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Bichat Clinical Registry
結論 入院時血糖値および糖尿病の既往は血栓溶解療法静注/動注後の転帰不良と関連していた。その因果関係は現時点では不明であるが,入院時血糖値は脳梗塞重症度のサロゲートマーカーになるかもしれない。
コメント 入院時の高血糖が転帰不良や症候性頭蓋内出血の発症と関連するとの報告である。発症前の血糖コントロールの重要性が示唆されるとともに,急性期の血糖コントロールの意義について,今後の前向き研究が必要と思われる。(矢坂正弘

目的 静注または動注血栓溶解療法を受けた脳梗塞患者において,糖尿病の既往または入院時の血糖値が転帰不良と関連しているか,著者らの登録研究(Bichat Clinical Registry)およびシステマティックレビューにより評価した。主要評価項目:90日後の転帰良好(modified Rankin Score:mRS 0~2)。
デザイン 登録研究およびシステマティックレビュー。
セッティング Bichat Clinical Registryは単施設,フランス。
期間 Bichat Clinical Registryの登録期間は2002年2月~2012年2月。
対象患者 704例。期間中に血栓溶解療法を受けた脳梗塞患者。
【除外基準】データ欠損例。
【患者背景】平均年齢は非糖尿病群68.3歳,糖尿病群71.6歳*。各群の男性54.3%,66.4%*。既往:高血圧50.1%,70.2%*,高コレステロール血症27.8%,48.0%*,現喫煙または喫煙経験38.2%,42.3%,抗血栓療法38.8%,46.2%。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア
中央値12,11。血栓溶解療法:静注単独65.0%,71.2%,静注/動注併用23.5%,18.3%,動注単独11.5%,10.6%。発症から治療までの経過時間中央値158分,166分。(*p<0.05)
治療法 2007年4月以前は全例に通常の静注血栓溶解療法を施行したが,2007年4月以降は患者の状態により静注,静注/動注併用,動注を施行した。動注では0.5mg/kg投与後,動脈の閉塞が持続する場合機械的血管内治療を実施した。tPAに禁忌の患者では直接機械的血管内治療を考慮した。
追跡完了率
結果

●評価項目
[Bichat Clinical Registry]
糖尿病の有無による転帰の差異は認められなかった。
90日後の転帰良好:非糖尿病群58.0% vs. 糖尿病群54.8%,補正後OR 0.80,95%CI 0.47-1.34,p=0.39。
90日後の死亡:17.0% vs. 19.2%,補正後OR 1.21;0.65-2.22,p=0.55。
症候性頭蓋内出血:6.0% vs. 6.7%,補正後OR 1.29;0.53-3.14,p=0.57。
多変量解析において,入院時の血糖値高値は,早期の神経学的改善を除き転帰良好減少,有害事象増加と関連していた。
90日後の転帰良好:OR 0.77;0.64-0.94。
90日後の死亡:OR 1.32;1.07-1.63。
早期の神経学的改善:OR 0.83;0.66-1.04。
症候性頭蓋内出血:OR 1.35;1.02-1.79。

[システマティックレビュー]
方法:1996年1月~2012年5月に出版された,血栓溶解療法静注/動注を受けた脳梗塞患者における糖尿病の既往または入院時の血糖値の転帰に及ぼす影響を検討した論文をPubMedにて検索。
対象:55試験。
結果:
1.糖尿病
登録研究データを含む未補正メタ解析では,糖尿病は転帰不良,症候性頭蓋内出血と関連していた。多変量解析では,転帰不良とは関連していたが,症候性頭蓋内出血との関連は認められなかった。
(未補正)転帰不良:OR 0.76,95%CI 0.73-0.79,p<0.0001。
(未補正)症候性頭蓋内出血:OR 1.38;1.21-1.56,p<0.0001。
(多変量解析)転帰不良:OR 0.77;0.69-0.87,p<0.001。
(多変量解析)症候性頭蓋内出血:OR 1.11;0.83-1.48,p=0.48。
2.入院時血糖値
多変量解析において,入院時血糖値高値は転帰不良および症候性頭蓋内出血と関連していた(ORの数値は18mg/dL上昇ごと)。
転帰良好:OR 0.92;0.90-0.94,p<0.001。
症候性頭蓋内出血:OR 1.09 ;1.04-1.14,p<0.001。

●有害事象

文献: Desilles JP, et al. Diabetes mellitus, admission glucose, and outcomes after stroke thrombolysis: a registry and systematic review. Stroke 2013; 44: 1915-23. pubmed
関連トライアル Cronin CA et al, De Marchis GM et al, ECASS III, Fukuoka Stroke Registry, Helsinki Stroke Thrombolysis Registry, ICARO, ICARO-2, J-MARS, Madrid Stroke Network, Manawadu D et al, Mikulik R et al 2009, Prefasi D et al, RESTORE, rtPA血栓溶解療法の転帰における性差, Ruecker M et al, SAMURAI rt-PA Registry early neurological deterioration, Saposnik G et al, Sarikaya H et al, Sarikaya H et al, Sarikaya H et al (obese), Sarikaya H et al (posterior circulation stroke), Schellinger PD et al, SITS-ISTR 2010, SITS-ISTR blood pressure, SITS-ISTR young patients, SITS-ISTR/VISTA, SITS-MOST multivariable analysis, Toni D et al, VISTA contraindications, 虚血性脳卒中患者に対するIV/IA併用療法, 血栓溶解療法後の頭蓋内出血, 前方循環閉塞に対する血栓溶解療法, 灌流/拡散ミスマッチに基づいた遅延血栓溶解療法, 頸動脈解離による虚血性脳卒中に対する血栓溶解療法
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