抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
メタ解析
テーラーメイド抗血小板療法と臨床転帰
Tailored Antiplatelet Therapy and Clinical Adverse Outcomes
結論 抗血小板薬抵抗性患者において,個々の患者にあわせたテーラーメイドの抗血小板療法は従来型治療にくらべ,死亡/ステント血栓症リスク,有害事象を抑制した。出血合併症リスクの上昇はみられなかった。
コメント 筆者は「抗血小板薬抵抗性」の概念には反対である。抗血小板薬は患者集団における有効性,安全性のエビデンスにもとづいて使用され,個別最適化の論理は確立されていない。血小板細胞生物学の研究者としての筆者の視点から見れば,雑駁な血小板凝集能,何を見ているかわからないVerifyNow,PG-E1処理後の血小板を用いるVASP-Pなどの計測は,抗血小板薬の薬効の指標としても,将来の血管イベントの予測指標として雑駁すぎる。心筋梗塞,脳梗塞などの血栓イベント発症における血小板の役割を構成論的,定量的に理解して初めて,これらの血小板マーカーの意味と限界が明らかになる。
テーラーメイド治療といっても,信頼性のない,将来の血管イベントとの関連も確立されていないマーカーを用いたテーラーメイドでは「やらないほうがまし」である。
本研究は過去に報告された研究のまとめである。しかし,一時熱心に議論された「アスピリン抵抗性」がクロピドグレルの特許喪失とともに終焉した歴史,認可承認試験としては十分な質を示しながら標準治療の転換を起こすほどのインパクトには若干の疑問を残したプラスグレル,チカグレロールの第III相試験の結果を思い起こせば,雑駁な血小板機能検査にて「安価な標準治療」により有効でないとされた症例に高価な新薬を推奨する宣伝が繰り返されているとも理解できる。仮説検証には不十分な小さい試験のメタ解析は,単一の大規模ランダム化比較試験より信頼性が低いことは,図2の各試験の幅広い95%信頼区間からもわかる。(後藤信哉

目的 抗血小板薬抵抗性の患者は,感受性患者にくらべアテローム血栓性イベントリスクが高いとされている。しかし,このような患者に対し,テーラーメイドの抗血小板療法が有益かどうかは意見が分かれている。本解析では,抗血小板薬抵抗性患者において,テーラーメイドの抗血小板療法の従来型治療に比較しての臨床的影響を検討した。有効性の主要評価項目:全死亡+ステント血栓症の複合。
方法 PubMed(1809年~),EMBASE(1966年~),Web of Science(2003年~),Cochrane Library(1800年~)にて検索(検索はすべて2013年5月まで)。文献リスト,エディトリアルなどのレビューも行った。言語の制限は設けなかった。
対象:(1)抗血小板療法中の患者,(2)臨床検査値にもとづき,抗血小板抵抗性を明確に定義,(3)抗血小板薬抵抗性,抗血小板薬感受性に分類,(4)抗血小板薬抵抗性患者をテーラーメイド治療または従来型治療に1:1で無作為割付,(5)テーラーメイド治療または従来型治療の詳細を明らかにしている,(6)両治療群において有害臨床イベントの尺度を用いている,(7)有害イベントの発症率を報告。
除外:(1)非無作為割付試験,(2)データ修復可能または重複,(3)進行中の試験。
対象 7試験(Bonello et al[2008,2009],Cuisst et al,GRAVITAS,Suh et al,Trenk et al,Valgimigli et al;clopidogrel抵抗性については全試験で評価,aspirinについては1試験のみ),12,048例。
主な結果 抗血小板薬抵抗性患者は3,738例(31.0%)であった。
・評価項目(死亡/ステント血栓症)
抗血小板薬抵抗性患者において,テーラーメイドの抗血小板療法は従来型治療にくらべ,死亡/ステント血栓症リスクを抑制した(0.5% vs 2.2%,OR 0.25,95%CI 0.13-0.49,p<0.0001,I2=0%,不均一性p=0.45)。

・その他の有害事象
抗血小板薬抵抗性患者において,テーラーメイドの抗血小板療法は従来型治療にくらべ,全有害事象*を抑制した。ただし,不均一性が認められた(5.5% vs 10.0%,OR 0.40,0.20-0.77,p=0.006,I2=73%,不均一性p=0.001)。出版バイアスは認めなかった(Begg’s test p=0.548)。
*:死亡,ステント血栓症,周術期心筋梗塞,急性冠症候群,血行再建術,脳卒中,虚血イベントによる再入院。

・出血合併症
出血合併症については有意差を認めなかった(8.4% vs 6.9%,OR 1.24,0.97-1.59,p=0.08,I2=0%,不均一性p=0.76)。

・サブグループ解析
テーラーメイドの抗血小板療法の効果について,施設のある国(p=0.004),抗血小板薬抵抗性検出法(p=0.004),追跡期間(p=0.018)で有意差を認めた。
文献: Li J, et al. Tailored antiplatelet therapy and clinical adverse outcomes. Heart 2014; 100: 41-6. pubmed
関連トライアル ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, BAT, CHARISMA post hoc analysis, COMPASS, ISAR, RESET, RESTORE, TRITON-TIMI 38 PCI, WAVE, 抗血小板療法中のACS後の患者に対する新規抗凝固薬の使用
関連記事