抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
RIETE registry thrombolytic therapy
結論 血圧値が正常の急性症候性肺塞栓症(PE)患者において,血栓溶解療法は死亡リスクを上昇させたが,血行動態が不安定な患者においては,死亡リスクを低下させる可能性がある。

目的 先行研究で,血栓溶解療法はPE関連収縮期低血圧患者においては生存率を改善しなかったことが報告されている。本解析では,確定診断された症候性PE患者におけるPE診断の3ヵ月後の血栓溶解療法と全死亡の関連について,患者を低血圧[収縮期血圧(SBP)<100mmHg]と正常血圧に分け,プロペンシティスコアを用いて比較検討する。主要評価項目:90日後の全死亡率。
デザイン 後ろ向きコホート研究。
セッティング 多施設,複数国。
期間
対象患者 15,944例。客観的な確定診断(肺換気/血流シンチグラフィ,ヘリカル胸部CTによる)を受けた急性症候性PE患者連続例。
【除外基準】―
【患者背景】[SBP<100mmHgの1,212例]患者数は血栓溶解療法実施群134例,非実施群1,078例。平均年齢は61±18歳,68±17歳。男性47%,41%。BMI 27.4kg/m2,27.1 kg/m2。リスク因子:静脈血栓塞栓症(VTE)既往8.9%,12%,癌15%,26%(p=0.005)。合併疾患:慢性肺疾患8.2%,12%,慢性心疾患1.5%,10%(p=0.003),最近の大出血2.2%,4.1%。臨床症状:失神55%,36%(p<0.001),胸痛47%,40%,呼吸困難84%,79%,心拍数≧110/分65%,37%(p<0.001),動脈オキシヘモグロビン飽和度<90% 39%,34%,SBP<90mmHg 61%,46%(p=0.001)。
[SBP≧100mmHgの14,732例]患者数は血栓溶解療法実施群298例,非実施群14,434例。平均年齢は58±18歳,68±16歳(p<0.001)。男性51%,46%。BMI 28.7kg/m2,28.0 kg/m2。リスク因子:VTE既往16%,15%,癌12%,22%(p<0.001)。合併疾患:慢性肺疾患7.3%,13%(p=0.005),慢性心疾患2.0%,7.7%(p<0.001),最近の大出血0.7%,2%。臨床症状:失神45%,13%(p<0.001),胸痛53%,48%,呼吸困難90%,81%(p<0.001),心拍数≧110/分40%,19%(p<0.001),動脈オキシヘモグロビン飽和度<90% 32%,21%(p<0.001)。
治療法 治療は各施設の基準にしたがって行われた。大部分の患者は未分画heparin,低分子量heparinによる初期抗凝固療法を受け,オーバーラップ後,長期ビタミンK拮抗薬を投与された。適切と判断された場合,血栓溶解薬かつ/または強心薬が投与された。一般的には,血栓溶解療法は心原性ショックの患者に対して行われた。抗凝固療法が禁忌または不成功(治療用量投与にもかかわらずVTEが再発)の患者に対しては,下大静脈フィルターを用いた。
追跡完了率 3ヵ月後の生存に関する追跡完了率は100%。
結果

●評価項目
入院時のSBPが100mmHg未満であったのは1,212例(7.6%)であった。
血栓溶解療法を受けたのは432例(2.7%,SBp<100mmHg:134例,≧100mmHg:298例)であった。血圧値にかかわらず,血栓溶解療法実施群は非実施群に比し,若く,合併症が少なく,臨床的重症度が高かった。
3ヵ月後の死亡は血栓溶解療法実施群52例(12%),非実施群1,586例(10.2%)で,同程度であった(p=0.26)。
血栓溶解療法の実施は無作為割付ではないため,プロペンシティスコアにより補正して検討を行った。
低血圧のサブグループ(94ペア)において,血栓溶解療法実施群の死亡リスクは非実施群に比べ,有意ではないが臨床的に意義のある低下がみられた(OR 0.72,95%CI 0.36-1.46,p=0.37)。
正常血圧のサブグループ(217ペア)では,血栓溶解療法により死亡リスクの上昇がみられた(OR 2.32,95%CI 1.15-4.68,p=0.018)。しかし,心エコー検査,トロポニン検査の欠測値を補完すると,統計学的有意差は消失した。

●有害事象

文献: Riera-Mestre A, et al., FOR THE RIETE INVESTIGATORS. Thrombolytic therapy and outcome of patients with an acute symptomatic pulmonary embolism. J Thromb Haemost 2012; 10: 751-9. pubmed
関連トライアル Hsieh CY et al, Ibrahim SA et al, Kellert L et al, Madrid Stroke Network, Power A et al, RIETE clinical score, Sarikaya H et al, Singer OC et al, SITS-ISTR blood pressure, SITS-ISTR young patients
関連記事