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TRANSLATE-ACS aspirin dose
結論 PCIをうけた心筋梗塞患者において,aspirin高用量は低用量にくらべ,主要有害心血管事象(MACE)は同程度であったが,小出血が増加した。
コメント アスピリン使用には長い実績がある。構成論的に考えれば,100 mgのアスピリンによりCOX-1活性はほぼ完全に阻害できるので,それ以上のアスピリンは不要である。しかし,米国では低用量といっても325 mgのアスピリンが歴史的に広く使用されていた。欧州,アジアの100 mgに引きずられて米国でも100 mgへの転換が進行しているが,325 mgを使用している症例が未だにいることは実態である。本研究は「アスピリンの至適用量」の問題にチャレンジした。10,213例もの大規模な観察研究である。米国では半数以上が325 mgを使用していた。各種の真実を自然に受け入れる日本と異なり,Yes/Noの明確な米国では,常に世界での唯一の正解が追求される。日本人医師の私は100 mgでも325 mgでも「どっちでもいいじゃないか?」と考えるが,米国人は異なる。この論文は循環器内科の最高権威のCirculationに発表された。アスピリン以外の抗血小板薬であれば至極当然の「高用量では血栓イベントは少なく,出血イベントは多かった」との結論であるが,基礎医学者が構成論的に「100 mgのアスピリンによりCOX-1活性は完全に阻害される」ので100 mg以上について用量依存性を考える必要はないと思っているところでは,本試験の結果は,アスピリンのCOX-1阻害以外の効果の血栓イベント予防効果を示唆するものとして興味深い。新薬ばかりが注目されるが,古い薬にも未知の部分がまだまだあることを示した研究である。(後藤信哉

目的 aspirinは心筋梗塞後に世界でもっとも広く使われている抗血小板薬であるが,ステント留置後の至適用量は明らかになっていない。ここでは,TRANSLATE-ACSのデータを用い,(1)米国の実臨床において,ステント留置後の心筋梗塞患者に対するaspirin用量,(2)aspirinの用量(高用量:325mg/日,低用量:81mg/日)と6ヵ月後のMACEおよび出血(BARC出血基準)との関連,(3)aspirinの用量および転帰がサブグループ(年齢,性別,自宅でのaspirin用量,退院時に処方されたADP受容体拮抗薬の種類[clopidogrel vs. prasugrel/ticagrelor],aspirin用量の経時的変化)により異なるか,検討を行った。
デザイン TRANSLATE-ACSは前向き観察研究。intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(228施設),米国。
期間 登録期間は2010年4月~2012年10月。
対象患者 10,213例。当該入院期間中にPCIを行い,ADP受容体阻害薬を投与されたST上昇型/非ST上昇型心筋梗塞患者のうち,6週後および6ヵ月後の追跡インタビューを実施できた症例(患者が死亡した場合は6週後のみインタビューを実施した症例も対象とした)。
【除外基準】院内死,退院時にaspirinを投与されていなかったか,aspirinの用量に関する情報が得られなかった患者,ステント留置をうけなかった患者,処方されたaspirinの用量が81mgまたは325mg以外の患者。
【患者背景】年齢中央値は高用量群60歳,低用量群61歳(p<0.001)。各群の女性27.2%,29.2%(p=0.029)。病歴:心筋梗塞17.7%,21.1%(p<0.001),PCI施行歴19.5%,22.6%(p<0.001),CABG施行歴8.6%,10.5%(p=0.001),心房細動/粗動3.9%,6.2%(p<0.001),脳卒中/TIA 4.8%,6.6%(p<0.001)。入院前の薬物療法:aspirin 37.9%,43.8%(p<0.001),ADP受容体阻害薬12.1%,12.4%,抗凝固薬1.7%,5.1%(p<0.001)。
治療法
追跡完了率
結果

●評価項目
6,387例(62.6%)が退院時に高用量のaspirin処方をうけた。
MACEは両群間で同程度であった(未補正:高用量群8.2% vs. 低用量群9.2%,補正後HR 0.99,95%CI 0.85-1.17)。
高用量の使用はBARC出血基準全出血と関連していた(未補正24.2% vs. 22.7%,補正後OR 1.19,95%CI 1.06-1.33)。これは主に小出血(BARC出血基準タイプ1,2)によるものであった(未補正21.4% vs. 19.5%,補正後OR 1.19,95%CI 1.05-1.34)。
入院を要する出血は同程度であった(未補正2.8% vs. 3.2%,補正後OR 1.22,95%CI 0.87-1.70)。
同様の関連は,aspirin用量の経時的変化のランドマーク解析,サブグループ解析(年齢,性別,ベースライン時のaspirin使用,ADP受容体阻害薬の種類[clopidogrel vs. prasugrel/ticagrelor])でも認められた。

●有害事象

文献: Xian Y, et al. Association of Discharge Aspirin Dose With Outcomes After Acute Myocardial Infarction: Insights From the Treatment with ADP Receptor Inhibitors: Longitudinal Assessment of Treatment Patterns and Events after Acute Coronary Syndrome (TRANSLATE-ACS) Study. Circulation 2015; 132: 174-81. pubmed
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