抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
EINSTEIN-PE
結論 肺塞栓症(PE)の初期・長期治療について,rivaroxaban固定用量単独投与の標準治療に対する非劣性が認められ,ベネフィット/リスクを改善する可能性が示された。
コメント EINSTEIN-DVT研究ではすでにrivaroxabanの従来治療に対する非劣性が示されているが,このEINSTEIN-PE研究により,急性肺血栓塞栓症に対してもrivaroxabanの単剤治療が従来治療(ワルファリンと低分子量へパリンの併用に引き続いてのワルファリン治療)と同等の効果と安全性を有していることが立証された。血栓溶解療法を要するような重症例を除き,急性肺血栓塞栓症に対してもモニタリング不要な経口薬単剤にて簡便に治療が開始できる日も近いのかもしれない。(山田典一

目的 EINSTEINは静脈血栓塞栓症(VTE)治療,再発予防についてのrivaroxabanの有効性,安全性を検討する3つの臨床試験(EINSTEIN-PE,EINSTEIN-DVT, EINSTEIN-Extension)からなるプログラムである。本試験では急性症候性PE患者におけるrivaroxabanの有効性,安全性を標準治療と比較した。有効性の一次エンドポイント:症候性VTE再発[非致死性/致死性PE,深部静脈血栓症(DVT)の複合]。安全性の一次エンドポイント:臨床的に問題となる出血事象(重大な出血事象または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象の複合)。
デザイン PROBE(prospective,randomized,open,blinded-endpoint),event-driven,非劣性試験(非劣性マージン2.0)。intention-to-treat解析。NCT00439777。
セッティング 多施設(263施設),38カ国。
期間 登録期間は2007年3月~2011年3月。平均試験(投与)期間はrivaroxaban群263日(216日),標準治療群268日(214日)。
対象患者 4,832例。確定診断された成人の急性症候性PE患者。症候性DVT併発の有無は問わなかった。
【除外基準】治療用量の低分子量heparin,fondaparinux,未分画heparinを48時間以上投与されていたか,ランダム化前にビタミンK拮抗薬の投与を1回を越えて受けたことがある;今回の血栓症のエピソードに対し血栓摘除術,大静脈フィルター,血栓溶解薬投与を受けたことがある;試験薬禁忌;他にビタミンK拮抗薬の適応病態を有する;クレアチニンクリアランス<30mL/分;臨床的に重篤な肝疾患またはALTが正常値上限の3倍以上;細菌性心内膜炎;抗凝固療法に禁忌を示す活動性出血または出血高リスク;血圧>180/110mmHg;出産の可能性(適切な避妊のない),妊娠,授乳;強力なシトクロムP-450 3A4阻害剤・誘発剤の併用など。
【患者背景】年齢はrivaroxaban群57.9±7.3歳,標準治療群57.5±7.2歳。各群の男性54.1%,51.7%。体重>50~100kg 84.1%,83.3%,>100kg 14.3%,14.9%。クレアチニンクリアランス30~<50mL/分 8.6%,7.9%,50~<80 mL/分 26.3%,24.6%,≧80mL/分 64.3%,67.0%。PEの解剖学的範囲:限局的(単葉の血管系の≦25%)12.8%,12.4%,中等度 57.5%,59.0%,広範囲(複葉かつ肺全体の血管系の>25%)24.7%,23.9%。症候性DVT併発25.1%,24.5%。ICU入院12.9%,12.0%。症状からランダム化までの日数(中央値)4.0日,4.0日。PEの原因:特発性64.7%,64.3%,最近の手術/外傷17.2%,16.5%,immobilization 15.9%,15.7%,エストロゲン治療8.6%,9.2%。VTE既往18.8%,20.3%。予定治療期間:3ヵ月5.3%,5.1%,6ヵ月57.3%,57.5%,12ヵ月37.4%,37.5%。
治療法 国,予定治療期間(3,6,12ヵ月)により層別化後,rivaroxaban群(2,419例),標準治療群(2,413例)にランダム化。
rivaroxaban群:15mg 1日2回を3週間投与後,20mg 1日1回投与。
標準治療群:enoxaparin 1.0mg/kg,1日2回皮下注およびビタミンK拮抗薬(warfarinまたはacenocoumarol)をランダム化から48時間以内に投与。enoxaparinは5日以上投与した場合,PT-INR値が2日以上連続して2.0以上となった場合に中止。ビタミンK拮抗薬の用量はPT-INR値が2.0~3.0となるよう調節し,PT-INR値は月1回以上測定した。
非ステロイド性抗炎症薬,抗血小板薬は投与しないよう指導したが,aspirin(<100mg/日),clopidogrel(75mg/日),もしくはその併用は許可した。
追跡完了率 追跡不能はrivaroxaban群0.3%,標準治療群0.4%。
結果

