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PEITHO Pulmonary Embolism Thrombolysis
結論 中等度リスクの肺塞栓症患者において,血栓溶解療法は血行動態代償不全を予防したが,大出血および脳卒中リスクが上昇した。
コメント 急性肺血栓塞栓症に対する血栓溶解療法の有効性/安全性を検討した,対象患者数1,006例という過去最大規模の二重盲検ランダム化試験である。本研究での対象は,正常血圧の中等度リスク(右心負荷と心筋障害陽性)肺血栓塞栓症に限定されて行われた。未だに意見が分かれている亜広範型(中等度リスク)肺血栓塞栓症に対する血栓溶解療法の是非に結論が下される試験として期待された。しかし,結果は血栓溶解療法(tenecteplase)群とプラセボ群間で急性期死亡率に差はなく,hemodynamic decompensationは有意に減少させたものの,脳出血や頭蓋外大出血が有意に増加した。リスクとベネフィットを考慮すると,中等度リスク患者に対する血栓溶解療法は出血のリスクの低い若年者などに限定されると思われる。(山田典一

目的 中等度リスクの肺塞栓症における血栓溶解療法の役割については議論がわかれている。本試験は,中等度リスクの肺塞栓症を有する正常血圧患者において,tenecteplase+heparinの有効性および安全性をプラセボ+heparinと比較した。有効性の評価項目:7日後の全死亡+血行動態代償不全(もしくは虚脱)の複合。安全性の主要評価項目:7日後の脳卒中(虚血性/出血性),頭蓋外大出血(中等度もしくは重度),30日後の重篤な有害事象。
デザイン 無作為割付,二重盲検試験。intention-to-treat解析。NCT00639743。
セッティング 多施設(76施設),13ヵ国。
期間 登録期間は2007年11月~2012年7月。
対象患者 1,006例。18歳以上,急性肺塞栓症と客観的に診断され発症から15日以内,心エコー/スパイラルCTにて右室機能不全が確認され,かつトロポニンI/T陽性により心筋障害が確認された患者。
【除外基準】診察時に血行動態代償不全を呈している,既知の重篤な出血リスク(最近の抗血小板薬投与は除外基準としない),血栓溶解療法実施から4日以内,大静脈フィルター留置もしくは肺血栓除去術から4日以内,無作為割付時の管理不良の高血圧,以前に他の試験プロトコールにて試験薬を7日以上投与されている,tenecteplase/alteplase/未分画heparin(UFH)/賦形剤に対する既知の過敏症,妊娠/授乳/出産から30日以内,既知の凝固障害,試験薬投与によりリスクが上昇すると考えられる病態を有する。
【患者背景】年齢中央値はtenecteplase群70歳,プラセボ群70歳。各群の男性47.8%,46.3%。平均体重82.5kg,82.6kg。臨床状態:SBP(mmHg) 130.8,131.3。心拍数(/分)94.5,92.3。呼吸数(/分)21.8,21.6。病歴:慢性肺疾患5.1%,6.8%。静脈血栓塞栓症既往24.9%,29.5%。可動制限10.9%,11.2%。無作為割付前の低分子量heparin(LMWH)/fondaparinux投与33.6%,26.6%。
治療法 以下の2群に無作為割付。
tenecteplase群:506例。体重により30~50mgを5~10秒かけて単回ボーラス静注。
プラセボ群:499例。
両群とも,すでにUFHのボーラス静注/注入をうけている患者を除き,無作為割付直後にUFHをボーラス静注。治療用量のLMWHもしくはfondaparinux投与をうけている患者にもUFHボーラス静注は行わず,注入開始は,LMWH投与例では最終投与の12時間後,fondaparinux投与例では最終投与の24時間後とした。heparinの注入は,APTT正常値上限の2~2.5倍を達成および維持するよう調整した。無作為割付から48時間後まで,UFH以外の抗凝固薬の使用は不許可とした。
追跡完了率
結果

●評価項目
7日後の有効性の主要評価項目はtenecteplase群13例(2.6%)で,プラセボ群28例(5.6%)にくらべ抑制された(OR 0.44,95%CI 0.23-0.87,p=0.02)。
内訳は以下の通り。
死亡:6例(1.2%)vs. 9例(1.8%),OR 0.65;0.23-1.85,p=0.42。
血行動態代償不全:8例(1.6%)vs. 25例(5.0%),OR 0.30;0.14-0.68,p=0.002。
30日後の死亡はtenecteplase群 12例(2.4%),プラセボ群16例(3.2%)で同程度であった(OR 0.73;0.34-1.57,p=0.42)。
頭蓋外大出血,脳卒中はtenecteplase群のほうが多かった。
頭蓋外出血:32例(6.3%)vs. 6例(1.2%),OR 5.55;2.3-13.39,p<0.001。
脳卒中:12例(2.4%)vs. 1例(0.2%),OR 12.10;1.57-93.39,p=0.003。
脳卒中の内訳は虚血性2例(0.4%)vs. 0例,出血性10例(2.0%)vs. 1例(0.2%)。

●有害事象
30日後の重篤な有害事象はtenecteplase群 55例(10.9%),プラセボ群59例(11.8%)で同程度であった(OR 0.91;0.62-1.34,p=0.63)。

文献: Meyer G, et al.; PEITHO Investigators. Fibrinolysis for patients with intermediate-risk pulmonary embolism. N Engl J Med 2014; 370: 1402-11. pubmed
関連トライアル AVERROES, CASSIOPEA, ECASS III, ESSENCE 1997, ExTRACT-TIMI 25, FINESSE, IMPACT-AMI, IMS III, Matisse Study, OTPE, Power A et al, PRISM-PLUS 1998, RIETE registry thrombolytic therapy, STREAM, SYNTHESIS Expansion, TROICA
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