抗血栓トライアルデータベース
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WOEST What is the Optimal Antiplatelet and Anticoagulant Therapy in Patients with Oral Anticoagulation and Coronary Stenting
結論 PCIを受けた抗凝固療法を必要とする患者において,warfarin+clopidogrelはこれにaspirinを加えた3剤併用にくらべ出血合併症を抑制し,血栓イベントを増加させなかった。
コメント 冠動脈疾患における抗血小板療法の標準治療であるアスピリンに対してチャレンジをしたとの意味では歴史的な臨床試験である。一方,検証した仮説には「歴史的」意義があるにもかかわらず,試験自体はサンプルサイズが小さく,かつ急性期の症例と非急性期の症例が混在しているなど,試験対象には不均一性が大きいとの問題もある。経口抗凝固薬が必要とされる症例においては抗凝固薬の継続を前提として,アスピリン対アスピリン/クロピドグレルではなく,クロピドグレル対クロピドグレル/アスピリンの比較試験を行った。試験はオープンラベルであり,主要エンドポイントがソフトであるため,バイアスの可能性も否定できない。
世界の多くの国ではクロピドグレルは特許を喪失し,価格の面ではアスピリンと競合できる環境にある。アスピリンは長年の使用経験と,心筋梗塞急性期において心血管死亡を減らすとのハードエンドポイントによるエビデンス,最近では大腸がんを中心とする抗がん作用なども注目されている。一方,アスピリン服用時には胃粘膜障害のリスクが高いことは事実である。クロピドグレルは血栓性血小板減少性紫斑病,日本人では肝障害などのリスクもあるが,価格の問題をクリアーすれば消化管出血はアスピリンよりも少ない可能性もある。数年程度の期間における有効性,安全性の検証であればランダム化比較試験による比較が可能であるが,さらに長期間におけるアスピリン,クロピドグレルの有効性,安全性の比較は今後の課題である。
本試験は,抗凝固薬を使用している場合では,冠動脈インターベンションを受けた場合であってもアスピリンとクロピドグレルを併用するよりもクロピドグレルのみを残すほうが出血リスクは少ないことを示唆した。アスピリンの標準治療としての位置が確立されているため,アスピリンを止めるにはそれなりの根拠が必要である。長期間における有効性,安全性の検証に耐えるデータベース作成のために,クロピドグレルのみを残すことが不可能な選択ではないことを示したことに意義がある。(後藤信哉

目的 抗凝固療法を必要とする患者がPCIを受けるときは,ステント血栓症予防のためaspirinおよびclopidogrelが適応となるが,3剤併用は重篤な出血リスクが上昇する。ここでは,warfarin+clopidogrel(2剤併用)はwarfarin+clopidogrel+aspirin併用(3剤併用)にくらべ,出血リスクを低下させるが,血栓リスクを上昇させないという仮説を検討した。主要評価項目: 1年間のすべての出血イベント(TIMI出血基準)。
デザイン PROBE(prospective,randomised,open,blinded endpoints)。intention-to-treat解析。NCT00769938。
セッティング 多施設(15施設),2ヵ国(オランダ,ベルギー)。
期間 登録期間は2008年11月~2011年11月。追跡期間終了は2012年8月1日。
対象患者 573例。18~80歳,長期(1年以上)経口抗凝固療法を必要とする,PCIの適応となる重度の冠動脈病変(75%以上の狭窄または血流予備量比<0.8)を有する患者。
【除外基準】頭蓋内出血既往,心原性ショック,消化性潰瘍から6ヵ月以内,血小板減少症(<50,000/μL),TIMI大出血から12ヵ月以内など。
【患者背景】平均年齢は2剤併用群70.3歳,3剤併用群69.5歳。各群の男性77%,82%。リスク因子:糖尿病24%,25%,高血圧69%,68%,高コレステロール血症68%,72%,現喫煙22%,15%,心筋梗塞既往34%,35%,脳卒中既往18%,18%。PCI施行日の平均PT-INR:1.86,1.94。経口抗凝固薬の適応病態:心房細動/粗動69%,69%,機械弁10%,11%,その他20%,20%。
治療法 以下の2群に無作為割付。
2剤併用群:279例。warfarin+clopidogrel 75mg/日。
3剤併用群:284例。warfarin+clopidogrel 75mg/日+aspirin 80~100mg/日(試験前にaspirin未投与であった患者には負荷用量320mgを投与)。
全例に前治療としてclopidogrel 75mg/日を5日間投与し,PCI前には24時間以上前に負荷用量300mgまたは4時間以上前に600mgを投与。インターベンションの間,経口抗凝固薬(目標PT-INR:2.0)は可能であれは継続した。PCI中の経口抗凝固薬は,担当医の裁量により低分子量heparinへの置換も可とした。出血リスク低下のため,橈骨アクセス,プロトンポンプ阻害薬,アクセス部位閉鎖デバイス(大腿アクセスでPCIを施行した場合)の使用を推奨した。PCI後,経口抗凝固療法を再開した(強度は適応病変による)。抗血小板療法の期間は担当医の裁量により,ベアメタルステント留置の安定冠動脈疾患患者では1ヵ月~1年とした。急性冠症候群または薬剤溶出性ステント留置例ではclopidogrelは1年以上とした。
追跡完了率 1年後の追跡完了は2剤併用群98.2%,3剤併用群98.3%。
結果

●評価項目
出血は2剤併用群54例(19.4%)で,3剤併用群126例(44.4%)にくらべ少なかった(HR 0.36,95%CI 0.26-0.50,p<0.0001)。
複数回の出血発生は2剤併用群6例(2.2%),3剤併用群34例(12.0%)。
1回以上の輸血は11例(3.9%)vs. 27例(9.5%)で,2剤併用群のほうが少なかった(OR 0.39,95%CI 0.17-0.84,p=0.011)。
副次評価項目(死亡+心筋梗塞+脳卒中+標的血管再血行再建術+ステント血栓症)は2剤併用群31例(11.1%)で,3剤併用群50例(17.6%)にくらべ少なかった(HR 0.60,95%CI 0.38-0.94,p=0.025)。

●有害事象

文献: Dewilde WJ, et al.; WOEST study investigators. Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomised, controlled trial. Lancet 2013; 381: 1107-15. pubmed
関連トライアル Abraham NS et al, ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, ACTIVE A, ACTIVE W, APPRAISE, CAPRIE 1996, CASPAR , CHANCE, CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, CHARISMA post hoc analysis, CREDO, CURRENT-OASIS 7 undergoing PCI, DECLARE-LONG II, KAMIR triple vs. dual antiplatelet therapy, Lamberts M et al, Lamberts M et al, MATCH, Mishkel GJ et al, PCI-CLARITY, PCI-CURE, REAL-LATE / ZEST-LATE, Saadeh C et al, Sarafoff N et al, Sørensen R et al, SPS3, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 PCI, WAVE
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