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RE-VERSE AD Reversal Effects of Idarucizumab on Active Dabigatran
結論 idarucizumabはaPTTなどにて計測可能なdabigatranの抗トロンビン作用を数分で完全に中和した。
コメント  抗凝固薬服用下にて出血イベントを発症した症例の予後が不良であることは,アスピリン,ワルファリンなど古典的薬剤使用下においても真実であった。経口服用可能な選択的抗トロンビン薬,抗Xa薬服用下であっても,重篤な出血イベントを経験した症例は,死亡などの重篤なイベント発症率が高いことが,薬剤開発第III相試験の詳細解析により明らかにされている。
 ワルファリンは血液凝固因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため,出血時には凝固因子濃縮製剤などにより止血可能と信じられてきた。PT-INRのみ延長した症例では,ビタミンK2の補給によりPT-INRのすみやかな回復が可能とも理解されてきた。 
 経口服用可能な選択的抗トロンビン薬,抗Xa薬は,凝固因子の機能的完成を阻害するワルファリンよりも半減期が短い。PT-INR 2~3を標的とした,日本のワルファリン治療実態と異なるPT-INRを標的とした第III相試験の結果では,これらの経口服用可能な選択的抗トロンビン薬,抗Xa薬使用下より出血イベントが少ないと喧伝された。しかし,第III相試験の詳細解析によって,これらの新規薬剤であっても重篤な出血イベント経験例の死亡率が高いことが問題とされた。重篤な出血施行下であっても,抗トロンビン作用,抗Xa作用を即座に中断できれば,出血症例の予後を改善されるとの仮説のもと,ダビガトランの抗トロンビン作用を即座に中和するヒト化Fab抗体が作成された。今回の研究により,a-PTT,エコーリンによる評価可能なダビガトランの抗凝固作用は,抗ダビガトラン抗体により即座に中和可能であることが示された。しかし,抗凝固作用が中和されたとはいっても,重篤な出血イベントを経験した症例の死亡率は高いことが示された。
 ダビガトランにより重篤な出血を惹起した51例中9例,緊急手術のためダビガトランの中和が必要とされた39例中の9例が1ヵ月以内に死亡した。抗凝固薬使用下により出血して薬剤の効果の中和ができても,緊急手術時に薬効を中和しても1ヵ月以内の20%程度の死亡を回避できないとなると,これらの出血症例が高齢で合併症が多いことを考慮しても,安易な抗凝固介入を行うべきではないと筆者は感じた。(後藤信哉

目的 非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の特異的中和剤は不足している。本試験は,重篤な出血が発生したか,あるいは緊急的手術/手技を必要とするdabigatran服用中の患者において,dabigatran特異的中和剤であるモノクローナル抗体フラグメントidarucizumabの有効性および安全性を検討した。主要評価項目:idarucizumab初回静注終了時から第2回静注の4時間後までにおける,dabigatranによる抗凝固作用の最大中和率(a-PTT,希釈トロンビン時間,エカリン凝固時間を用い評価)。副次評価項目:止血の回復。
デザイン 前向きコホート研究(本論文は中間解析)。NCT02104947。
セッティング 多施設(184施設),35ヵ国。
期間 登録期間は2014年6月~2015年2月。
対象患者 90例。18歳以上,dabigatran服用中で,以下のいずれかに該当する患者。
A群(51例):担当医より中和剤が必要と判断された,医学的管理不良下にて生命に関わる出血を発生した症例。
B群(39例):正常止血を要する,8時間以上遅らせることができない手術または緊急的手技を必要とする症例。
【除外基準】-
【患者背景】年齢中央値はA群77.0歳,B群76.0歳。それぞれの男性63%,46%。体重中央値70.5kg,73.0kg。クレアチニンクリアランス中央値54mL/分,60 mL/分。dabigatranの用量:150mg 1日2回27%,38%,110mg 1日2回67%,62%,75mg 1日2回2%,0%。dabigatranの適応:心房細動92%,100%,静脈血栓塞栓症2%,0%。dabigatran最終投与からの経過時間15.2時間,16.6時間。A群における出血の種類:頭蓋内35%,外傷関連18%,消化管39%,その他22%。
治療法 idarucizumab 5gを2回に分け,2.5gの同剤を含む50mLを15分以内の間隔でボーラス静注。
追跡完了率 試験参加同意を撤回した1例を除き,死亡まで,または最低1ヵ月間の追跡を完了。
結果

●評価項目
ベースライン時に各検査の正常値上限を超えていた症例(希釈トロンビン時間68例[A群40例+B群28例],エカリン凝固時間81例[47例+34例])を有効性の解析対象とした。
最大中和率中央値はA群,B群とも100%(95%CI 100~100)。
idarucizumabは希釈トロンビン時間(評価可能患者のうちA群98%,B群93%),エカリン凝固時間(それぞれ89%,88%)を正常化した。
24時間後,非結合dabigatran濃度は62/78例(79%)の患者で20ng/mL(抗凝固作用がほとんど,あるいはまったくない値)以下に低下した。
A群で解析可能であった35例における止血を確認するまでの時間(担当医の判断による)は中央値11.4時間。
手技を施行したB群の36例において,術中に正常な止血が得られたのは33例(92%)。異常止血は軽度2例,中等度1例。
死亡は18例(A群,B群各9例)であった。血管関連死は10例で,このうち5例は致死性出血。
idarucizumab投与後発生した血栓イベントは,72時間以内では1例(深部静脈血栓症[DVT]+肺塞栓症[PE]),72時間経過後は4例(DVT+PE+左心耳血栓,DVT単独,非ST上昇型心筋梗塞,脳梗塞)であった。全例とも抗凝固療法を再開していなかった。

●有害事象
重篤な有害事象は21例(A群13例+B群8例)。

文献: Pollack CV Jr, et al. Idarucizumab for Dabigatran Reversal. N Engl J Med 2015; 373: 511-20. pubmed
関連トライアル Lakkireddy D et al, Larsen TB et al, RE-ALIGN, RE-COVER, RE-LY, RE-LY periprocedural bleeding, RE-LY previous TIA or stroke, RE-LY quality of INR control, RE-LY risk of bleeding, RE-MEDY & RE-SONATE
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