抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
EU-PACT European Pharmacogenetics of Anticoagulant Therapy
結論 warfarin療法開始期において,薬理遺伝学にもとづいた用量決定は,標準的な用量決定にくらべ,PT-INR治療域内時間(TTR)が高いことと関連した。
コメント CYP2C9,VKORC1の遺伝子多型によるワルファリン投与量予測が,標準的導入に比して,3ヵ月間のPT-INRが高かったとする結論である。施設は英国3施設,スウェーデン2施設で,標準的導入法として急速飽和法を用いている。その結果,PT-INRが4を超える患者あるいは時間の割合は対照群で有意に高く,逆に2を下回る時間の割合に差はなかった。したがって,今回の結果は,日本で通常行われている漸増法によるワルファリン導入には参考にならないであろう。(是恒之宏

目的 warfarin療法開始期において,固定用量レジメンに対する抗凝固の程度を予測することは難しい。本試験は,warfarin療法を開始する患者において,遺伝子型にもとづく用量決定法が標準的な用量決定法よりすぐれているか検討した。主要評価項目:warfarin療法開始から12週間のTTR。
デザイン 無作為割付,単盲検(患者を盲検化)。一次解析の対象は13日間以上のPT-INRデータを有する患者集団。NCT01119300。
セッティング 多施設(英国3施設,スウェーデン2施設)。
期間 登録期間は2011年1月~2013年1月。追跡終了は2013年4月。
対象患者 455例。warfarin療法(PT-INR 2.0~3.0)を初めて開始する,心房細動または静脈血栓塞栓症(VTE)患者。
【除外基準】機械弁,試験開始時にCYP2C9,VKORC1の遺伝子型がわかっているなど。
【患者背景】平均年齢は遺伝子型群67.8歳,対照群66.9歳。各群の男性は64.2%,57.9%。体重85.6kg,87.4kg。黒人1.3%,0.9%,白人98.2%,98.7%,アジア人0.4%,0.4%。warfarinの適応:心房細動72.2%, 71.9%,VTE 27.8%,28.1%。喫煙状況:現喫煙10.3%,12.8%,喫煙経験41.7%,46.3%,喫煙未経験48.0%,41.0%。VKORC1遺伝子型:G/G(warfarin最高用量) 40.3%,43.9%,A/G 40.3%,42.5%,A/A(warfarin最低用量) 19.5%,13.7%。CYP2C9遺伝子型:*1/*1 66.4%,66.2%,*1/*2 20.8%,21.1%,*1/*3 9.3%,9.4%,*2/*2 2.7%,0.9%,*2/*3 0.9%,1.9%,*3/*3 0%,0.5%。無作為割付から治療開始までの日数中央値:1日,1日。
治療法 施設およびwarfarinの適応病態により層別化後,以下の2群に無作為割付。
遺伝子型群:227例。治療開始から5日間のwarfarin用量を,薬理遺伝学に基づくアルゴリズム(1~3日目:負荷用量アルゴリズム,4~5日目:4日目のPT-INRによる用量修正アルゴリズム)により決定。5日目以降は,各地域の実地臨床により決定した。
対照群:228例。治療開始から3日間,≦75歳の患者では1日目は10mg,2および3日目は5mgを,>75歳の患者では1~3日目を通じて5mgを投与。4および5日目は,通常の実地臨床により決定した。
両群ともに,治療開始期間後は,ルーチンの実地臨床に順じた。CYP2C9*2, CYP2C9*3, VKORC1(-1639G→A)アレルの遺伝子型はポイントオブケア検査にて判定。
追跡完了率 割付け治療を13日間以上継続した患者は,遺伝子型群211例,対照群216例。
結果

●評価項目
平均TTRは遺伝子型群67.4%で,対照群60.3%より高かった(補正後の差[遺伝子型群-対照群]7.0%,95%CI 3.3-10.6,p<0.001)。
per-protocol解析でも同様に有意差を認めた(68.9% vs. 62.3%,補正後の差6.6%,95%CI 2.7-10.5,p=0.001)。
PT-INR≧4.0の患者の割合は遺伝子型群27%で,対照群36.6%より低かった(OR 0.63,95%CI 0.41-0.97,p=0.03)。
その他の副次評価項目は以下のとおり。
PT-INR≧4.0の時間の割合:2.3% vs. 5.3%,差(遺伝子型群-対照群)-2.9%,95%CI -4.5~-1.4,p<0.001。
PT-INR<2.0の時間の割合:20.0% vs. 21.9%,差-2.0,95%CI -4.9~1.0,p=0.20。
PT-INが治療域内に到達するまでの期間中央値:21日 vs. 29日,HR 1.43,95%CI 1.17~1.76,p<0.001。
warfarinの安定用量に達するまでの時間中央値:44日 vs. 59日,HR 1.40,95%CI 1.12~1.74,p=0.003。
大出血(ISTH出血基準)の発生は両群ともに認めなかった。

●有害事象

文献: Pirmohamed M, et al.; EU-PACT Group. A randomized trial of genotype-guided dosing of warfarin. N Engl J Med 2013; 369: 2294-303. pubmed
関連トライアル COAG, Couma-Gen, Crowther MA et al, RE-LY quality of INR control, Takeuchi F et al
関連記事