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J-ROCKET AF Japanese Rivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation
結論 脳卒中リスクのある非弁膜症性心房細動患者における脳卒中,全身性塞栓症予防について,日本人にあわせた用量でのrivaroxaban投与は,用量調節warfarin投与に対し,安全性に関して非劣性が認められた。有効性については強い抑制傾向が示された。
コメント J-ROCKET AFは,リバーロキサバンの日本単独で行われた試験である。海外の国際共同試験(ROCKET AF)では20mgを通常量としたのに対し,Cmax,AUCなどのデータから日本人では15mgとした方がよいと考えられたため,独自の試験を行うこととなった。症例数が1,280例であり,脳卒中,全身性塞栓症の比較検定には十分ではないため,一次エンドポイントとして安全性の非劣性を確かめる試験として計画された。
この領域における二重盲検試験はハードルが高く,日本でハイリスク心房細動症例を1,000例規模で組み入れることができるのか,開始前は不安であったが,試験を完遂できたことは評価されるべきであろう。その後も第Xa因子阻害薬の試験はすべて二重盲検で行われているが,その先駆的役割を果たした。
通常量が15mgに減量されたことについては,結果的に妥当であったと判断できる。まず,重大な出血,重大ではないが臨床的に問題となる出血がワルファリンと同等であり,これはROCKET AFと変わらない。ワルファリン群のPT-INRコントロールは,日本のガイドラインにもとづき,TTRは65%であり,質の保たれた対照群との比較であったと考えられる。
重大な出血の内訳をみると,頭蓋内出血がワルファリンに比し50%と明らかに低く,他の新規経口抗凝固薬と共通した利点として考えられる。重大な出血に至る消化管出血については,ROCKET AFと異なり,上部,下部とも少ないことが示された。
一方,有効性については,症例数が十分ではなく参考にとどめたいが,ワルファリンよりも脳梗塞を抑制する可能性がある。出血性脳卒中については差がなく,頭蓋内出血の減少は慢性硬膜下血腫などの減少によるものと考えられる。
ROCKET AFも含めて,リバーロキサバンの試験はCHADS2スコア平均3.2の症例が対象となっていることには留意すべきであろう。このうち,CHADS2スコア2点の症例は約1割であり,多くは3点以上の症例である。今後,CHADS2スコア1点の症例については,市販後のエビデンス創出に期待したい。(是恒之宏

目的 Rivaroxabanの非弁膜症性心房細動患者における脳卒中,全身性塞栓症予防については,国際共同試験ROCKET AF が行われ,rivaroxabanのwarfarin(目標PT- INR 2.0~3.0となるよう用量調節投与)に対する非劣性が示された。日本では国際共同試験とは別に,日本人にあわせた用量(国際共同試験での20mg 1日1回に対し,日本人患者では15mg 1日1回に減量)を用い,安全性に関して,rivaroxabanのwarfarinに対する非劣性検証を行った。安全性の一次エンドポイント:重大な出血および重大ではないが臨床的に問題となる出血(ROCKET AF出血基準)。有効性の一次エンドポイント:脳卒中(虚血性/出血性)または全身性塞栓症。
デザイン 無作為化,二重盲検,ダブルダミー,非劣性試験(非劣性マージン2.0)。NCT00494871。
セッティング 多施設(167施設),日本。
期間 登録開始は2007年6月8日,追跡終了は2010年1月19日。
対象患者 1,280例。20歳以上,30日以内の心電図で確認できる非弁膜症性心房細動患者で,脳梗塞/一過性脳虚血発作(TIA)/全身性塞栓症の既往を有するか,以下の血栓塞栓症リスク因子を2つ以上有する症例(うっ血性心不全かつ/またはLVEF≦35%,高血圧,75歳以上,糖尿病)。脳梗塞/TIA/全身性塞栓症の既往がなく,その他のリスク因子が2つしかない症例は全体の10%までに制限した。
【除外基準】血行動態に重大な影響を及ぼす程度の僧帽弁狭窄,人工心臓弁,除細動の予定,可逆性の疾患による一時的な心房細動,心房粘液腫/左室血栓/活動性心内膜炎,活動性内出血,出血高リスク,重篤な脳卒中発症後3ヵ月以内,すべての脳卒中発症後14日以内(重症度は問わない),TIA発症後3日以内,心房細動以外の抗凝固療法を要する疾患,抗血小板薬投与後5日以内または試験期間中に新たな投与を必要とする,線溶療法後10日以内または試験期間中に投与を必要とする,NSAIDsの長期使用が予測される,強力なcytochrome P450 3A4阻害剤/誘導剤投与後4日以内または試験期間中に投与予定,貧血,クレアチニンクリアランス(ClCr)<30mL/分,肝疾患など。
【患者背景】年齢平均値(範囲)はrivaroxaban群71.0(34~89)歳,warfarin群71.2(43~90)歳。各群の男性82.9%,78.2%。ClCr 30~49mL/分22.1%,22.4%,50~<80mL/分51.3%,51.3%,≧80mL/分26.6%,26.3%。warfarin前治療有90.3%,89.7%,aspirin前治療38.0%,34.7%。CHADS2スコア平均3.27,3.22,0~1:0%,0%,2:15.2%,18.0%,≧3:84.8%,82.0%。うっ血性心不全41.3%,40.2%,高血圧79.5%,79.5%,≧75歳39.4%,38.5%,糖尿病39.0%,37.1%,脳卒中/TIA/全身性塞栓症既往63.8%,63.4%,心筋梗塞既往7.0%,8.3%。
治療法 以下の2群に無作為割付。
Rivaroxaban群:639例。15mg 1日1回投与(無作為割付時のClCrが30~49mL/分の患者では10mg 1日1回投与)。
Warfarin群:639例。70歳未満ではPT-INRが2.0~3.0,70歳以上では1.6~2.6になるよう用量調整投与。
追跡完了率
結果

