抗血栓トライアルデータベース
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POISE-2 Perioperative Ischemic Evaluation 2
結論 非心臓手術を受ける患者において,手術前および早期術後期間のaspirin投与は,死亡+非致死性心筋梗塞の複合を抑制せず,大出血リスクが上昇した。
コメント 心筋梗塞の二次予防を中心に,アスピリンは広く使用されている。アスピリン服用中の症例でも胃がん,肺がん,大腸がんなどの疾病に罹患すれば,手術が必要となる。手術中には血管が損傷するので,重篤な出血リスクは増加する。手術後の全身的止血機転は,全身の血栓性増加を介して心筋梗塞などのイベントリスクの増加につながるとも推論される。アスピリン服用中の症例が非心臓手術を受ける時には,出血イベントリスクを避けるためにアスピリンの服用を中止すべきかもしれないし,血栓イベントの増加を避けるためにアスピリンを継続すべきかもしれない。個別的には,アスピリンを継続すべき症例,中止すべき症例が混在していると思われる。Evidence based medicineの世界では,一般論として「アスピリン服用中の患者集団」が「非心臓手術を受ける時に」「アスピリンを中止すべきか/継続すべきか?」との臨床的仮説の検証に意味がある。
本試験は,上記の仮説を1万例以上の症例のランダム化比較試験により検証した。アスピリンは抗血栓薬であるため,出血リスクの増加は避け難い。本試験でも,アスピリンによる出血の増加は確認された。血栓イベントについては,本試験では致死性/非致死性心筋梗塞が用いられた。術後30日の心筋梗塞の発症率は7%前後と高いが,トロポニン陽性にて定義される心筋梗塞の中には,臨床家が避けたいと思う心筋梗塞以外も含まれる。重篤な出血は4%前後に起こり,アスピリン群にて高かった。アスピリンによる出血イベントは術後1日目まで高く,その後には差がない。安全性が確立されたアスピリンであっても,抗血栓効果よりも出血イベントリスクのほうが大きいとの結論であるが,1万例登録してようやく差が出る程度の小さな差であるともいえる。標準治療が進歩して一般に合併症が少なくなった時代には,ランダム化比較試験の実施も,その解釈も,その臨床応用もいずれも難しい。(後藤信哉

目的 非心臓手術を受ける患者において,周術期のaspirin投与にはばらつきが多く,長期投与患者と投与歴のない患者の両者が存在する。本試験では,低用量aspirinがプラセボにくらべ30日後の死亡または非致死性心筋梗塞を抑制するか,検討を行った(本試験はaspirin vs. プラセボ,clonidine vs. プラセボの2×2ファクトリアルで行われたが,本論文はaspirin vs. プラセボの結果報告)。主要評価項目:30日後の死亡または非致死性心筋梗塞。
デザイン 無作為割付,2×2ファクトリアル試験。NCT01082874。
セッティング 多施設(135施設),23ヵ国。
期間 登録期間は2010年7月~2013年12月。
対象患者 10,010例。院内で非心臓手術をうける45歳以上の患者で,以下の5つの基準のうち1つ以上を有する症例((1)冠動脈疾患既往,(2)末梢動脈疾患既往,(3)脳卒中既往,(4)血管大手術施行,(5)以下の9つのリスク因子のうち3つ以上を有する[70歳以上,大手術施行,うっ血性心不全既往,一過性脳虚血発作既往,糖尿病,高血圧既往,周術期血清クレアチニン>2.0mg/dL,2年以内の喫煙,緊急手術施行])。
【除外基準】-
【患者背景】平均年齢はaspirin群68.6歳,プラセボ群68.6歳。各群の男性52.0%,53.6%。試験登録となった疾患:血管疾患既往32.7%,32.6%,冠動脈疾患23.1%,22.2%,末梢動脈疾患8.8%,8.5%,脳卒中5.0%,5.8%,血管大手術施行4.9%,4.9%,9つのリスク因子(対象患者の項参照)83.3%,82.6%。
治療法 登録前のaspirin服用の有無により,服用していなかった開始群(5,628例),服用していた継続群(4,382例,手術前6週以内に1ヵ月以上服用)に層別化後,以下の2群に無作為割付。
aspirin群(4,998例):手術直前に200mg投与後,開始群は100mg/日を30日,継続群は7日投与。
プラセボ群(5,012例)。
追跡完了率 30日後の追跡完了率は99.9%。
結果

●評価項目
主要評価項目はaspirin群351例(7.0%),プラセボ群355例(7.1%)で,同程度であった(HR 0.99;95%CI 0.86-1.15,p=0.92)。この結果はサブグループ解析でも一貫していた。
全死亡:1.3% vs. 1.2%,p=0.78。
心筋梗塞:6.2% vs. 6.3%,p=0.85。
副次評価項目も同程度であった。
死亡+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中:7.2% vs. 7.4%,HR 0.98;0.85-1.13,p=0.80。
死亡+非致死性心筋梗塞+冠動脈血行再建術+非致死性静脈血栓塞栓症+非致死性深部静脈血栓塞栓症:8.0% vs. 8.1%,HR 0.99;0.86-1.14,p=0.90。
大出血はaspirin群230例(4.6%)で,プラセボ群188例(3.7%)にくらべ多かった(HR 1.23;1.01-1.49,p=0.04)。
生命に関わる出血は同程度であった(1.7% vs. 1.5%,p=0.26)。
生命に関わる出血または大出血の複合は心筋梗塞の予測因子であった(HR 1.82;1.40-2.36,p<0.001)。

●有害事象

文献: Devereaux PJ, et al.; the POISE-2 Investigators. Aspirin in Patients Undergoing Noncardiac Surgery. N Engl J Med 2014; 370: 1494-503. pubmed
関連トライアル AAA, AAASPS 2003, ACCOAST, ACTIVE A, ACUITY GP IIb/IIIa inhibitors , APPRAISE, APPRAISE-2, ASPIRE, ATLAS ACS 2-TIMI 51, ATLAS ACS-TIMI 46 , AVERROES, CASPAR , CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, CLARITY-TIMI 28, COGENT, CREDO, CURE, DAC, DES LATE, Dutch-TIA Trial, EAFT 1993, EARLY, ECLAP, ESPRIT , FRISC, Gurfinkel EP et al, JPAD, OASIS-6, PCI-CLARITY, PCI-CURE, Physicians' Health Study 1991, PRISM, PRoFESS, REAL-LATE / ZEST-LATE, RESTORE, SPIRIT, SPS3, TRA 2P-TIMI 50, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction, TRITON-TIMI 38, Turpie AG et al 1993, WARCEF, WARFASA, WHS
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