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ISAR-TRIPLE Intracoronary Stenting and Antithrombotic Regimen–Testing of a 6-Week versus a 6-Month Clopidogrel Treatment Regimen in Patients with Concomitant Aspirin and Oral Anticoagulant Therapy Following Drug-Eluting Stenting
結論 薬剤溶出性ステント(DES)留置をうけた患者において,6週間の3剤併用療法(経口抗凝固薬[OAC]+抗血小板薬2剤併用療法[DAPT])は,6ヵ月のそれにくらべ,正味の臨床転帰についてはすぐれていなかった。本結果より,3剤療法の期間を選択する場合は,虚血リスクと出血リスクのトレードオフに重きをおくべきである。
コメント 凝固系と血小板は密接に相互作用して,生体内の血栓形成に寄与する。しかし,1980~90年代の限られたランダム化比較試験の結果は,ステント血栓症の発症予防におけるアスピリンとチクロピジンの併用療法の著しい優越性を示した。現在のステントの材質,形状,血栓性は,20世紀の産物とは異なる。20世紀に検証された科学的仮説の基盤条件が21世紀には変化してしまっているにもかかわらず,一度確立された「常識」を覆すのは難しい。リバーロキサバンのATLAS ACS-TIMI 51試験では,抗凝固薬リバーロキサバンの少量投与により「ステント血栓症」の発症を予防できることを科学的に示した。しかし,抗凝固薬のステント血栓予防効果は「常識」にまで成長していない。
抗凝固,抗血小板薬は重篤な出血合併症を惹起する薬剤である。アスピリン,チエノピリジン,抗凝固などメカニズムの異なる経路を阻害すれば,相加的に出血性合併症が増加するのは論理的帰結である。さじ加減に長じた個別最適化能力のある医師であれば,複数の薬剤を使用するときには適宜減量などをするのが日本の医療の常識であろう。20世紀から21世紀に普及した「エビデンスベース」の発想は,個別の医師から個別最適化に向けた裁量権の論理を奪うほどに成長した。本試験では「BMSよりは遠隔期のステント血栓症が多いDES」を,抗凝固療法施行中の症例に使用した。BMSであれば1ヵ月で十分な抗血小板併用療法を,DESを入れたがゆえに長期に必要な条件に患者を追い込んだ。抗凝固薬のみでも重篤な出血合併症は年間2~3%,抗血小板併用療法でも,重篤な出血性合併症は年間1%は起こる。両者を併用すれば,相加的に出血合併症が増加することは誰でも予想するところである。ステント血栓症は,DESを使った場合でも本邦では0.2%程度,海外でも1%を超える施設はないであろう。BMSであれば回避できる人工的問題を敢えて設定した上に,さらに「ステント血栓予防には抗血小板併用療法が有効」という,DESの遅発性ステント血栓症では確認されていない仮説を積み重ねて本研究は施行された。出血イベントと血栓イベントのバランスにより抗血栓療法の適応は決定すべきで,「さじ加減」こそが重要であるとの結論にならざるを得ないほどエビデンス作りが難しい。(後藤信哉

