抗血栓トライアルデータベース
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INVEST impact of aspirin
結論 高血圧および虚血イベント既往を有する安定冠動脈疾患(CAD)患者において,aspirinは有害心血管事象リスク低下と関連していたが,非虚血例においては,リスク低下と関連していなかった。
コメント  各種抗血小板薬が開発され,急性冠症候群,アテローム血栓症,心筋梗塞再発予防などの症例を対象として,降圧薬としてのカルシウム拮抗薬とβ遮断薬の有効性を比較するランダム化比較試験が施行された(INVEST試験)。INVEST試験には2万例を超える症例が登録されたため,非ランダム化された比較ではあるが,アスピリン使用例と非使用例のイベント発症率の比較がINVEST試験のデータベースを用いて施行された。アスピリンは心筋梗塞急性期の心血管死亡率低減,心筋梗塞後の症例の再発予防については重厚なエビデンスを有するものの,心筋梗塞の既往のない冠動脈疾患に対する有効性のエビデンスは少ないと認識された。臨床的に安定した,降圧薬を必要とする外来通院中の冠動脈疾患を対象とした22,576例の観察研究において,アスピリン使用例と非使用例の全死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中の発症率を過去に虚血イベントの既往のある9,485例と虚血イベントの既往のない13,091例において比較した。ランダム化比較試験ではないため,症例の選択バイアスの大きな臨床研究である。実医療に近い外来通院中の安定した冠動脈疾患のデータベースという意味はあるが,アスピリン使用例と非使用例の比較の部分はバイアスを否定できないので,大きなインパクトはない。
 過去に虚血イベントの既往のある冠動脈疾患は,一見安定した症例であっても,未だに年率5%近い症例が死亡/心筋梗塞/脳卒中を経験する。心血管死亡率が2%程度であるのに比較して総死亡率が4%近いのは,欧米でも悪性腫瘍のインパクトが大きくなっている可能性はある。過去に虚血イベントの既往のない症例の総死亡/心筋梗塞/脳卒中の発症率は3%以下であるが,心血管死亡率1%に対して総死亡率が2%であることも,冠動脈疾患において実臨床下では心血管以外の死亡にも十分に留意しなければならないことを示唆している。
 日本でも保険医療下のデータベースが毎年公表されるようになれば,INVEST試験よりもはるかに大規模なデータにおけるトレンドを示せることが期待できる。(後藤信哉

目的 aspirinは,心筋梗塞および脳卒中の研究にもとづき,安定CAD患者に対し推奨されている。しかし,急性虚血イベントのない安定CAD患者におけるベネフィットは不明である。本研究では,INVEST(International Verapamil-SR/Trandolapril Study)*のデータを用い,aspirinのベネフィットは個々の安定CAD患者により弱まるが,虚血イベント既往によって弱まることはないという仮説を検証した。
*:Ca拮抗薬をベースとする降圧治療の有効性を,β遮断薬をベースとする治療と比較
デザイン
セッティング
期間 登録開始は1997年9月,追跡終了は2003年2月。
対象患者 22,576例。INVEST試験対象者全例(≧50歳,臨床的に安定しており,降圧薬を必要とする外来のCAD患者)。
【除外基準】現在の不安定狭心症,冠動脈血行再建術または脳卒中発症から1ヵ月以内,心筋梗塞発症から3ヵ月以内,β遮断薬使用から2週間以内, 12ヵ月以内に発症した心筋梗塞にβ遮断薬を使用,重篤な不整脈,非代償性心不全(NYHA IV度),腎/肝機能不全など。
【患者背景】[非虚血例におけるベースライン時のaspirin使用の有無別]平均年齢はaspirin群66.1歳,非aspirin群64.7歳(p<0.0001)。女性51.4%,66.8%(p<0.0001)。
[虚血例におけるベースライン時のaspirin使用の有無別]平均年齢はaspirin群66.9歳,非aspirin群67.4歳(p=0.044)。女性37.8%,51.2%(p<0.0001)。心筋梗塞既往76.7%,74.5%(p=0.025)。脳卒中/TIA既往17.0%,17.7%。
治療法 本解析は,ベースライン時の虚血既往(不安定狭心症,心筋梗塞,TIA,脳卒中)の有無により非虚血例(13,091例)または虚血例(9,485例)に分け,解析を行った。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
ベースライン時のaspirin使用率は56.7%,試験終了時は69.3%であった。
非虚血例において,aspirinはリスク低下と関連していなかったが(HR 1.11;95%CI 0.97-1.28,p=0.13),虚血例ではリスク低下との関連を認めた(HR 0.87;0.77-0.99,p=0.033)。
非虚血例では非致死的脳卒中リスクの増加が,虚血例では全死亡リスクの抑制がみられた。
[非虚血例]
全死亡:HR 0.97;0.83-1.14,p=0.74。
非致死的心筋梗塞:HR 1.23;0.81-1.86,p=0.34。
非致死的脳卒中:HR 1.86;1.22-2.83,p=0.0039。
[虚血例]
全死亡:HR 0.79;0.68-0.91,p=0.0011。
非致死的心筋梗塞:HR 1.26;0.88-1.81,p=0.21。
非致死的脳卒中:HR 1.05;0.75-1.48,p=0.77。

●有害事象

文献: Bavry AA, et al. Impact of Aspirin According to Type of Stable Coronary Artery Disease: Insights from a Large International Cohort. Am J Med 2015; 128: 137-43. pubmed
関連トライアル AAA, APPRAISE, CAPRIE impact of smoking, CHARISMA subgroup analysis, COURAGE, JPPP, Lamberts M et al, OASIS Pilot Study 1998, Physicians' Health Study 1991, PLATO total events, REACH 4-year outcomes, RISC 1991, TRACER undergoing CABG, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, WHS, 安定循環器疾患に対する低用量aspirin, 急性脳梗塞/TIA患者への抗血小板療法:2剤併用療法と単剤療法の比較
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