抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Fushimi AF Registry
結論 Fushimi AF Registryは,日本の都市社会での心房細動管理の現状を示すユニークな研究である。本研究より,心房細動患者において,ガイドラインの推奨と実地臨床の不一致を示唆する経口抗凝固薬の不適切使用が明らかになった。
コメント 経口抗凝固薬群と非投与群で,脳梗塞,大出血に差がないという結果は,驚くに値する。可能性として,(1)ワルファリンのunder-use,(2)ワルファリンの中断,中止,(3)背景因子の相違などが考えられる。CHADS2スコアが抗凝固薬群で有意に高かったにもかかわらず,イベント発症率が同等であり,大出血にも差がなく,死亡率は有意に低いという結果は,抗凝固薬がまったく無意味であるということではないだろう。ただ,大規模試験で示されるような劇的な脳梗塞低下は,実地医家が中心の集団では得られないことも認識しておくべきであろう。今日の経口抗凝固薬群はそのほとんどがワルファリンであり,今後,NOACでのリアルワールドデータがまたれるところである。(是恒之宏

目的 心房細動は高齢者によくみられる不整脈で,脳卒中リスクを上昇させる。抗凝固療法は脳卒中予防に有効であり,至適使用についてはガイドラインで定められている。本研究では,Fushimi AF registryの1年後の結果をもとに,抗血栓療法(抗凝固薬,抗血小板薬)の現状を示し,脳卒中予防のクオリティおよび転帰を評価した。評価項目:脳卒中(虚血性/出血性),一過性脳虚血発作,全身性塞栓症,全死亡,出血。
デザイン 地域住民ベースの前向き登録研究。
セッティング 多施設(79施設),日本。
期間 登録期間は2011年3月~2012年10月。
対象患者 3,282例。12誘導心電図またはホルター心電計で心房細動が記録された患者。
【除外基準】-
【患者背景】平均年齢は経口抗凝固薬群74.20歳,非経口抗凝固薬群73.48歳。各群の男性62.9%,56.1%(p<0.001)。平均CHADS2スコア2.32,1.80(p<0.001)。
治療法 登録時(2,914例)→1年後(2,554例)の抗血栓療法は,経口抗凝固薬53.1%→54.6%(warfarin 50.6%→48.4%,dabigatran 2.4%→5.4%,rivaroxaban 0.1%→0.9%),抗血小板薬30.4%→26.0%(aspirin 26.7%→22.0%,clopidogrel 4.3%→4.0%,ticlopidine 1.4%→1.2%,cilostazol 3.1%→2.8%)。
追跡完了率 1年の追跡完了は2,914例(88.8%)。
結果

●評価項目
抗凝固薬使用率(単独または抗血小板薬併用)はCHADS2スコア上昇につれ上昇し,同スコア≧3では64.6%であった。warfarin使用率は,ガイドラインにもとづくと,高リスク患者(同スコア≧2)では過小,低~中等度リスク患者(同スコア0~1)では過大であった。
warfarin投与例において,登録時にPT-INRが治療域にあったのは54.4%で,それ以外の大部分は治療域未満であった。70歳以上ではPT-INRが治療域にある割合は65.9%であった一方,70歳未満では26.5%であった。

1年後のイベント発症率は経口抗凝固薬群,非経口抗凝固薬群で同程度であったが,全死亡は経口抗凝固薬群のほうが少なかった。
脳卒中/全身性塞栓症:経口抗凝固薬群2.7% vs. 非経口抗凝固薬2.8%。
大出血:1.4% vs. 1.5%。
脳梗塞:2.1% vs. 2.0%。
全死亡:6.0% vs. 10.1%,p<0.01。
経口抗凝固薬を継続した患者(登録時と1年後の両時点で使用していた患者)における脳卒中または全身性塞栓症は2.4%であった一方,経口抗凝固薬を中止した患者(登録時は使用していたが,1年後は使用していなかった患者)では4.0%であった。

●有害事象

文献: Akao M, et al. Inappropriate use of oral anticoagulants for patients with atrial fibrillation. Circ J 2014; 78: 2166-72. pubmed
関連トライアル ACTIVE W CHADS2 score, ACTIVE W paroxysmal vs sustained, COMPARE, J-ROCKET AF, Lakkireddy D et al, Lamberts M et al, ORBIT-AF, ROCKET AF major bleeding, SPAF III 1996, SPORTIF elderly patients, 心房細動患者に対する脳卒中予防療法における年齢効果
関連記事 日本人心房細動患者における大出血リスク因子-伏見心房細動患者登録研究(石井充氏/ESC 2015)
クレアチニンクリアランスと臨床転帰の関連-Fushimi AF Registry(阿部 充氏/JCS 2015)
伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry)~日本の実臨床現場における心房細動患者に対する抗凝固療法の現状~(赤尾昌治氏・高林健介氏・石井充氏/AHA 2013)
伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry):1年後の血栓塞栓イベント発症率(赤尾昌治氏/ESC 2013)
伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry):超高齢心房細動患者の臨床的特徴(山下侑吾氏/ESC 2013)