抗血栓トライアルデータベース
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SAVE-ONCO
結論 化学療法中の癌患者において,semuloparinは大出血の増加をもたらすことなく,血栓塞栓イベントの発生を抑制した。
コメント Semuloparinは分子量2,000~3,000の超低分子量へパリンで,半減期は16~20時間である。本研究により,化学療法施行中の固形癌患者に対して,プラセボと比較してsemuloparin 20mg 1日1回皮下注が出血のリスクを増加させることなく静脈血栓塞栓症の発生を抑制させることが示された。対象患者のほとんどがECOG performance status 0~1の歩行可能な患者である。これまで,歩行可能な化学療法中の癌患者に対する静脈血栓塞栓症予防の必要性についての報告は限られており,予防の有用性を示した点で評価される。(山田典一

目的 化学療法を受けている癌患者はVTEリスクが上昇した状態にあるが,抗血栓療法による予防のベネフィットについてのデータはほとんどない。本試験では,固形癌のため化学療法を受けている患者において,超低分子量heparinであるsemuloparin によるVTE予防の有効性,安全性を検討する。有効性の一次エンドポイント:割付から試験薬投与終了3日後までに発生した上肢/下肢の症候性深部静脈血栓症,非致死的肺塞栓症,VTE関連死の複合。安全性の一次エンドポイント:試験薬投与開始から投与終了3日後までに発生した臨床的に意義のある出血。
デザイン 無作為割付,二重盲検。有効性:intention-to-treat population,安全性:safety populationにおいて解析。NCT00694382。
セッティング 多施設(395施設),47カ国。
期間
対象患者 3,212例。18歳以上,転移性または局所進行性の固形癌(肺,膵臓,胃,結腸/直腸,膀胱,卵巣)に対し化学療法を予定されている患者。
【除外基準】余命<3ヵ月,Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)ステータス≧3,クレアチニンクリアランス<30mL/分,大手術施行後4週以内,抗凝固薬に対する禁忌または血栓予防の必要性。
【患者背景】年齢はsemuloparin群59.8±10.6歳,プラセボ群59.4±10.6歳。各群の男性60.6%,59.6%。BMI 24.9±5.1kg/m2,24.7±4.9kg/m2。クレアチニンクリアランス>80mL/分53.3%,52.1%,50~80 mL/分38.4%,40.4%,30~50mL/分8.3%,7.4%。VTEリスク因子あり42.6%,41.9%(ベースライン時の中心静脈ライン19.7%,18.8%,肥満12.9%,12.8%,75歳超6.9%,6.6%,慢性呼吸不全4.9%,5.7%,慢性心不全3.5%,3.6%,静脈不全/静脈瘤5.7%,4.7%,VTE既往2.0%,2.3%)。
治療法 semuloparin群(1,608例,20mg 1日1回皮下注),プラセボ群(1,604例)に無作為割付。
試験薬は化学療法開始日に投与を開始し,化学療法実施期間(3ヵ月以上を予定)投与。化学療法が3ヵ月以内に中止された場合は,新しいレジメンを開始する場合を除き試験薬は中止とした。3ヵ月経過後は,化学療法中止またはレジメン変更の際に試験薬を中止した。
試験期間中の他の抗凝固薬,線維素溶解薬の使用は禁止とした。必要と判断された場合,抗血小板薬,非ステロイド性抗炎症薬の使用は許可した。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
治療期間中央値は3.5ヵ月。
VTE発症はsemuloparin群20例(1.2%)で,プラセボ群55例(3.4%)に比し抑制された(HR 0.36,95%CI 0.21-0.60,p<0.001)。
症候性DVT:0.7% vs. 2.1%,HR 0.32,95%CI 0.15-0.62。
肺塞栓症:0.6% vs. 1.5%,HR 0.41,95%CI 0.19-0.85。
VTE関連死:0.4% vs. 0.6%,HR 0.77,95%CI 0.27-2.13。
semuloparinの有効性は,癌の原発部位,進行度別,VTEリスク別のサブグループ解析でも一貫していた。
semuloparinは全死亡には影響を及ぼさなかった(semuloparin群43.4% vs. プラセボ群44.5%,HR 0.96,95%CI 0.86-1.06,p=0.40)。

●有害事象
大出血および臨床的に関連する出血は2.8% vs. 2.0%で同等であった(HR 1.40,95%CI 0.89-2.21)。
大出血も1.2% vs. 1.1%で同等であった(HR 1.05,95%CI 0.55-1.99)。
その他の有害事象についても両群間に差はなかった。

文献: Agnelli G, et al., SAVE-ONCO Investigators. Semuloparin for thromboprophylaxis in patients receiving chemotherapy for cancer. N Engl J Med 2012; 366: 601-9. pubmed
関連トライアル ADOPT, ADVANCE, ADVANCE-2, AMPLIFY-EXT, ASPIRE, Botticelli, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, Hokusai-VTE, MAGELLAN, Main-LITE, Main-LITE Cancer, PREVAIL, PREVENT 2004, PROTECT, RECORD1, RECORD2, RECORD3, SAVE-KNEE, SAVE-HIP1, SAVE-HIP2, THRIVE, van Gogh Studies prophylaxis, WARFASA, 固形癌患者に対する初発血栓塞栓症予防
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