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INSPIRE International Collaboration of Aspirin Trials for Recurrent Venous Thromboembolism
結論 初回特発性静脈血栓塞栓症(VTE)患者のさまざまなサブグループにおいて,抗凝固療法終了後のaspirin投与は,全体の再発リスクを1/3抑制した。出血リスクは上昇しなかった。
コメント INSPIRE試験は,初発の特発性VTE患者に一定期間の抗凝固療法が行われた後の再発予防効果ならびに安全性について,アスピリンとプラセボ間で検証した二重盲検試験WARFASA試験とASPIRE試験の2試験を,サブ解析での検出力を上げるために統合解析したものである。アスピリンはプラセボと比較し,出血を増加させることなく再発を減少させ,特に男性,65歳以上で効果が高いことが示された。
特発性VTEの長期間にわたる再発予防については,これまでにも検討が行われている。ワルファリンについては,ELATE試験で低用量(PT-INR1.5~2.0)では従来用量(PT-INR2.0~3.0)と比較し,再発効果が低い割に出血の頻度は変わらないことが示されている。NOACについてはAMPLIFT-EXT試験でアピキサバンの低用量(2.5mg bid)がプラセボと比較し出血を増加させることなく,常用量(5mg bid)同様の再発予防効果が示されている。こうした結果から再発抑制の程度や出血頻度を考慮すると,現時点では特発性VTEの長期再発予防には低用量アピキサバンに歩があると言えそうだが,他のNOACの低用量やアスピリンとの直接比較など,更なる検討が望まれる。(山田典一

目的 初回の特発性VTE患者における再発リスクは,抗凝固療法中止後も高い。ASPIREおよびWARFASAでは,aspirinが再発リスクを抑制することが示されたが,これら2試験には個別の転帰やサブグループについての検出力はなかった。そこで,試験結果が判明する前に2試験の結合解析が計画され,aspirinのプラセボに対する効果を評価した。主要評価項目:VTE再発 (新規に診断された症候性VTEまたは致死的肺塞栓症[PE])。安全性の主要評価項目:大出血+大出血ではないが臨床的に問題となる出血。
デザイン ASPIREおよびWARFASAは無作為割付,二重盲検,プラセボ対照試験。ACTRN2611000684921。
セッティング
期間 追跡期間中央値30.4ヵ月。
対象患者 1,224例。初発の特発性VTE患者(近位部深部静脈血栓症[DVT]かつ/またはPE)で,heparinおよびwarfarin(またはそれと同等の薬剤)による初期治療(推奨期間はASPIRE:6~24ヵ月,WARFASA:6~12ヵ月)が完了した症例。
【除外基準】抗血小板療法または抗凝固療法の適応,COX 1またはCOX 2阻害薬など。WARFASAでは既知の血栓性素因,癌既往は除外としたが,ASPIREでは両方とも医師の裁量を除き除外せず。
【患者背景】平均年齢はaspirin群57歳,プラセボ群57歳。各群の男性59%,56%。BMI 29,28。当該イベント:DVTのみ58%,60%,PEのみ24%,23%,DVT+PE合併17%,17%。抗凝固療法の期間:<6ヵ月23%,18%,6~9ヵ月44%,48%,9~12ヵ月20%,17%,≧12ヵ月13%,17%。
治療法 ASPIRE,WARFASAとも,以下の2群に無作為割付。
aspirin群:616例(ASPIRE 411例+WARFASA 205例)。aspirin腸溶錠100mg 1日1回投与。
プラセボ群:608例(411例+197例)。
追跡完了率 脱落はaspirin群6例,プラセボ群7例。
結果

●評価項目
aspirinはプラセボにくらべ,VTE再発を抑制した(5.1%/年 vs. 7.5%/年,HR 0.68;95%CI 0.51-0.90,p=0.008)。
DVTはaspirin群3.6%/年 vs. プラセボ群5.5%/年,HR 0.66;0.47-0.92,p=0.01。
PE(DVT合併の有無を問わない)は1.7%/年 vs. 2.6%/年,HR 0.66;0.41-1.06,p=0.08。
aspirinは主要血管イベント(VTE+心筋梗塞+脳卒中+心血管死)を抑制した(5.7%/年 vs. 8.7%/年,HR 0.66;0.50-0.86,p=0.002)。
大出血は両群で同程度であった(aspirin群0.5%/年,プラセボ群0.4%/年,HR 1.24;0.46-3.33,p=0.67)。
治療アドヒアランスを調整後,VTE再発は42%抑制された(HR 0.58;0.40-0.85,p=0.005)。
事前に定められたサブグループ解析でも全体と同様の結果で,交互作用は認められなかったが,男性(絶対リスク減少:男性3.3%/年 vs. 女性1.7%/年)および高齢患者(絶対リスク減少:≧65歳5.5%/年 vs. <65歳1.3%/年)で大きな絶対リスク減少が得られた。

●有害事象

文献: Simes J, et al., INSPIRE Study Investigators* (International Collaboration of Aspirin Trials for Recurrent Venous Thromboembolism)
Aspirin for the Prevention of Recurrent Venous Thromboembolism: The INSPIRE Collaboration. Circulation 2014; 130: 1062-71. pubmed
関連トライアル ASPIRE, DURAC, JPPP, PREVENT 2003, RE-COVER II , SPAF II 1994, VTE再発予防療法の至適期間, WARFASA, WHS vitamin E
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