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Staerk L et al Stroke and recurrent haemorrhage associated with antithrombotic treatment after gastrointestinal bleeding in patients with atrial fibrillation: nationwide cohort study
結論 抗血栓療法中の消化管出血による入院後,退院した心房細動患者における死亡率は高かった。患者の1/4以上がその後治療を再開していなかった。しかしながら,消化管出血発現後90日間生存した患者において,経口抗凝固薬(OAC)単剤の再開は,非再開または他の抗血栓薬再開に比べ,全死亡および血栓塞栓症リスクがもっとも低く,出血再発に関しても比較的安全であった。
コメント 他のregistryでも,なんらかの理由により抗血栓療法を中止した患者の予後が悪いことが報告されている。また,ダビガトラン中和薬イダルシズマブの試験においても,止血後ダビガトランを再開しなかった症例において,虚血イベントが多く発生している。消化管出血に関しては,今回あらためて抗血栓薬再開の重要性が示されたところであり,出血の原因究明と止血処理の後再開することがbetter outcomeをもたらすことを覚えておきたい。(是恒之宏

目的 抗血栓療法中に消化管出血が発現した心房細動患者に対し,医師は治療を再開するか否かの臨床ジレンマに直面する。しかしながら,このような患者における脳卒中リスクおよび出血リスクを検討するRCTは行われていない。本研究では,抗血栓療法中に消化管出血が発現した心房細動患者において,出血発現後の抗血栓療法再開に関連した転帰について検討した。評価項目:全死亡,血栓塞栓症/大出血/消化管出血再発による入院または死亡。
デザイン 全国規模のコホート研究。
セッティング 多施設,デンマーク。
期間 試験期間は1996年1月1日~2012年12月31日。追跡期間中央値2.0年。
対象患者 4,602例。デンマークの全住民が登録されているデータベースより同定された,抗血栓薬(ビタミンK拮抗薬,dabigatran,rivaroxaban,aspirin,clopidogrel,prasugrel,ticagrelor)単剤または併用療法中に消化管出血が発現した心房細動患者全例。
【除外基準】<30歳または>100歳,心臓弁膜症,当該イベント発症前の8週以内に股/膝関節全置換術を施行,当該イベント発症前の6ヵ月以内に深部静脈血栓症または肺塞栓症を発症。
【全体の患者背景】平均年齢78.3歳。女性45.3%。平均CHADS2スコア2.1。平均CHA2DS2-VAScスコア3.6。平均HAS-BLED出血リスクスコア2.6。当該イベント発生前日の抗血栓療法:OAC単剤23.9%,抗血小板薬単剤53.3%,OAC+抗血小板薬2剤併用19.4%,aspirin+ADP受容体拮抗薬2剤併用2.5%。合併症:脳卒中/血栓塞栓症22.5%,心筋梗塞14.8%,虚血性心疾患38.0%,末梢動脈疾患6.3%。
治療法 空白期間(初発消化管出血による入院の退院日から90日以内)中に再開された抗血栓療法により,OAC単剤群725例(ビタミンK拮抗薬714例,dabigatran 10例,rivaroxaban 1例),抗血小板薬単剤群1,314例(aspirin 1,212例,ADP受容体阻害薬[clopidogrel,prasugrel,ticagrelor]102例),OAC+抗血小板薬併用群384例(OAC+aspirin 363例,OAC+ADP受容体阻害薬21例)に分けた。また,aspirin+ADP受容体拮抗薬併用は51例,OAC+aspirin+ADP受容体拮抗薬併用は11例。
追跡完了率
結果

●評価項目
2年以内の死亡は1,745例(39.9%,95%CI 38.4%-41.3%),血栓塞栓症は526例(12.0%,11.0%-13.0%),大出血は788例(17.7%,16.5%-18.8%),消化管出血再発は546例(12.1%,11.1%-13.1%)。
空白期間に死亡,血栓塞栓症,大出血,消化管出血再発が発現した症例を除く3,409例において,2,485例(72.9%)が抗血栓薬を再開した。非再開群(924例)にくらべ,再開群で全死亡リスク低下が認められた。
OAC単剤:HR 0.39, 95%CI 0.34-0.46。
抗血小板薬単剤:HR 0.76,0.68-0.86。
OAC+抗血小板薬併用:HR 0.41,0.32-0.52。
また,血栓塞栓症リスク低下も認められた。
OAC単剤:HR 0.41,0.31 -0.54。
抗血小板薬単剤:HR 0.76,0.61-0.95。
OAC+抗血小板薬併用:HR 0.54,0.36-0.82。
OAC単剤再開は非再開にくらべ,大出血リスク上昇と関連していた(HR 1.37,1.06-1.77)。抗血小板薬単剤(HR 1.25,0.96-1.62),OAC+抗血小板薬併用(HR 1.44,1.00-2.08)は関連を認めなかった。
いずれの抗血栓療法も,再開例/非再開例の間で,消化管出血再発の差異は認めなかった(OAC単剤:HR 1.22,0.84-1.77,抗血小板薬単剤:HR 1.19,0.82-1.74,OAC+抗血小板薬併用:HR 1.34,0.79-2.28)。

●有害事象

文献: Staerk L, et al. Stroke and recurrent haemorrhage associated with antithrombotic treatment after gastrointestinal bleeding in patients with atrial fibrillation: nationwide cohort study. BMJ 2015; 351: h5876. pubmed
関連トライアル Abraham NS et al, AFASAK 2 1999, ARISTOTLE major bleeding, ENGAGE AF-TIMI 48 dose and outcomes, Lamberts M et al, Lamberts M et al, Lamberts M et al, Lamberts M et al, Lip GY et al, Nielsen PB et al, Olesen JB et al, Ontario Stroke Registry, ORBIT-AF, ORBIT-AF bridging, RAF, ROCKET AF temporary interruption, SPAF II 1996, Swedish Atrial Fibrillation cohort study, 心房細動およびVTE患者におけるNOACの大出血関連致死率, 新規経口抗凝固薬4剤のwarfarinに対する有効性・安全性
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