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Siddiqi OK et al Outcomes with prolonged clopidogrel therapy after coronary stenting in patients with chronic kidney disease
結論 慢性腎臓病(CKD)患者において,PCI施行後12ヵ月を超えるclopidogrel延長投与による死亡または心筋梗塞リスクの抑制は,第一世代DES留置患者のみでみられた。この結果は,PCI後のclopidogrel延長について,個々の患者にあわせたアプローチを支持するものである。
コメント 血管壁の動脈硬化は,腎臓における慢性腎臓病の進行と相同性がある。冠動脈疾患を有しCKDを有する症例は,動脈硬化性変化が冠動脈と腎臓の複数臓器に発現している症例として,冠動脈疾患のみの症例よりも血栓イベントリスクが高いと想定される。それゆえ,冠動脈インターベンション施行後の血栓イベントリスクも高い。クロピドグレルが高価なブランド品のみであった時代には,経済的見地から早期に中止したいとの意思が強く働いた。75 mgの錠剤のみにて減量という選択肢がないのも,日本との比較における欧米諸国の特徴であった。米国の軍人は退役後も手厚いケアが保証されている。すなわち,経済的原因によるクロピドグレル中止の圧力が米国の他の保険下の症例よりも低かった。本研究は,BMSまたは第一世代DESを留置された米国退役軍人23,042例の後ろ向き研究である。CKD非合併例は63歳程度,CKD合併例は70歳程度であった。CKD合併例ではステント留置後1~4年後の死亡,心筋梗塞の発症リスクが高いのは当然と理解される。クロピドグレル長期使用において死亡,心筋梗塞発症リスクが低かった。後ろ向きの観察研究ではあるが,「大事にされている米国の退役軍人」での観察結果なので真実性は高いと思われる。安価な後発品が広く使用可能となったうえは,血栓イベントリスクの高い症例におけるクロピドグレル長期使用にはすでに大きな問題はないと筆者は理解している。(後藤信哉

目的 CKD患者は正常腎機能患者にくらべ,PCI後の死亡または心筋梗塞リスクが高い。現行のガイドラインでは,PCI後はCKDの有無にかかわらず1年以上の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を推奨しているが,CKD患者においてDAPTを延長することのベネフィットとリスクは不明である。本研究では,DESまたはBMS留置をうけたCKD患者において,1年の推奨期間を超えてのDAPT延長が有害転帰を予防するか評価した。主要評価項目:死亡+急性心筋梗塞の複合。
デザイン 後ろ向き観察研究。
セッティング 多施設,米国。
期間 登録対象PCI施行期間は2002年4月~2006年9月。追跡期間は当該PCI施行後4年。
対象患者 23,042例。退役軍人局健康管理システムで当該期間にBMSまたは第一世代DES留置をうけた全例のうち,当該PCI施行後12ヵ月間臨床イベントが発生しなかった患者。
【除外基準】DESとBMSの両方を留置,CABGまたは前回のPCIの施行から12ヵ月以内,長期clopidogrel投与,当該PCI施行後aspirin-dipyridamoleまたはticlopidineを使用,癌または当該PCIの12ヵ月以内に化学療法を実施,透析など。
【患者背景】[DES留置患者]平均年齢は非CKDのclopidogrel使用≦12ヵ月群63.1歳,>12ヵ月群63.2歳,CKDの≦12ヵ月群70.7歳,70.3歳。それぞれの男性98.6%,98.5%,96.7%,98.0%。当該PCIの5年前から1年後までの合併症:心筋梗塞既往25.8%,29.8%,30.2%,33.3%,糖尿病39.8%,42.9%,54.0%,54.8%,脳卒中5.1%,4.8%,8.2%,7.6%。
[BMS留置患者]平均年齢は非CKDのclopidogrel使用≦12ヵ月群62.5歳,>12ヵ月群63.1歳,CKDの≦12ヵ月群70.0歳,70.3歳。それぞれの男性98.8%,98.6%,97.1%,97.6%。当該PCIの5年前から1年後までの合併症:心筋梗塞既往30.6%,34.1%,34.6%,35.9%,糖尿病39.3%,44.3%,49.9%,55.5%,脳卒中5.7%,5.6%,10.7%,10.3%。
治療法 -
追跡完了率 -
結果

●評価項目
CKD(eGFR<60mL/分)は4,880例(21%)であった。
正常腎機能患者にくらべ,CKD患者はステント留置から1~4年後の死亡または心筋梗塞リスクが高かった(DES:21% vs. 12%,HR 1.75,95%CI 1.51-2.04,BMS:28% vs. 15%,HR 2.10,1.90-2.32)。
DES留置をうけたCKD患者において,PCI後12ヵ月超のclopidogrelの使用は,死亡または心筋梗塞,死亡の抑制と関連していたが,血行再建術再施行については影響を認めなかった。
死亡または心筋梗塞:18% vs. 24%,HR 0.74,0.58-0.95,p=0.02。
死亡:15% vs. 23%,HR 0.61,0.47-0.80,p<0.0001。
血行再建術再施行:HR 0.81,0.56-1.18,p=0.28。
BMS留置のCKD患者については,いずれも有意差を認めなかった。
死亡または心筋梗塞:HR 0.95,0.79-1.13,p=0.53。
死亡:HR 0.99,0.82-1.19,p=0.88。
血行再建術再施行:HR 1.14,0.88-1.49,p=0.32。

●有害事象
-

文献: Siddiqi OK, et al. Outcomes with prolonged clopidogrel therapy after coronary stenting in patients with chronic kidney disease. Heart 2015; 101: 1569-76. pubmed
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