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ASPIRE Aspirin to Prevent Recurrent Venous Thromboembolism
結論 初期治療として抗凝固療法を完了した初発の特発性静脈血栓塞栓症(VTE)患者において,低用量aspirinはプラセボに比し,VTE再発を抑制しなかった。しかし,出血を増加させずに主要血管イベントを抑制したことから,低用量aspirinのベネフィットについての初期のエビデンスが示された。
コメント 初発の特発性静脈血栓塞栓症患者は,抗凝固療法中止後の再発リスクが高く,ガイドラインでも抗凝固療法の長期間継続による再発予防を講じることが推奨されている。しかし,具体的にはどのタイミングで中止するべきか判断に迷う場合も少なくない。今回のASPIRE研究では,当初予定されていた組み入れ患者数が達成できなかったなどの要因により,本研究単独ではプラセボとの間に,アスピリンによるワルファリン中止後の有意な静脈血栓塞栓症再発抑制効果は示されなかった。しかし,初発特発性静脈血栓塞栓症患者を対象とした最近の同様の WARFASA研究と合わせて解析を行うことで,抗凝固療法中止後,低用量アスピリンが出血を増加させることなく静脈血栓塞栓症の再発を抑制することを示した。低用量アスピリンはワルファリンによる再発予防効果には及ばないものの,出血のリスクを増加させないことを考慮すれば,代替薬としての価値を有することが示唆された。(山田典一

目的 初発の特発性VTE患者における抗凝固療法中止後のVTE再発リスクは高い。ビタミンK拮抗薬による長期抗凝固療法は再発予防効果が高いが,出血リスクの上昇や利便性の低さから,延長投与が推奨されているにもかかわらず,大部分の患者は3~6カ月で使用を中止してしまう。本試験では,初期治療として抗凝固療法を完了した初発のVTE患者において,低用量aspirinのVTE再発予防効果を検討した。有効性の一次エンドポイント:VTE再発[確定診断された症候性深部静脈血栓症(DVT),非致死的/致死的肺塞栓症(PE)]。安全性の一次エンドポイント:大出血または大出血ではないが臨床的に意味のある出血。
デザイン 無作為割付,プラセボ対照,二重盲検試験。intention-to-treat解析。ACTRN12605000004662。
セッティング 多施設(56施設),5カ国。
期間 登録期間は2003年5月~2011年8月。追跡終了は2012年3月31日。追跡期間中央値は37.2カ月。
対象患者 822例。18歳以上,客観的に診断された初発の特発性症候性DVT(膝窩静脈またはより近位の下肢静脈を含む)もしくは急性PE患者で,初期治療として抗凝固療法を完了した症例。
【除外基準】初発の特発性VTEの症状発現から2年以上経過,aspirin/他の抗血小板薬/非ステロイド性抗炎症薬に対し禁忌または適応病態を有する,経口抗凝固薬継続の適応病態,試験参加を妨げる/余命が限られる医学上の問題。
【患者背景】平均年齢はaspirin群55±16.0歳,プラセボ群54±15.8歳。各群の男性55%,54%。BMI(≧30)39%,34%。当該イベント:近位部DVT 57%,56%,PE 27%,29%,DVT+PE 14%,14%。無作為割付前の抗凝固療法の期間:3~6カ月28%,24%,6~12カ月63%,65%,12カ月以上8%,10%。抗凝固療法終了から無作為割付までの期間:≦1日37%,36%,1~7日17%,17%,7~30日21%,25%,>30日25%,21%。発症後すぐの抗凝固療法:低分子量heparin 85%,88%,未分画heparin 6%,6%。その後の抗凝固療法:warfarin 83%,83%。
治療法 全例に初期抗凝固療法[heparin投与後warfarinもしくは代替薬投与]を6週~24カ月間行った。warfarinは目標INR 2~3,6~12カ月間の投与が推奨された。
施設および初期抗凝固療法の期間(≦26週,>26週)にて層別化後,aspirin群(411例。腸溶錠100mg/日投与),プラセボ群(411例)に無作為割付。
追跡完了率
結果

●評価項目
VTE再発はaspirin群57例(4.8%/年),プラセボ群73例(6.5%/年)で,同程度であった(HR 0.74,95%CI 0.52-1.05,p=0.09)。
DVT:aspirin群3.3%/年 vs. プラセボ群3.8%/年,HR 0.86,95%CI 0.56-1.33,p=0.50。
PE:1.5%/年 vs. 2.7%/年,HR 0.57,95%CI 0.32-1.02,p=0.06。
2つの二次エンドポイントはaspirin群で抑制された。
主要血管イベント(VTE+心筋梗塞+脳卒中+心血管死):5.2%/年 vs. 8.0%/年,HR 0.66,95%CI 0.48-0.92,p=0.01。
ネットクリニカルベネフィット(VTE+心筋梗塞+脳卒中+大出血+全死亡): 6.0%/年 vs. 9.0%/年,HR 0.67,95%CI 0.49-0.91,p=0.01。
大出血または大出血ではないが臨床的に関連する出血は,両群で同程度であった(1.1%/年 vs. 0.6%/年,HR 1.73,95%CI 0.72-4.11,p=0.22)。

[WARFASAとのpooled解析]
VTE再発はaspirin群85/616例で,プラセボ群116/608例に比し抑制された(HR 0.68,95%CI 0.51-0.90,p=0.007,不均一性p=0.42)。
臨床的に意味のある出血はaspirin群18/616例,プラセボ群12/608例で,同程度であった(HR 1.47,95%CI 0.70-3.08,p=0.31,不均一性p=0.50)。

●有害事象
入院を要する重篤な有害事象はaspirin群25%,プラセボ群28%で,同程度であった。追跡期間中の試験薬中止はaspirin群15.1%/年で,プラセボ群11.9%/年に比し多い傾向がみられた(p=0.06)。

文献: Brighton TA, et al.; ASPIRE Investigators. Low-dose aspirin for preventing recurrent venous thromboembolism. N Engl J Med 2012; 367: 1979-87. pubmed
関連トライアル AAASPS 2003, ACTIVE A, AMPLIFY-EXT, APPRAISE, APPRAISE-2, ARISTOTLE, aspirinの一次および二次予防効果(ATT), aspirin連日投与による短期の癌発生,癌死,非血管死抑制効果, ATLAS ACS-TIMI 46 , AVERROES, CAPRIE 1996, CASISP, CASPAR , CAST, CAST-IST, CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, CLARITY-TIMI 28, COMPASS, CREDO, DAC, EAFT 1993, ECLAP, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, ELATE, FRISC, Hellemons BS et al, IST 1997, JPAD, MATCH, POISE-2, PREVENT 2003, RE-COVER, RE-MEDY & RE-SONATE, REAL-LATE / ZEST-LATE, S-ACCESS, SAVE-ONCO, SPAF III 1996, SPS3, SYMPHONY, THRIVE III, TPT, TRA 2P-TIMI 50, Turpie AG et al 1993, van Gogh Studies prophylaxis, VTE二次予防の抗血栓療法の有効性および安全性, WARCEF, WARFASA, WARSS, WASID, WHS, WHS vitamin E, 心血管疾患リスクを有する患者におけるaspirin+OAC併用とOAC単独投与の比較
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