目的 DES留置をうけるOAC中の患者は,さらにDAPT(aspirin+clopidogrel)が必要となる。このような3剤併用は出血リスクが上昇するが,3剤併用の至適期間は明らかになっていない。本試験では,aspirin+OACを服用中の患者において,DES留置後のclopidogrel投与を6ヵ月から6週間に短縮することが,正味の臨床転帰改善と関連するか検討を行った。主要評価項目:無作為割付から9ヵ月後の死亡+心筋梗塞+ステント血栓症(ARC基準definite)+脳卒中+TIMI大出血の複合。副次評価項目:虚血性合併症(心臓死+心筋梗塞+ステント血栓症[definite]+脳梗塞の複合),出血性合併症(TIMI大出血)。
デザイン PROBE試験。NCT00776633。
セッティング 多施設(3施設),ドイツ,デンマーク。
期間 登録期間は2008年9月~2013年12月。
対象患者 614例。OACを12ヵ月以上服用し,安定狭心症または急性冠症候群のためDES留置をうけた症例。
【除外基準】≦18歳,ステント血栓症既往,左主幹部にステント留置,活動性出血または出血性素因,頭蓋内出血既往。
【患者背景】平均年齢は6週群73.9歳,6ヵ月群73.3歳。各群の女性25.4%,21.2%。糖尿病27.7%,23.5%。高血圧76.9%,75.6%。高コレステロール血症73.9%,74.9%。入院時の臨床症状:ST上昇型心筋梗塞1.0%,0.7%,非ST上昇型心筋梗塞16.3%,13.4%,不安定狭心症16.0%,16.9%,安定狭心症66.8%,69.1%。OACの適応:心房細動/粗動82.7%,85.0%,機械弁5.5%,9.1%,静脈血栓塞栓症7.5%,3.6%。
治療法 以下の2群に無作為割付。
6週群:307例。aspirin 75~200mg,ビタミンK拮抗薬(warfarinまたはphenprocoumonを,3剤併用中はPT-INR治療域の最低値となるよう用量調整)に加え,clopidogrel 75mg/日を6週投与。
6ヵ月群:307例。上記同様にclopidogrel 75mg/日を6ヵ月投与。
clopidogrel負荷用量300~600mgを投与。周術期薬物療法(heparinまたはbivalirudin)は担当医の裁量とした。GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の投与は推奨しないとされた。aspirin未投与患者には,500mgを静注投与した。
追跡完了率 9ヵ月間の追跡完了は,6週群302例(98.4%),6ヵ月群304例(99.0%)。
結果

●評価項目
aspirinは6週後96.7%,6ヵ月後95.0%,9ヵ月後96.0%,OACはそれぞれ93.7%,90.6%,88.5%が服用,TTRは63.7%,68.9%,66.1%で,すべて両群に有意差を認めなかった。
主要評価項目は6週群 30例(9.8%),6ヵ月群27例(8.8%)で,同程度であった(HR 1.14,95%CI 0.68-1.91,p=0.63)。
主要表項目の個々の発生率は以下の通り。
死亡:4.0% vs. 5.2%,HR 0.75,0.35-1.59,p=0.45。
心筋梗塞:2.0% vs. 0%,p=0.03。
ステント血栓症(definite):0.7% vs. 0%,p=0.50。
脳卒中:1.3% vs. 2.0%,HR 0.67,0.19-2.35,p=0.53。
副次評価項目は12例(4.0%)vs. 13例(4.3%)(HR 0.93,0.43-2.05,p=0.87)。
TIMI大出血は16例(5.3%)vs. 12例(4.0%)(HR 1.35,0.64-2.84,p=0.44)。

●有害事象

文献: Fiedler KA, et al. Duration of Triple Therapy in Patients Requiring Oral Anticoagulation After Drug-Eluting Stent Implantation: The ISAR-TRIPLE Trial. J Am Coll Cardiol 2015; 65: 1619-29. pubmed
関連トライアル ADAPT-DES, ARCTIC-Interruption, CREDO, CURRENT-OASIS 7 undergoing PCI, DAPT, DAPT BMS or DES, DAPT myocardial infarction, DECLARE-DIABETES, DECLARE-LONG II, DES LATE, EXCELLENT, ISAR-SAFE, ITALIC, KAMIR, Lamberts M et al, Lamberts M et al, OPTIMIZE, ORBIT-AF, PRODIGY, PRODIGY type of stent, PRODIGY impact of clinical presentation, PRODIGY in-stent restenosis, REAL-LATE / ZEST-LATE, RECLOSE antiplatelet nonresponsiveness, RESET, Sarafoff N et al, SECURITY, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, TRITON-TIMI 38 PCI, Varenhorst C et al, WOEST
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