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SPS3 Secondary Prevention of Small Subcortical Strokes
結論 ラクナ梗塞を最近発症した患者において,aspirinにclopidogrelを併用しても脳卒中再発リスクは減少せず,出血と死亡のリスクが上昇した。
コメント SPS3は最近のラクナ梗塞に対する小血管障害に対するdual antiplatelet therapy(DAPT),厳格降圧の有用性を検証する大変注目された研究であった。しかし,CHARISMAMATCHに続き,DAPTの有効性は得られず,出血イベント(特に消化管出血),死亡率を増加させた。脳卒中の二次予防におけるDAPTの難しさを示しているとともに,本試験では,良好な血圧管理とスタチン投与が高率に行われ,アスピリン単独の再発も低い。一方で,消化管出血が多かった点についてはproton pump inhibitorの使用が不明で,十分に普及していないことも考えられる。とりわけラクナ梗塞へのDAPTは避けて,統合的な内科治療が望まれる。(岡田靖

目的 ラクナ梗塞は虚血性脳卒中の約25%を占める。多くは穿通枝領域に病変があり,潜在性脳梗塞や血管性認知症の主因となるが,これまでにMRIにより検出されたラクナ梗塞の二次予防についての臨床試験は行われていない。本試験では, clopidogrelのaspirinへの上乗せはaspirin単独よりラクナ梗塞の二次予防効果にすぐれるという仮説を検証する。有効性の主要評価項目:脳卒中再発[全虚血性脳卒中,頭蓋内出血(硬膜下血腫を含む)]。安全性の主要評価項目:頭蓋外の大出血。
デザイン 無作為割付,2×2ファクトリアル(抗血小板療法については二重盲検,降圧療法についてはオープン)。intention-to-treat解析。NCT00059306。
2011年8月,データおよび安全性モニタリング委員会は抗血小板薬併用の有効性は得られないと判断し,試験は早期に中止された。
セッティング 多施設(82施設),複数国(北米,ラテンアメリカ,スペイン)。
期間 登録期間は2003~2011年。平均追跡期間は3.4年(範囲0~8.2年)。
対象患者 3,020例。30歳以上,症候性ラクナ梗塞発症から180日以内,手術の適応となる同側頸動脈疾患または心原性脳塞栓症のリスク因子がなく,MRIの基準[MRI拡散強調画像(DWI)上における病変径,またはフレアー法/T2強調画像上における病変の高強度像が2.0cm以下]に合致した患者。一過性ラクナ梗塞の場合は,MRI DWIで病変が確認できた症例を対象とした。
【除外基準】MRIで最近または過去の皮質梗塞を確認,直径1.5cmを超える皮質下梗塞,脳内出血の既往(微小出血は対象とした),mRS≧4の脳卒中,頭蓋内出血の既往(頭部外傷は対象とした),皮質の虚血性脳卒中。
【患者背景】平均年齢は併用群63歳,aspirin単独群63歳。各群の男性62%,64%。高血圧の既往76%,74%。スクリーニング時の平均血圧143/78mmHg,143/78mmHg。糖尿病35%,38%。虚血性心疾患10%,11%。脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)既往15%,15%。現喫煙20%,21%。試験参加疾患の病態:虚血性脳卒中97%,97%,TIA 3%,3%。ラクナ梗塞のタイプ:純粋運動片麻痺31%,35%,純感覚性脳卒中10%,10%,感覚運動性脳卒中32%,30%,その他27%,25%。当該イベント発症時のaspirin使用28%,28%。追跡時のスタチン使用84%,85%。
治療法 以下の2群に無作為割付。
併用群:1,517例。aspirin腸溶錠325mg+clopidogrel 75mg/日併用。
aspirin単独群:1,503例。aspirin腸溶錠325mg/日単独投与。
本試験は2×2ファクトリアルで,降圧療法(<130mmHg vs. 130~149mmHg)についても検討されたが,ここでは抗血小板療法の結果を記載する。
追跡完了率 追跡不能は2%。
結果

●評価項目
試験薬の恒久的中止率は併用群30%で,aspirin単独群27%に比べ高かった(p=0.02)。
抗血小板療法と降圧療法との交互作用は認められなかった(p=0.46)。
脳卒中再発は併用群125例(2.5%/年)で,aspirin単独群138例(2.7%/年)と有意差は認められなかった(HR 0.92,95%CI 0.72 -1.16,p=0.48)。
虚血性脳卒中:2.0%/年vs. 2.4%/年,HR 0.82,95%CI 0.63-1.09,p=0.13。
頭蓋内出血:0.42%/年vs. 0.25%/年,HR 1.65,95%CI 0.83-3.31,p=0.15。
障害の残る脳卒中または致死性脳卒中:0.84%/年vs. 0.78%/年,HR 1.06,95%CI 0.69-1.64,p=0.79。
すべての大出血は併用群105 例(2.1%/年)で,aspirin単独群56例(1.1%/年)の約2倍であった(HR 1.97,95%CI 1.41-2.71,p<0.001)。
分類可能な再発性虚血性脳卒中のうち,ラクナ梗塞は133/187例(71%)であった。
全死亡は併用群のほうが多かった(併用群113例 vs. aspirin単独群77例,HR 1.52,95%CI 1.14-2.04,p=0.004)。この差は致死性出血(併用療法群 9 例 vs. aspirin単独群 4 例,p=0.17)では説明されなかった。

●有害事象

文献: Benavente OR, et al.; SPS3 Investigators. Effects of clopidogrel added to aspirin in patients with recent lacunar stroke. N Engl J Med 2012; 367: 817-25. pubmed
関連トライアル AAA, AAASPS 2003, ACTIVE A, APPRAISE, APPRAISE-2, ASPIRE, AVERROES, CAPRIE 1996, CAPRIE impact of smoking, CARESS, CASPAR , Chan FK et al, CHANCE, CHARISMA, CHARISMA atrial fibrillation, CHARISMA bleeding complications, CHARISMA post hoc analysis, CHARISMA stroke severity, CHARISMA subgroup analysis, CLARITY-TIMI 28, clopidogrel追加による死亡率抑制効果, COGENT, COMPASS, CREDO, CURE, DAC, DES LATE, EXPRESS risk of bleeding, FASTER, Flynn RW et al, IST 1997, Lee WH et al, MATCH, PLATO, POISE-2, PRODIGY, PRoFESS, PRoFESS acute ischemic stroke, PRoFESS disability and cognitive function, PRoFESS post hoc analysis, REAL-LATE / ZEST-LATE, SITS-ISTR antiplatelet therapy, SPS3 post hoc analysis, Tompkins C et al, TRILOGY ACS, TRITON-TIMI 38, WARCEF, WARFASA, WARSS, WAVE, WOEST, 急性脳梗塞/TIA患者への抗血小板療法:2剤併用療法と単剤療法の比較, 血管疾患患者に対する抗血小板療法
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