験薬投与期間中央値168日,127日。warfarin群の平均TTR 47.0%。
治療法 当該の血栓イベント発症または治療用量の抗凝固療法を開始してから72時間以内に,腫瘍の範囲,地域,VTE既往により層別化後,以下の2群に無作為割付。
tinzaparin群:449例。175IU/kgを6ヵ月間,1日1回皮下注。
warfarin群:451例。最初の5~10日間,PT-INRが2日連続で2.0以上となるまではtinzaparin 175IU/kgを併用。その後はPT-INR 2.0~3.0となるよう用量調整投与。PT-INRの測定は隔週1回以上とした。
血小板数<50,000μ/L,出血イベント,侵襲的手技の際には,3週を超えない試験薬の一時中断を許可した。
追跡完了率
結果

●評価項目
VTE再発はtinzaparin群31例,warfarin群45例(6ヵ月の累積発症率:7.2% vs. 10.5%,HR 0.65,95%CI 0.41-1.03,p=0 .07)。
症候性DVTは12例 vs. 24例,HR 0.48,95%CI 0.24-0.96,p=0.04。
致死的PEは17例 vs. 17例,HR 0.96,95%CI 0.49-1.88,p=0.89。
大出血(12例 vs.11例,HR 0.89,95%CI 0.40-1.99,p=0.77),全死亡(150例 vs. 138例, HR 1.08,95%CI 0.85-1.36,p=0.54)は同程度であった。
大出血ではないが臨床的に問題となる出血は,tinzaparin群で抑制された(49例 vs. 69例,HR 0.58,95%CI 0.40-0.84,p=0.004)。

●有害事象
試験薬中止に至る有害事象は,tinzaparin群5.3%,warfarin群5.1%。

文献: Lee AY, et al.; CATCH Investigators. Tinzaparin vs Warfarin for Treatment of Acute Venous Thromboembolism in Patients With Active Cancer: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2015; 314: 677-86. pubmed
関連トライアル AMPLIFY, AMPLIFY-J, CASSIOPEA, Clark NP et al, DOAC投与患者における死亡転帰, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, ELATE, FIDO, FONDAIR, Hokusai-VTE, Home-LITE, INSPIRE, Main-LITE Cancer, PADIS-PE, PREVAIL, PREVENT 2003, RE-COVER, RE-COVER II , RE-MEDY & RE-SONATE, THRIVE, Wells PS et al
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