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メタ解析
急性腸骨大腿部DVT治療における血栓摘除術,カテーテル血栓溶解療法の効果
Treatment of acute iliofemoral deep vein thrombosis
結論 急性腸骨大腿部深部静脈血栓症の治療において,抗凝固療法に比べ,外科的血栓摘除術は血栓後症候群および静脈逆流の発生を抑制し,カテーテル血栓溶解療法は血栓後症候群および静脈閉塞の発生を抑制したが,本メタ解析のエビデンスの質は低かった。これらの治療法の有効性を評価するには,さらに頑強な研究の実施が求められる。
コメント 腸骨大腿静脈の深部静脈血栓症の治療において,外科的血栓摘除術は再閉塞率が高いことから,用いられる頻度は減少傾向であるものの,カテーテル血栓溶解療法は注目されている。本メタ解析では抗凝固療法単独と比較し,血栓後症候群と静脈閉塞の減少効果が示されたが,エビデンスの質は低い。今後,その効果,安全性についての質の高いエビデンスが待たれるところである。(山田典一

目的 抗凝固療法は急性腸骨大腿部深部静脈血栓症の標準的治療法であるが,患者の半数以上が血栓後症候群を発症する。その一方で,外科的血栓摘除術およびカテーテル血栓溶解療法が,腸骨大腿部深部静脈血栓症を含む急性動脈/静脈塞栓症の治療に用いられており,これらの治療領域を含めたエビデンスにもとづくガイドラインの作成が検討されている。本システマティックレビュー/メタ解析では,急性腸骨大腿部深部静脈血栓症の治療について,外科的血栓摘除術,カテーテル血栓溶解療法,抗凝固療法の有効性を比較検討する。
方法 MEDLINE,EMBASE,Cochrane CENTRAL,Web of Science,Scopusでの電子データベース検索(最終検索は2008年2月)。さらに専門家による推薦,検索された試験の参考文献,検索された研究で引用されたInstitute for Scientific Information Science Citation Index for publicationも調査。
言語,サンプルサイズ,使用した血栓溶解薬,外科手技,追跡期間に制限は設けなかった。
対象:急性腸骨大腿部深部静脈血栓症患者において,抗凝固療法,外科的血栓摘除術,カテーテル血栓溶解療法のうち2種類以上の治療を実施し,以下の転帰を評価した無作為化臨床試験およびコホート研究:死亡,肺塞栓,局所合併症,出血合併症,血栓後症候群,疼痛,QOL。
除外:単群のコホート研究(比較群がなく,全患者に同一の治療を実施した研究),全身投与による血栓溶解療法に関する試験。
対象 15試験,1,186例。
試験:血栓摘除術 vs. 抗凝固療法 10試験,カテーテル血栓溶解療法 vs. 抗凝固療法 5試験。
主な結果 ・血栓摘除術(vs. 抗凝固療法)
外科的血栓摘除術は抗凝固療法に比し,血栓後症候群,静脈逆流を抑制したが,その他の転帰については有意な群間差を認めなかった。
血栓後症候群(8試験):RR 0.67,95%CI 0.52-0.87,I2=0%。
静脈逆流(5試験):RR 0.68,95%CI 0.46-0.99,I2=43%。
静脈閉塞(4試験):RR 0.84,95%CI 0.60-1.19,I2=66%。
死亡(7試験):RR 0.80;95%CI 0.10-6.22,I2=84%。
肺塞栓(4試験):RR 0.56;95%CI 0.08-4.18,I2=0%。
深部静脈血栓症再発(1試験):RR 0.69;95%CI 0.24-2.01。
QOL:データ不十分のため,メタ解析不能であった。

・カテーテル血栓溶解療法(vs. 抗凝固療法)
カテーテル血栓溶解療法は抗凝固療法に比し,血栓後症候群,静脈閉塞を抑制し,静脈逆流は抑制傾向がみられた。
その他の転帰(死亡,肺塞栓,深部静脈血栓症再発など)については,確定的な報告が得られず,データ不足であった。
血栓後症候群(3試験):RR 0.19,95%CI 0.07-0.48,I2=64%。
静脈閉塞(4試験):RR 0.38,95%CI 0.18-0.37,I2=46%。
静脈逆流(3試験):RR 0.39,95%CI 0.16-1.00,I2=92%。

・エビデンスの質的評価
プライマリ試験の方法論的限界,ベースライン時のコホート間の比較不足,エビデンスが間接的,および重要な転帰に関する治療効果サイズが不明瞭であることなどより,血栓摘除術またはカテーテル血栓溶解療法に関するエビデンスの質は低下した。また,試験数が少ない,結果に一貫性がないなど,出版/報告バイアスの検出も困難であった。
文献: Casey ET, et al. Treatment of acute iliofemoral deep vein thrombosis. J Vasc Surg 2012; 55: 1463-73. pubmed
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