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メタ解析
脳梗塞急性期におけるheparin投与
Targeted Use of Heparin, Heparinoids, or Low-Molecular-Weight Heparin to Improve Outcome after Acute Ischaemic Stroke: an Individual Patient Data Meta-Analysis of Randomised Controlled Trials
結論 血栓リスクが高いまたは出血リスクが低い脳梗塞患者において,heparinのベネフィットは認められなかった。
コメント 脳梗塞急性期の血栓・塞栓症予防におけるヘパリン,ヘパリノイド,および低分子量ヘパリンの有効性をランダム化比較試験のメタ解析で検討した研究である。血栓イベント関連因子として高齢,神経重症度,心房細動,CTで示される最近の脳梗塞を,出血イベント関連因子として高齢と神経重症度を指摘した。さまざまな条件で検討したが,ヘパリンが有効なグループを見いだすことはできなかったという。しかし,脳梗塞急性期に一定の頻度で重症梗塞の再発や他の血栓・塞栓症イベントが観察されること,抗凝固薬が心内血栓の成長を抑制することから,少なくとも心原性脳塞栓症例を対象に,入院時梗塞巣のサイズやヘパリンに加えて新規経口抗凝固薬の選択をも考慮に入れた前向き研究を行う必要があると考える。(矢坂正弘

目的 静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高い,または出血リスクが低い脳梗塞患者に対し,現行のVTE予防ガイドラインではheparinによる予防を推奨しているが,リスク層別のアプローチは行われていない。本解析では,heparin投与が有意義な患者群はあるか,heparin投与により死亡/依存が減少するか検討した。主要評価項目:脳梗塞発症から14日以内の血栓イベント(致死的/非致死的肺塞栓症,深部静脈血栓症,心筋梗塞,脳梗塞再発の複合),出血イベント(致死的/非致死的頭蓋内出血,死亡/輸血/手術に至る頭蓋外出血)。
方法 最新のCochrane reviewを用い,急性期脳梗塞患者においてheparin(未分画heparin,heparinoid,低分子量heparin)をaspirinまたはプラセボと比較した大規模RCTを同定。
対象 5試験(22,655例)。
5試験で用いられた試験薬は以下の通り。
IST:未分画heparin 12,500IU皮下注または5,000IU 1日2回皮下注。
TOAST:danaparoidをXa因子活性により用量調節投与。
FISS-tris:nadroparin 3,800抗Xa因子IU を1日2回皮下注。
HAEST:dalteparin 100IU/kg 1日2回皮下注。
TAIST:tinzaparin 175または100抗Xa因子IU/kg皮下注。
主な結果 ・イベント発症率
全例における全血栓イベントは1,302例(5.7%)で,多くが脳梗塞再発(817例[3.6%])であった。全出血イベントは374例(1.7%),頭蓋外大出血207例(0.9%),重篤な頭蓋内出血184例(0.8%),死亡または依存は13,230例(58.4%)であった。血栓または出血イベント発症例における死亡/依存リスクは高く,血栓イベント発症例では88%,出血イベント発症例では82%であった。

・予測モデル
血栓イベントリスクと出血イベントリスクの両方にあてはまる予測モデルは高齢,神経障害重度,血栓イベントリスクの予測モデルはCTで確認された最近の脳虚血所見,心房細動であった。
[血栓イベントリスク]
高齢(10歳上昇ごと):OR 1.02,95%CI 1.02-1.03,p<0.0001。
神経障害重度(National Institute of Health stroke scale:NIHSSスコア 1点上昇ごと):OR 1.04;1.02-1.05,p<0.0001。
心房細動:OR 1.24;1.02-1.51,p=0.007。
CTで確認された最近の脳虚血所見:OR 1.18;1.03-1.35,p=0.014。
[出血イベントリスク]
高齢(10歳上昇ごと):OR 1.01,95%CI 1.00-1.02,p=0.04。
神経障害重度(NIHSS 1点上昇ごと):OR 1.06;1.04-1.09,p<0.0001。
(心房細動:OR 1.09;0.78-1.50,p=0.60)
予測モデルのAUCは,血栓イベントは0.63(95%CI 0.59-0.67),出血イベントは0.60(95%CI 0.55-0.64)であった。

・heparinのネットベネフィット
血栓リスク,出血リスクにもとづき解析を行ったが,heparinのネットベネフィットが認められる患者集団はなかった。
文献: Whiteley WN, et al. Targeted use of heparin, heparinoids, or low-molecular-weight heparin to improve outcome after acute ischaemic stroke: an individual patient data meta-analysis of randomised controlled trials. Lancet Neurol 2013; 12: 539-45. pubmed
関連トライアル aspirinの一次および二次予防効果(ATT), CASISP, CAST, CAST-IST, FISS-tris, IST 1997, IST 2001, PREVAIL, 急性出血性脳卒中患者におけるVTE予防のための抗凝固療法, 虚血性脳卒中患者に対するrt-PA療法
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