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CHANCE Clopidogrel in High-Risk Patients with Acute Nondisabling Cerebrovascular Events
結論 発症から24時間以内に治療可能な一過性脳虚血発作(TIA)または軽症脳卒中患者における90日間の脳卒中再発予防について,clopidogrel+初期21日間のaspirin併用はaspirin単独にくらべすぐれており,出血リスクは上昇しなかった。
コメント これまで,TIA急性期の微小栓子シグナル抑制や短期間のイベント抑制にクロピドグレル+アスピリンの有効性が示され,一方でハイリスク脳梗塞への両者の併用療法は累積的に出血イベント(特に頭蓋内出血)を増加させるとして,3ヵ月以内にとどめることが推奨されてきた。今回の研究は,TIA,minor strokeの再発が発症初期に顕著なことに注目し,発症24時間以内から21日間に限定した併用療法を行うことで,その有効性を明らかにしている。優れた臨床研究デザインの成果といえよう。(岡田靖

目的 先行研究より,TIAまたは軽症脳卒中発症から3ヵ月以内の脳卒中再発率は10~20%で,大部分は2日以内に発症するとされている。本試験では,高リスクのTIAまたは軽症虚血性脳卒中患者において,clopidogrel +初期21日間のaspirinの併用は,aspirin単独にくらべ90日間の再発リスクを抑制するという仮説を検証した。有効性の主要評価項目:90日間の脳卒中(虚血性/出血性)再発。安全性の主要評価項目:GUSTO出血基準の中等度~重篤な出血。
デザイン 無作為割付,二重盲検試験。intention-to-treat解析。NCT00979589。
セッティング 多施設(114施設),中国。
期間 スクリーニング期間は2009年10月~2012年7月。
対象患者 5,170例。40歳以上,症状発現から24時間以内に試験薬の投与開始が可能な軽症虚血性脳卒中(National Institute of Health stroke scale:NIHSSスコア≦3)またはTIA(脳虚血症状が24時間以内に回復かつ再発リスクが高い[ABCD2スコア≧4])患者。
【除外基準】出血,非虚血性脳疾患(血管奇形,腫瘍,膿瘍など),孤立性感覚症状,画像上急性虚血が認められない孤立性めまい,当該症状直前のmodified Rankin Score(mRS)≧2,心房細動など抗凝固療法の適応を有する病態または試験薬禁忌,頭蓋内出血既往,長期抗血小板療法/血小板機能に影響を及ぼすNSAID/無作為割付の10日前までのheparinまたは経口抗凝固薬投与,消化管出血/大手術から3ヵ月以内,スクリーニングから3ヵ月以内に血行再建術の予定,試験薬中止を要する手術/インターベンションの予定,血管造影/手術によるTIA/軽症脳卒中など。
【患者背景】年齢中央値は併用群63歳,aspirin単独群62歳。各群の女性33.0%,34.7%。病歴:虚血性脳卒中両群20.0%,TIA 3.6%,3.1%,心筋梗塞1.7%,2.0%,高血圧66.4%,65.1%,糖尿病21.3%,21.0%。無作為割付までの平均経過時間両群13時間。試験参加イベント:TIA 27.7%,28.2%,軽症脳卒中72.3%,71.8%。
治療法 第1日には全例にオープンラベルのaspirin 75~300mg(用量は医師が決定)を投与し,以下の2群に無作為割付した。
併用群:2,584例。clopidogrelを第1日に初期用量300mg,第2~90日に75 mg/日投与し,aspirinを第2~21日に 75 mg/日併用。
aspirin単独群:2,586例。第2日~90日に75 mg/日を投与。
追跡完了率 追跡不能は36例(0.7%,併用群20例 vs. aspirin群16例)。
結果

●評価項目
脳卒中は併用群212例(8.2%)で,aspirin単独群303例(11.7%)にくらべ抑制された(HR 0.68,95%CI 0.57-0.81,p<0.001)。
脳卒中,心筋梗塞,心血管死:8.4% vs. 11.9%,HR 0.69;0.58-0.82,p<0.001。
虚血性脳卒中:7.9% vs. 11.4%,HR 0.67;0.56-0.81,p<0.001。
TIA:1.5% vs. 1.8%,HR 0.82;0.53-1.26,p=0.36。
出血性脳卒中:0.3% vs. 0.3%,HR 1.01;0.38-2.70,p=0.98。
心筋梗塞:0.1% vs. 0.1%,HR 1.44;0.24-8.63,p=0.69。
心血管死:0.2% vs. 0.2%,HR 1.16;0.35-3.79,p=0.81。
全死亡:0.4% vs. 0.4%,HR 0.97;0.40-2.33,p=0.94。

GUSTO出血基準の中等度または重篤な出血は併用群7例(0.3%),aspirin単独群8例(0.3%)と同程度であった(p=0.73)。
すべての出血:2.3% vs. 1.6%,HR 1.41;0.95-2.10,p=0.09。

●有害事象

文献: Wang Y, et al.; the CHANCE Investigators. Clopidogrel with Aspirin in Acute Minor Stroke or Transient Ischemic Attack. N Engl J Med 2013; 369: 11-9. pubmed
関連トライアル AAASPS 2003, ACTIVE A, ACTIVE W, APPRAISE, APPRAISE-2, CAPRIE 1996, CAPRIE 2000, CARESS, CASISP, CASPAR , CHARISMA, CHARISMA atrial fibrillation, CHARISMA bleeding complications, CHARISMA stroke severity, CHARISMA subgroup analysis, CLARITY-TIMI 28, clopidogrel追加による死亡率抑制効果, CLOSURE I, CREDO, CURE, DAC, EARLY, EXPRESS risk of bleeding, FASTER, MATCH, PLATO total events, PRoFESS, PRoFESS acute ischemic stroke, PRoFESS disability and cognitive function, SPS3, SPS3 post hoc analysis, TRITON-TIMI 38, WARSS, WOEST, 急性脳梗塞/TIA患者への抗血小板療法:2剤併用療法と単剤療法の比較, 血管疾患患者に対する抗血小板療法
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