●評価項目
予定治療期間別の投与期間中央値は,3ヵ月:rivaroxaban群93日,標準治療群92日,6ヵ月:182日,181日,12ヵ月:355日,354日。
標準治療群におけるenoxaparin投与期間中央値は8日,投与期間中のPT-INR治療域内時間(TTR)は62.7%であった(1ヵ月目:57.8%,11ヵ月目:72.7%)。
有効性の一次エンドポイント(症候性VTE再発)はrivaroxaban群50例(2.1%),標準治療群44例(1.8%)で,非劣性基準に合致した(HR 1.12,95%CI 0.75-1.68,非劣性 p=0.003,優越性p=0.57)。
安全性の一次エンドポイント(出血)はrivaroxaban群249例(10.3%),標準治療群274例(11.4%)と同等であった(HR 0.90,95%CI 0.76-1.07,p=0.23)。
重大な出血はrivaroxaban群26例(1.1%)で,標準治療群52例(2.2%)に比し有意に少なかった(HR 0.49,95%CI 0.31-0.79,p=0.003)。重大ではないが臨床的に問題となる出血は228例(9.5%)vs. 235例(9.8%)。
死亡はrivaroxaban群58例(2.4%),標準治療群50例(2.1%)(HR 1.13,95%CI 0.77-1.65,p=0.53),最も多かった死因は癌(20例 vs. 23例)であった。致死性PEまたは死因からPEを排除できない死亡は11例 vs. 7例。
net clinical benefit(VTE+重大な出血)はrivaroxaban群83例(3.4%),標準治療群96例(4.0%)と同等であった(HR 0.85,95%CI 0.63-1.14,p=0.28)。

●有害事象
有害事象発現率は両群間で同等であった。治療中の全有害事象:1,941例(80.5%)vs. 1,903例(79.1%),重篤な有害事象は476例(19.7%)vs. 470例(19.5%)。

文献: Büller HR, et al.; EINSTEIN-PE Investigators. Oral rivaroxaban for the treatment of symptomatic pulmonary embolism. N Engl J Med 2012; 366: 1287-97. pubmed
関連トライアル ADOPT, ADVANCE, AMADEUS, AMPLIFY, ARISTOTLE, ATLAS ACS 2-TIMI 51, ATLAS ACS 2-TIMI 51 STEMI patients, ATLAS ACS-TIMI 46 , Botticelli, CASSIOPEA, dabigatran,rivaroxaban,apixabanの間接比較, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, ENGAGE AF-TIMI 48, Hokusai-VTE, J-ROCKET AF renal impairment, MAGELLAN, Matisse Study, ODIXa-HIP, ODIXa-KNEE, ODIXa-OD-HIP, ORTHO-TEP Registry, OTPE, RE-COVER, RECORD1, RECORD2, RECORD3, RECORD4, ROCKET AF, ROCKET AF major bleeding, ROCKET AF post hoc analysis, ROCKET AF previous stroke/TIA, ROCKET AF renal dysfunction, THRIVE, van Gogh Studies, van Gogh Studies prophylaxis, WARFASA
関連記事 [JCC 2014]日本人DVT 患者に対するリバーロキサバン単剤療法の検討-J-EINSTEIN DVT試験(山田典一氏)
[JCC 2014]日本人PE 患者に対するリバーロキサバン単剤療法の検討-J-EINSTEIN PE試験(山田典一氏)