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PHANTOM-S Prehospital Acute Neurological Treatment and Optimization of Medical Care in Stroke Study
結論 救急車ベースの血栓溶解療法は通常治療にくらべ,有害事象を増加させることなく,治療までの経過時間を短縮させた。
コメント 都市型tPA静注療法の近未来を築く,系統的で価値ある臨床試験である。プレホスピタルケアにおける脳卒中専門救急車の有用性を多数例で示しており,臨床現場即時分析装置(ポイントオブケア)とともに,今後の普及が期待される。(岡田靖

目的 虚血性脳卒中患者に対する血栓溶解療法のベネフィットは時間依存性である。症状発現から90分以内に治療した場合の転帰良好のNNTは4.5であるが,91~180分では9,181~270分では14と大きくなる。本試験では,脳卒中治療専門救急車(STEMO)内で血栓溶解療法を開始することにより,治療の遅れを減らすことができるか検討した。主要評価項目:緊急通報からtPA静注までの経過時間。副次評価項目:血栓溶解療法実施率,血栓溶解療法後の脳内出血,7日後の死亡率。
デザイン 週を無作為割付,オープン試験。NCT01382862。
セッティング 多施設(28施設),ドイツ。
期間 試験期間は2011年5月1日~2013年1月31日。
対象患者 6,182例。救急車が16分(可能性75%)で到着できる圏内で発症した脳卒中患者(発症から4時間以内もしくは発症時間不明)で,月曜日~土曜日の7:00~23:00に通報があり,通信指令係が救急車を出動させた患者。
【除外基準】18歳未満,既知の妊娠など。
【患者背景】平均年齢はSTEMO利用群73.9歳,STEMO出動週群73.9歳,従来型治療群74.3歳。各群の男性44.1%,44.3%,45.2%。合併症:心房細動24.4%,23.5%,21.8%,糖尿病25.0%,24.3%,22.0%。
治療法 STEMOを出動させる週(STEMO出動週群;3,213例)と従来型治療を行う週(2,969例)に無作為割付。救急車出動アルゴリズムは,どちらの週も同じものを使用した。STEMOを出動させる週でもSTEMOが利用できなかった場合は,従来型治療を行った。STEMOを出動させる週で実際にSTEMOを利用できたのは1,804例(STEMO利用群)。
STEMOはCTおよび臨床現場即時検査(ポイントオブケア)の設備を搭載し,神経内科医,救急医療隊員,放射線技師が同乗。神経内科医が診断を行い,脳卒中が疑われ,発症から4.5時間以内の場合はCTを撮像し,禁忌がなければ欧州の基準にしたがってtPA静注を行った。ただし,80歳以上,脳卒中既往および糖尿病合併,てんかん発作併発は絶対的な禁忌とはしなかった。なお,ポイントオブケアにて最低でもPT-INR,完全血球算定,血糖値を測定した。tPA静注開始後,患者をもっとも近い脳卒中ユニットのある病院へ搬送した。
追跡完了率
結果

●評価項目
STEMO利用群1,804例のうち,救急車内でtPA静注をうけたのは177例。
緊急通報から治療までの経過時間は,STEMO出動週では従来型治療にくらべ,15分(95%CI 11-19)短縮された(76.3分;73.2-79.3 vs 61.4分;58.7-64.0分,p <0.001)。STEMO配備後では51.8分(49.0-54.6)で,従来型治療群にくらべ25分(20-29)短縮された(p<0.001)。
従来型治療週の血栓溶解療法実施率は21%(220/1,041例)で,STEMO配備後(33%[200/614例],差12%;7-16,p<0.001),STEMO出動週(29.0%[310/1,070],差8%;4-12,p<0.001)ともに上昇した。
STEMOの配備による脳内出血,死亡の増加はみられなかった(脳内出血:補正後OR 0.42;0.18-1.03,p=0.06),7日後の死亡:補正後OR 0.76;0.31-1.82,p=0.53,90日後の死亡:補正後OR 1.02;0.58-1.82,p=0.94)。

●有害事象

文献: Ebinger M, et al.; STEMO Consortium. Effect of the use of ambulance-based thrombolysis on time to thrombolysis in acute ischemic stroke: a randomized clinical trial. JAMA 2014; 311: 1622-31. pubmed
関連トライアル Bray BD et al, Cronin CA et al, ECASS, ECASS III, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, GWTG-Stroke time to treatment, ICARO-2, IST-3, Murthy SB et al, Power A et al, Ruecker M et al, Schellinger PD et al, SITS-ISTR young patients, STRokE DOC, Toni D et al, 血栓溶解療法後の頭蓋内出血
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