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DAPT myocardial infarction
結論 ステント留置後30ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)継続は,12ヵ月継続にくらべ,心筋梗塞の有無にかかわらずステント血栓症および心筋梗塞を抑制した。出血リスクは上昇した。
コメント PEGASUS-TIMI 54試験では,「心筋梗塞後1年以上経過した追加リスクのある症例」における抗血小板併用療法の有効性,安全性が検証されたのに対して,DAPT試験は「ステント治療を受けたのち,12ヵ月間に心血管,出血イベントリスクがなく,チエノピリジン系抗血小板薬の服薬アドヒランスが高い症例」が対象とされた。本サブ解析は「心筋梗塞後」の症例のサブ解析なのでPEGASUSに近い集団であるが,もともとの登録基準が大きく異なることを理解する必要がある。DAPT試験に参加した症例はオーストラリアと北米,ヨーロッパ諸国で,アジアからの参加はない。PEGASUS試験の結果が臨床医の感覚に近いのに対して,DAPT試験の結果に違和感があるのは,登録症例が本邦の症例と異なるためかもしれない。抗血小板併用療法を12ヵ月にて止めた場合のステント血栓症の発症率が,心筋梗塞後の症例では1.9%/18ヵ月というのは本邦の現状から考えて著しく高い。非心筋梗塞例でも1.1%/18ヵ月にステント血栓症が起こるインターベンションでは,抗血小板薬の使用の是非の考慮の前にインターベンションの適応の是非を論じるべきであろう。ステント血栓症以外のエンドポイントでも交互作用がなかったので,心筋梗塞の有無はイベントには寄与していないと考えるのが妥当であろう。(後藤信哉

目的 急性心筋梗塞患者におけるDAPT継続のベネフィットおよびリスクは,症状がより安定している患者にくらべ異なると考えられる。本解析はDAPT試験のデータを用い,心筋梗塞の有無によりステント留置後のDAPT継続期間の比較(30ヵ月 vs. 12ヵ月)を行った。有効性の主要評価項目:12~30ヵ月後のステント血栓症(definite/probable)+主要有害心/脳血管事象(MACCE;死亡,心筋梗塞,脳卒中)。安全性の主要評価項目:同期間における中等度~重度の出血(GUSTO出血基準BARC出血基準)。
デザイン DAPT試験は無作為割付,二重盲検試験。intention-to-treat解析。NCT00977938。
セッティング
期間
対象患者 11,648例(薬剤溶出性ステント[DES]:9,961例+ベアメタルステント[BMS]:1,687例)。FDAにより認可されているDES(sirolimus,zotarolimus,paclitaxel,everolimus)またはBMS留置後,DAPTを予定されている症例。
【除外基準】-
【患者背景】[心筋梗塞あり]平均年齢は30ヵ月群57.9歳,12ヵ月群57.7歳。各群の女性22.4%,21.2%。糖尿病20.8%,21.0%。高血圧59.8%,56.4%。脳卒中/TIA 2.1%,2.5%。心筋梗塞既往19.1%,20.0%。PCIの適応:心筋梗塞100%,100%。
[心筋梗塞なし]平均年齢は30ヵ月群63.0歳,12ヵ月群62.8歳。各群の女性25.9%,27.2%。糖尿病33.7%,32.1%。高血圧80.5%,79.7%。脳卒中/TIA 4.0%,4.0%。心筋梗塞既往22.8%,21.7%。PCIの適応:心筋梗塞0%,0%,不安定狭心症22.6%,22.6%,安定狭心症51.3%,51.5%,その他26.2%,25.9%。
治療法 患者はステント留置後3日以内に登録し,aspirin+clopidogrelまたはprasugrelを12ヵ月投与。12ヵ月後,主要心/脳血管事象,血行再建術再施行,中等度~重度の出血がなく,チエノピリジン系薬剤のアドヒアランスが良好な症例(14日を超える中断がなく,服用率が80~120%)について,以下の2群に無作為割付を行った。
30ヵ月群:5,862例(心筋梗塞あり1,805例+なし4,057例)。上記DAPTをさらに18ヵ月継続(DAPT期間は計30ヵ月)。
12ヵ月群: 5,786例(1,771例+4,015例)。aspirin単独投与(DAPT期間は12ヵ月)。
追跡完了率
結果

●評価項目
心筋梗塞は3,576例(30.7%)。
30ヵ月群は12ヵ月群にくらべ,心筋梗塞の有無にかかわらずステント血栓症を抑制した(交互作用p=0.69)。
心筋梗塞あり:0.5% vs. 1.9%,HR 0.27;95%CI 0.13-0.57,p<0.001。
心筋梗塞なし:0.4% vs. 1.1%,HR 0.33;0.18-0.60,p<0.001。
MACCEに対するベネフィットは,心筋梗塞例でより大きかった(交互作用p=0.03)。
心筋梗塞あり:3.9% vs. 6.8%,HR 0.56;0.42-0.76,p<0.001。
心筋梗塞なし:4.4% vs. 5.3%,HR 0.83;0.68-1.02,p=0.08。
30ヵ月群は12ヵ月群にくらべ,心筋梗塞の有無にかかわらず心筋梗塞再発を抑制した(交互作用p=0.15)。
心筋梗塞あり:2.2% vs. 5.2%,HR 0.42;0.29-0.62,p<0.001。
心筋梗塞なし:2.1% vs. 3.5%,HR 0.60;0.45-0.79,p<0.001。
GUSTO出血基準中等度~重度の出血は心筋梗塞の有無にかかわらず,30ヵ月群で増加した(交互作用p=0.21)。
心筋梗塞あり:1.9% vs.0.8%,HR 2.38;1.27-4.43,p=0.005。
心筋梗塞なし:2.6% vs. 1.7%,HR 1.53;1.12-2.08,p=0.007。
全死亡は,心筋梗塞のない症例では30ヵ月群で増加したが,交互作用は認められなかった(交互作用p=0.13)。
心筋梗塞あり:1.4% vs.1.6%,HR 0.87;0.50-1.50,p=0.61。
心筋梗塞なし:2.1% vs. 1.5%,HR 1.43;1.02-2.00,p=0.04。

●有害事象

文献: Yeh RW, et al.; DAPT Study Investigators. Benefits and Risks of Extended Duration Dual Antiplatelet Therapy after PCI in Patients With and Without Acute Myocardial Infarction. J Am Coll Cardiol 2015; 65: 2211-21. pubmed
関連トライアル ADAPT-DES, ARCTIC-Interruption, ATLAS ACS 2-TIMI 51 STEMI patients, CHARISMA subgroup analysis, CREDO, DAPT, DECLARE-DIABETES, DECLARE-LONG II, DES LATE, DES留置後のDAPT延長投与, EXCELLENT, ITALIC, KAMIR, OPTIMIZE, PARIS, PRODIGY, PRODIGY type of stent, PRODIGY in-stent restenosis, REAL-LATE / ZEST-LATE, RESET, SECURITY, TL-PAS, TRA 2P-TIMI 50 stent thrombosis, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 PCI, Varenhorst C et al
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