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メタ解析
急性亜広範型肺塞栓症の死亡率に対する血栓溶解療法の有効性
Impact of the Efficacy of Thrombolytic Therapy on the Mortality of Patients with Acute Submassive Pulmonary Embolism: a Meta-Analysis
結論 亜広範型肺塞栓症患者において,付加的血栓溶解療法は死亡もしくは肺塞栓症再発を抑制しなかったが,治療の高度化(エスカレーション)を必要とする臨床的悪化を予防した。出血リスクの評価は,臨床転帰,患者のベネフィットを改善するアプローチとしてもっともすぐれているかもしれない。
コメント 亜広範型急性肺血栓塞栓症に対する血栓溶解療法の是非については未だ結論が得られておらず,専門家の間でも意見の分かれるところである。以前よりへパリン単独治療と比較して死亡率改善効果は示されておらず,今回のメタ解析でも同様であった。また,へパリン単独治療に比較して治療のエスカレーションを必要とする臨床的増悪の頻度を有意に減少させてはいるものの,頭蓋内出血の頻度を有意に増加させ,大出血も増加させる傾向が示された。臨床的増悪はフィルターを適切に用いることで再発を予防することが可能であることを考慮すれば,亜広範型に対して出血のリスクを冒してまで血栓溶解療法を行うことが果たして正当化されるのか,疑問を感じるところである。(山田典一

目的 亜広範型肺塞栓症に対する血栓溶解療法の有効性は不明確である。先行のメタ解析では,同患者の割合を報告していない。本解析では,亜広範型肺塞栓症患者における血栓溶解療法について,heparin単独との比較を行った。主要評価項目:(1)全死亡,(2)全死亡+肺塞栓症再発,(3)全死亡+臨床的悪化(緊急外科的塞栓除去術など),(4)大出血。
方法 MEDLINE,EMBASE,Cochrane Library databasesにおいて,急性亜広範型肺塞栓症に対する初期治療として,付加的血栓溶解療法をヘパリン単独と比較し,30日後の死亡率もしくは院内臨床転帰を報告したRCTを検索。主要国際学会のアブストラクトについても,1980年1月~2014年1月に発表された英文で書かれたオリジナル論文に限定して検索を行った。選択した論文については,文献リストのレビューも行った。
対象:(1) 急性亜広範型肺塞栓症患者(血行動態的に安定している,心エコー,CT,心臓バイオマーカーで検出された右室機能不全もしくは心筋障害のいずれかを呈している亜広範型肺塞栓症と定義),(2)登録患者数≧20例,(3)対照群(heparin単独),(4)入院期間中もしくは30日間の追跡期間,(5)RCT,を含む試験。
除外:レビュー,エディトリアル,動物実験,症例報告。
対象 6試験,1,510例(alteplase群173例[3試験]+tenecteplase群574例[3試験]+heparin単独群763例)。
主な結果 ・全死亡(6試験)
付加的血栓溶解療法群とheparin単独群の間に有意差を認めなかった(付加的血栓溶解療法群2.3% vs. heparin単独群3.7%,RR 0.72;95%CI 0.39-1.31,p=0.27,I2=0%)。
サブグループ解析によると,alteplase群とtenecteplase群の間に有意差を認めず(p=0.5),出版バイアスもみられなかった(Egger test,p=0.3,rank correlation test,p=0.3)。

・全死亡+肺塞栓症再発(6試験)
付加的血栓溶解療法群とheparin単独群の間に有意差を認めなかった(3.1% vs. 5.4%,RR 0.64;0.32-1.28,p=0.21,I2=20%)。
サブグループ解析によると,alteplase群とtenecteplase群の間に有意差を認めず(p=0.7),出版バイアスもみられなかった(Egger test,p=0.3,rank correlation test,p=0.2)。

・全死亡+臨床的悪化(4試験)
付加的血栓溶解療法群はヘパリン単独群にくらべ,全死亡+臨床的悪化の複合が抑制された(3.9% vs. 9.4%,RR 0.44;0.29-0.67,p=0.0002,I2=0%)。
サブグループ解析によるとalteplase群とtenecteplase群の間に有意差を認めず(p=1.0),出版バイアスもみられなかった(Egger test,p=0.7,rank correlation test,p=0.5)。

・大出血(5試験)
付加的血栓溶解療法群とheparin単独群の間に有意差を認めなかった(6.6% vs. 1.9%,RR 2.07;0.58-7.35,p=0.26,I2=52%)。
出版バイアスはみられなかった(Egger test,p=0.2,rank correlation test,p=1.0)。
なお,頭蓋内出血は付加的血栓溶解療法群のほうがheparin単独群にくらべ多かった(1.7% vs. 0.1%,RR 5.2;1.33-20.31,p=0.02,I2=0%)。
文献: Nakamura S, et al. Impact of the efficacy of thrombolytic therapy on the mortality of patients with acute submassive pulmonary embolism: a meta-analysis. J Thromb Haemost 2014; 12: 1086-95. pubmed
関連トライアル RIETE registry thrombolytic therapy, 急性肺塞栓症に対する血栓溶解療法
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