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J-RHYTHM target INR values
結論 非弁膜症性心房細動患者,とりわけ70歳以上の患者における血栓塞栓イベント予防について,PT-INR 1.6~2.6は安全かつ有効である。2.6~2.99も有効だが,大出血リスクがわずかに上昇した。
コメント これまで日本のガイドラインでは,70歳以上の高齢者においてPT-INRのコントロールを1.6~2.6とすることが推奨されてきたが,これは比較的小規模のstudyによるものである。今回,より大規模な臨床研究でPT-INR 1.6~2.6の妥当性があらためて示されたことは大変意義深い。PT-INR別のサブ解析をみると,1.6~1.99のsubsetがリスク・ベネフィットからもっともよいと考えられるが,実臨床でこの狭い範囲にコントロールすることは実質的に困難なことが多いことから,1.6~2.6が許容される範囲と考える。(是恒之宏

目的 日本人の非弁膜症性心房細動患者において,血栓塞栓イベントと出血イベントの両方を予防しうるPT-INR値を検討した。評価項目:血栓塞栓イベント(症候性脳梗塞,一過性脳虚血発作,全身性塞栓症),入院を必要とする大出血,死亡。
デザイン 観察的コホート研究。UMIN000001569。
セッティング 多施設,日本。
期間 追跡期間は2年。
対象患者 7,527例。外来通院中の心房細動患者連続例。
【除外基準】僧帽弁狭窄症,機械弁。
【患者背景】平均年齢は非warfarin群67.8歳,warfarin PT-INR≦1.59群70.1歳,1.6~1.99群70.4歳,2.0~2.59群69.6歳,2.6~2.99群69.6歳,≧3.0群71.5歳*。各群の男性70.4%,69.7%,71.7%,70.3%,73.3%,71.0%。発作性心房細動:60.6%,37.7%,33.5%,33.6%,37.7%,30.2%*。平均CHADS2スコア1.2,1.7,1.7,1.8,1.8,1.9*。抗血小板療法57.8%,22.9%,20.9%,20.1%,21.8%,20.1%*。(*p<0.0001)
治療法 抗血栓薬の選択および用量は担当医が決定。
追跡完了率 追跡不能は121例(1.6%)。
結果

●評価項目
登録時にwarfarinを投与されていなかった 1,002例を非warfarin群とし,warfarin投与例はベースライン時のPT-INR値にもとづき5群に分け検討を行った(≦1.59群1,670例,1.6~1.99群2,348例,2.0~2.59群1,854例,2.6~2.99群363例,≧3.0群169例)。
[全体]
血栓塞栓イベントはPT-INR 1.66~2.99群で非warfarin群にくらべ低く,出血リスクはPT-INRが高くなるにつれ上昇した。
血栓塞栓イベント:非warfarin群3.0%,PT-INR≦1.59群2.0%,1.6~1.99群1.3%,2.0~2.59群1.5%,2.6~2.99群0.6%,≧3.0群1.8%,傾向p=0.0059。
大出血:非warfarin群0.8%,PT-INR≦1.59群1.5%,1.6~1.99群1.8%,2.0~2.59群2.4%,2.6~2.99群3.3%,≧3.0群4.1%,傾向p=0.0041。
全死亡:非warfarin群3.4%,PT-INR≦1.59群3.0%,1.6~1.99群2.7%,2.0~2.59群1.8%,2.6~2.99群1.7%,≧3.0群5.3%,傾向p=0.0095。
[≧70歳(4,041例,平均77歳)]
≧70歳に限定した解析でも,全体と同様の結果が得られた。
血栓塞栓イベント:非warfarin群4.1%,PT-INR≦1.59群2.7%,1.6~1.99群1.8%,2.0~2.59群1.7%,2.6~2.99群1.0%,≧3.0群3.1%,傾向p=0.0241。
大出血:非warfarin群1.1%,PT-INR≦1.59群2.1%,1.6~1.99群1.8%,2.0~2.59群3.3%,2.6~2.99群4.6%,≧3.0群7.3%,傾向p=0.0008。
全死亡:非warfarin群6.3%,PT-INR≦1.59群4.7%,1.6~1.99群3.8%,2.0~2.59群2.3%,2.6~2.99群1.5%,≧3.0群7.3%,傾向p=0.0004。
[<70歳(3,365例,平均61歳)]
<70歳に限定した解析では,全体,≧70歳の結果とは若干異なり,イベント発症率は低く,warfarinの有無による有意差は認められなかった。
血栓塞栓イベント:非warfarin群2.0%,PT-INR≦1.59群1.1%,1.6~1.99群0.6%,2.0~2.59群1.2%,2.6~2.99群0%,≧3.0群0%,傾向p=0.2894。
大出血:非warfarin群0.6%,PT-INR≦1.59群0.8%,1.6~1.99群1.8%,2.0~2.59群1.4%,2.6~2.99群1.8%,≧3.0群0%,傾向p=0.3513。
全死亡:非warfarin群0.9%,PT-INR≦1.59群0.9%,1.6~1.99群1.1%,2.0~2.59群1.2%,2.6~2.99群1.8%,≧3.0群2.7%,傾向p=0.7955。
(発症率は%/2年を示す)

●有害事象

文献: Inoue H, et al.; J-RHYTHM Registry Investigators. Target international normalized ratio values for preventing thromboembolic and hemorrhagic events in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation. Circ J 2013; 77: 2264-70. pubmed
関連トライアル ACTION Registry-GWTG stratified analysis, AFASAK 2 1999, ARISTOTLE, ARISTOTLE time in therapeutic range, ARISTOTLE-J, EAFT 1995, Hylek EM et al, J-RHYTHM Registry anticoagulation, J-RHYTHM Registry warfarin use, JNAF-ESP, North Dublin Population Stroke Study, Pengo V et al, PREVENT 2003, PROTECT AF, RE-LY Asian subgroup, RE-LY Japanese population, RE-LY quality of INR control, ROCKET AF post hoc analysis, Sadanaga T et al, SPAF III 1996, SPORTIF II , SPORTIF INR control, SPORTIF pooled analysis, SPORTIF V, THINRS effect of home testing
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