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メタ解析
DES留置後のDAPTの至適期間
Optimal duration of dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary intervention with drug eluting stents: meta-analysis of randomised controlled trials
結論 薬剤溶出性ステント(DES)留置後,標準期間(12ヵ月)の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)にくらべ,短期DAPT(<12ヵ月)は出血が減少し,虚血イベントが増加しなかったため,ほとんどの患者に考慮可と考えられた。出血リスクが低く虚血リスクが高い一部の患者については,長期DAPTが考慮可と考えられた。長期DAPTにより,心血管死は増加しなかったものの全死亡が増加したことについては,更なる検討が必要である。
コメント  カテーテルインターベンションと抗血小板療法については,長年議論が持続している。ステント時代の最初には,アスピリン・チクロピジンの抗血小板併用療法により,当時あまり考えずに行ったステント治療後の局所の血栓性イベント発症率が激減したため,アスピリン・チクロピジンはアスピリン・クロピドグレル併用療法に引き継がれた。ステントに再狭窄防止作用のある薬剤を塗布すると内膜化が遅れるため,さらに長期の抗血小板併用方法が推奨される時期も長く持続した。抗凝固薬ほど激烈ではないが,抗血小板併用療法にも重篤な出血合併症のリスクはある。画一的にBMSから薬剤溶出ステントに変わり,塗布する薬剤が変化すると,さらに抗血小板療法を含めた「標準治療」がさしたる科学的根拠なしにて転換される。ステント血栓症は大きな問題ではあるが,ステント血栓症以外でも冠動脈疾患症例を数例観察すれば,年間3~4%は心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中を経験するのが今の医療実態である。年間0.2%程度のステント血栓症のみを問題にするのではなくて,「冠動脈疾患後の血栓イベント全体」を評価の対象とすべきである。抗血小板併用療法は重篤な出血イベントリスクを増加させる。重篤な出血イベントの発症率は本研究では0.35~1.95%とされるが,実態もこの程度であろう。
 ステント留置技術には個人差もある。抗血小板薬以外にも降圧,脂質異常の無,運動習慣,喫煙など出血血栓イベントに寄与する因子はある。禁煙と運動習慣は費用をかけずに実施可能である。虚血症候を改善する冠動脈インターベンション治療は,内科的により胸痛をコントロールできない症例の症状改善と急性冠症候群における予後改善に用いられる。前者にDESを使用するのは患者の選択という場合もありえるが,後者はBMSで十分に目的を達成できる。費用対効果の観点からDES使用を可能な限り限局し,また大規模registryを作って,血栓イベントリスクの高い症例に絞り込んでの抗血小板併用療法がもっとも戦略的であると筆者は考える。(後藤信哉

目的 DES留置後のDAPTの至適期間については,まだコンセンサスが得られていない。本メタ解析では,DES留置患者において,短期(<12ヵ月)または長期(>12ヵ月)のDAPTのベネフィット/リスクを,標準期間(12ヵ月)のDAPTと比較した。主要評価項目:心血管死,心筋梗塞,ステント血栓症,大出血,全死亡。
方法 2002年1月1日~2015年2月16日,Medline, Embase, the Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature, Scopus, Web of Science, the Cochrane Register of Controlled Clinical Trials,主要心臓学会抄録集より検索。DAPTはDES留置後のaspirin+P2Y12受容体拮抗薬併用と定義。言語,出版形態の制限は設けなかった。
対象:異なる期間のDAPT(短期 vs. 標準期間および長期 vs. 標準期間)を比較したRCT。
除外:観察研究,文書化されていない冠動脈疾患または末梢/脳血管疾患患者,ステントを用いない/BMS単独のPCI,DAPTの期間が報告されていない。
対象 10試験(EXCELLENT, ISAR-SAFE, ITALIC, OPTIMIZE, PRODIGY, RESET, SECURITY, ARCTIC-Interruption, DAPT, DES LATE)。
32,287例(短期群7,975例+長期群8,196例+標準期間群16,116例)。
主な結果 短期(<12ヵ月)は標準期間(12ヵ月)にくらべ,大出血の減少と関連していた。虚血または血栓イベントについては同程度であった。長期(>12ヵ月)は標準期間にくらべ,心筋梗塞およびステント血栓症は抑制したが,大出血は増加した。また,全死亡は増加したが,心血管死は増加しなかった。

・心血管死(8試験,26,996例)
短期 vs. 標準期間:1.13% vs. 1.20%,OR 0.95,95%CI 0.68-1.33,p=0.76,I2=0%。
長期 vs. 標準期間:1.03% vs. 0.95%,OR 1.09,95%CI 0.79-1.50,p=0.62,I2=34%。

・心筋梗塞(10試験,32,287例)
短期 vs. 標準期間:1.65% vs. 1.50%,OR 1.11,95%CI 0.87-1.43,p=0.40,I2=0%。
長期 vs. 標準期間:1.55% vs. 2.89%,OR 0.53,95%CI 0.42-0.66,p<0.001,I2=37%。

・definite/probableステント血栓症(10試験,32,287例)
短期 vs. 標準期間:0.53% vs. 0.40%,OR 1.32,95%CI 0.83-2.08,p=0.24,I2=0%。
長期 vs. 標準期間:0.32% vs. 0.98%,OR 0.33,95%CI 0.21-0.51,p<0.001,I2=18%。

・大出血(10試験,32,287例)
短期 vs. 標準期間:0.35% vs. 0.61%,OR 0.58,95%CI 0.36-0.92,p=0.02,I2=0%。
長期 vs. 標準期間:1.95% vs. 1.21%,OR 1.62,95%CI 1.26-2.09,p<0.001,I2=7%。

・全死亡(10試験,32,287例)
短期 vs. 標準期間:1.43% vs. 1.56%,OR 0.91,95%CI 0.71-1.18,p=0.49,I2=0%。
長期 vs. 標準期間:1.84% vs. 1.42%,OR 1.30,95%CI 1.02-1.66,p=0.03,I2=0%。
文献: Navarese EP, et al. Optimal duration of dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary intervention with drug eluting stents: meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2015; 350: h1618. pubmed
関連トライアル ARCTIC-Interruption, DAPT継続の死亡に対する影響, DES LATE, DES留置とDAPT実施期間, DES留置後のDAPT延長投与, DES留置後のDAPT期間:短期と長期の比較, DES留置後長期DAPTによる死亡率, EXCELLENT, ITALIC, KAMIR, OPTIMIZE, PARIS, PCI施行患者に対するcangrelor, PRODIGY, PRODIGY type of stent, PRODIGY in-stent restenosis, PROTECT, REAL-LATE / ZEST-LATE, RESET, RESOLUTE post hoc analysis, SECURITY, TL-PAS, TRILOGY ACS elderly patients, Varenhorst C et al
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