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メタ解析
肺塞栓症患者に対する血栓溶解療法および全死亡,大出血,頭蓋内出血リスク
Systemic Thrombolytic Therapy for Acute Pulmonary Embolism: a Systematic Review and Meta-Analysis
結論 肺塞栓症患者(血行動態的に安定している右心機能不全患者を含む)において,血栓溶解療法は全死亡リスク低下および大出血,脳内出血リスク上昇と関連していた。しかし,本結果は血行動態的に安定している,右心機能不全のない患者には適用できないと考えられた。
コメント 肺塞栓症に対する血栓溶解療法と抗凝固療法の併用治療と抗凝固療法単独治療とのランダム化研究に関するメタ解析である。対象の70%以上が亜広範型に相当する中等度リスク症例であるが,血栓溶解療法による死亡率の改善が示された。しかしながら,大出血,頭蓋内出血は有意に増加し,特に65歳超の高齢者では高頻度で死亡率の差が消失しており,高齢者に対する血栓溶解療法の使用は慎重に行うことが求められる。(山田典一

目的 血栓溶解療法は,一部の肺塞栓症患者の治療にベネフィットをもたらす可能性があるが,血栓溶解療法が従来の抗凝固療法にくらべ生存率改善と関連しているか,統計学的検出力のある解析は行われていない。本研究では,急性肺塞栓症,特に中等度リスク患者(血行動態的に安定している,右心機能不全が客観的に認められる患者)における血栓溶解療法の死亡抑制と安全性のベネフィットについて,抗凝固療法との比較を行った。有効性の主要評価項目:全死亡。安全性の主要評価項目:大出血。
方法 PubMed,Cochrane Library,EMBASE,EBSCO,Web of Science,CINAHLについて,その開始日から2014年4月10日まで検索した。言語の制限は設けなかった。
対象:肺塞栓症患者においてインターベンションとして血栓溶解療法を評価したランダム化比較試験,比較薬として低分子量heparin,ビタミンK拮抗薬,fondaparinux,未分画heparinのいずれかを含む,死亡率を報告している試験。
除外:異なる血栓溶解薬を比較,もしくは同一の血栓溶解薬の異なる用量を比較した試験。
対象 16試験,2,115例(このうち特に中等度リスク患者を対象としたものは8試験,1,775例)。
主な結果 ・全死亡(16試験)
血栓溶解療法は抗凝固療法にくらべ,全死亡リスクを低下させた。
血栓溶解療法群23/1,061例(2.17%)vs. 抗凝固療法群41/1,054例(3.89%),OR 0.53,95%CI 0.32-0.88,NNT=59。

・出血リスク
血栓溶解療法は抗凝固療法にくらべ,大出血リスク,脳内出血リスクが上昇した。
大出血(16試験):98/1,061例(9.24%)vs. 36/1,054例(3.42%),OR 2.73;1.91-3.91,NNH=18。
脳内出血(15試験):15/1,024例(1.46%)vs. 2/1,019例(0.19%),OR 4.63;1.78-12.04,NNH=78。

・肺塞栓症再発(15試験)
血栓溶解療法は抗凝固療法にくらべ,肺塞栓症再発抑制と関連していた。12/1,024例(1.17%)vs. 31/1,019例(3.04%),OR 0.40;0.22-0.74,NNT=54。

・年齢別の解析
65歳超(5試験)では全死亡リスク抑制傾向(OR 0.55;0.29-1.05),大出血リスク上昇(OR 3.10;2.10-4.56)を認めた。65歳以下(11試験)では大出血リスクは上昇しなかった(OR 1.25;0.50-3.14)。

・中等度リスク患者における解析(8試験)
肺塞栓症中等度リスクの試験において,血栓溶解療法は全死亡リスク低下および大出血リスク上昇と関連していた。
全死亡:12/866例(1.39%)vs. 26/889例(2.92%),OR 0.48;0.25-0.92,NNT=65。
大出血:67/866例(7.74%)vs. 20/889例(2.25%),OR 3.19;2.07-4.92,NNH=18。
文献: Chatterjee S, et al. Thrombolysis for pulmonary embolism and risk of all-cause mortality, major bleeding, and intracranial hemorrhage: a meta-analysis. JAMA 2014; 311: 2414-21. pubmed
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