●評価項目
[安全性]
安全性解析対象集団における治験薬投与下(治験薬投与終了の2日後まで)の一次エンドポイントはrivaroxaban群138例(18.04%/年),warfarin群124例(16.42%/年)で,rivaroxabanのwarfarinに対する非劣性が認められた(HR 1.11,95%CI 0.87-1.42,非劣性p<0.001)。
重大な出血:rivaroxaban群3.00%/年,warfarin群3.59%/年(HR 0.85;0.50-1.43)。
重大ではないが臨床的に問題となる出血:15.42%/年 vs. 12.99%/年(HR 1.20;0.92-1.56)。
頭蓋内出血の発生割合:0.8% vs. 1.6%。
重大な出血(上部消化管):6例(0.9%)vs. 12例(1.9%)。
重大な出血(下部消化管):1例 vs. 3例。

[有効性(本試験は有効性を検証するための十分な例数は有していない)]
Per-protocol解析対象集団における治験薬投与下の一次エンドポイントはrivaroxaban群11例(1.26%/年)で,warfarin群22例(2.61%/年)に対し抑制傾向がみられた(HR 0.49;0.24-1.00,p=0.050)。
全脳卒中:rivaroxaban群10例,warfarin群21例(HR 0.46;0.22-0.98)。
出血性脳卒中:3例 vs. 4例(HR 0.73;0.16-3.25)。
脳梗塞:7例 vs. 17例(HR 0.40;0.17-0.96)。

安全性解析対象集団における治験薬投与下の一次エンドポイントはrivaroxaban群11例(1.26%/年),warfarin群22例(2.60%/年,HR 0.48;0.23-1.00)。
Intention-to-treat解析対象集団における治験薬投与終了の30日後までの一次エンドポイントはrivaroxaban群22例(2.38%/年),warfarin群26例(2.91%/年,HR 0.82;0.46-1.45)。

[腎機能別サブグループ解析]
Rivaroxabanの安全性は腎機能の程度にかかわらず一貫していた(ClCr<50mL/分:HR 1.22;0.78-1.91,≧50mL/分:HR 1.07;0.80-1.43,交互作用p=0.628)。

[TTR]
Warfarin群のTTRは65.0%(≧70歳:74.0%,<70歳:51.8%)であった。

●有害事象
治験薬の中止に至った有害事象はrivaroxaban群13.1%,warfarin群15.0%で同程度であった。

文献: Hori M, et al.; on behalf of the J-ROCKET AF study investigators. Rivaroxaban vs. Warfarin in Japanese Patients With Atrial Fibrillation. Circ J 2012; 76: 2104-11. pubmed
関連トライアル AMADEUS, AMADEUS post hoc analysis, ARISTOTLE, ARISTOTLE concomitant aspirin use, ARISTOTLE previous stroke/TIA, ARISTOTLE risk score, ARISTOTLE type and duration of AF, ARISTOTLE-J, ATLAS ACS 2-TIMI 51, dabigatran,rivaroxaban,apixabanの間接比較, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, ENGAGE AF-TIMI 48, J-ROCKET AF renal impairment, JNAF-ESP, Lakkireddy D et al, Pengo V et al, PROTECT AF, RE-LY, RE-LY Asian subgroup, RE-LY Japanese population, RE-LY quality of INR control, ROCKET AF, ROCKET AF cardioversion/ablation, ROCKET AF East Asian patients, ROCKET AF elderly patients, ROCKET AF major bleeding, ROCKET AF post hoc analysis, ROCKET AF previous stroke/TIA, ROCKET AF renal dysfunction, ROCKET AF temporary interruption, ROCKET-AF persistent vs. paroxysmal, SPAF III 1996, SPORTIF elderly patients, SPORTIF II , SPORTIF III, SPORTIF pooled analysis, SPORTIF V, warfarinによるNVAF患者の脳卒中予防, 新規経口抗凝固薬4剤のwarfarinに対する有効性・安全性, 非弁膜症性心房細動患者における抗血栓療法
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