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SYNTHESIS Expansion
結論 虚血性脳卒中患者において,血管内治療は標準治療(tPA静注)に対し優越性を示さなかった。
コメント 血管内治療は標準治療(rt-PA静注)との直接比較において,優越性を示せなかった。本研究では標準治療に比べて1時間の治療開始の遅れがあり,たとえ再開通率が高くても,一定時間後の再開通は利益をもたらさないということであろう。本研究から導き出された重要な結論の一つは,血管内治療の適応は血管閉塞部位を考慮せずに臨床症候のみでは判断できないことである。今後,閉塞血管の存在を確認し,さらに再開通までの時間を早めることなどで条件設定した新たな臨床試験をもとに,血管内治療の有効性のエビデンスが得られることを期待したい。(岡田靖

目的 虚血性脳卒中患者に対する血管内治療はtPA静注より再開通率が高いが,2つの治療法の直接比較は行われていない。本試験では,迅速な血管内治療は安全で実現可能であるとしたpilot study(J Neurointerv Surg 2010; 2: 74-9)の結果を受け,血管内治療が現在行いうる治療(tPA静注)よりすぐれるか検討を行った。主要評価項目:90日後の自立(modified Rankin Score:mRS 0~1)。
デザイン PROBE(prospective,randomised,open,blinded endpoints),intention-to-treat解析。NCT00640367。
セッティング 多施設。
期間 登録期間は2008年2月1日~2012年4月16日。
対象患者 362例。18~80歳,発症時間が明確な脳卒中患者で,4.5時間以内(tPA静注)または6時間以内(血管内治療)に治療が可能な症例。
【除外基準】頭蓋内出血など。
【患者背景】平均年齢は血管内治療群66歳,tPA静注群67歳。各群の男性59%,57%。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア中央値13(IQR 9~17),13(同9~18)。心房細動8%,16%(p=0.02)。降圧療法56%,58%。脳卒中の原因(day 7):心原性塞栓症32%,34%,解離8%,2%(p=0.03),大血管アテローム性動脈硬化30%,28%,小血管疾患7%,7%。発症から無作為割付までの経過時間中央値2時間28分,2時間25分。発症から治療までの経過時間中央値3時間45分,2時間45分(p<0.001)。
治療法 以下の2群に無作為割付。
血管内治療群:181例。血管内治療前のtPA静注は行わなかった。血管造影は血管内治療の指針が得られるよう行い,結論が出るまで抗凝固療法(heparin 5,000IUボーラス静注後,500IU/時)が推奨された。診断情報が得られた後,薬物的または機械的血栓溶解療法,もしくはその両方を行うか選択した。薬物的血栓溶解療法はマイクロカテーテルを血栓の近くに置き,tPAを0.9mg/kg(最大90mg)を超えないよう1時間注入した。t-PAは最大用量に達していなくても,完全再開通が認められた時点で終了した。機械的血栓溶解療法の追加は医師の裁量とし,Solitaire,Penumbra,Trevo,Merciを用いた。
tPA静注群:181例。発症から4.5時間以内に,tPA 0.9mg/kg(最大90mg)の10%をボーラス静注し,90%を60分かけて静注。
全例に対し,割り付けられた治療法にもっとも適切な治療を行った。降圧薬,抗凝固薬は発症から24時間以内は投与しなかった(血管内治療中のheparin,手技中にステントを留置する場合の抗血小板薬は除く)。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
90日後の自立(mRS 0~1),死亡は両群で同程度であった。
自立:血管内治療群55例(30.4%),tPA静注群63 例(34.8%)(補正後OR 0.71,95%CI 0.44 -1.14,p=0.16)。
死亡:26例(14.4%)vs. 18例(9.9%),p=0.22。
7日以内の症候性頭蓋内出血も両群各10例(6%)で同程度であった(p=0.99)。
非致死的:6例 vs. 9例。
致死的:4例 vs. 1例。
その他の有害事象について,両群間に有意差はみられなかった。

●有害事象
いて,両群間に有意差はみられなかった。
[有害事象]

文献: Ciccone A, et al.; SYNTHESIS Expansion Investigators. Endovascular treatment for acute ischemic stroke. N Engl J Med 2013; 368: 904-13. pubmed
関連トライアル Austrian Stroke Unit Registry, Bhatia R et al, CLOTBUST , ECASS, ECASS III, ICARO, ICARO-2, IMS III, IST-3, MR RESCUE, NINDS rt-PA Stroke Study 1995, Power A et al, PRACTISE gender difference, SAINT postthrombolysis ICH, SAMURAI rt-PA Registry early neurological deterioration, Saqqur M et al, SITS-ISTR importance of recanalization, SITS-ISTR sex differences, SITS-MOST multivariable analysis, Toni D et al, 血栓溶解療法後の頭蓋内出血, 前方循環閉塞に対する血栓溶解療法, 内頸動脈閉塞に続発する脳梗塞に対するtPA静注および動脈内血管内療法
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