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CLOSURE I Evaluation of the STARFlex Septal Closure System in Patients with a Stroke and/or Transient Ischemic Attack due to Presumed Paradoxical Embolism through a Patent Foramen Ovale
結論 卵円孔開存を有する原因不明の脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)患者に対し経皮的デバイスを用いた閉鎖術を行っても,脳卒中/ TIA再発予防におけるベネフィットは薬物療法単独を上回らなかった。
コメント 本研究で,卵円孔開存に伴う脳梗塞に対する経皮的デバイス(STARFlex)による閉鎖術の脳梗塞予防効果が,抗血栓療法単独群と比較して高いことが証明されなかったことに加えて,周術期の重篤な合併症が3.2%にもみられ,新たな心房細動出現率が有意に高かった(5.7% vs. 0.7%)ことから,経皮的デバイスによる卵円孔閉鎖術は一般に勧められないであろう。抗血栓療法が行えない症例や,抗血栓療法単独で再発を繰り返すなどの特殊な例でのみ考慮できるかもしれない。(矢坂正弘

経食道心エコーを行っていると卵円孔開存の症例にしばしば遭遇する。脳梗塞後の症例を丁寧に観察すると20%程度の症例では腹圧上昇時に右左シャントを認める。卵円孔開存の症例は丁寧に精査すれば相当数存在する。しかし,本研究ではカテーテルデバイスにより卵円孔を閉鎖しても脳梗塞再発予防にはつながらなかった。血栓性のデバイスが体内に入ることには抵抗もある。卵円孔開存を見出した症例であっても,脳梗塞の発症との明確な関連を証明できる症例は少ない。リスク因子に関する理解が進み,内科的基礎治療の進歩した現在ではカテーテル介入などにてメリットを見出すのが困難であることが示された。(後藤信哉

目的 原因不明の脳梗塞患者における卵円孔開存の有病率は一般集団よりも高く,経皮的デバイスを用いた閉鎖術がしばしば推奨されるが,閉鎖により脳卒中再発リスクが低下するかは明確となっていない。本試験では,原因不明の脳梗塞またはTIA患者において,経皮的デバイスを用いた閉鎖術による脳卒中二次予防効果を薬物療法と比較した。一次エンドポイント:2 年間の追跡期間における脳卒中または TIA,最初の 30 日間における全死亡,31日後~2年後までの神経学的原因による死亡。
デザイン ランダム化,オープン。NCT00201461。
セッティング 多施設(87施設),2カ国(米国,カナダ)。
期間 登録期間は2003年6月23日~2008年10月24日。追跡期間は24ヵ月。
対象患者 909例。18~60歳,脳梗塞またはTIA発症後6ヵ月以内で,経食道心エコー検査により卵円孔開存が確認された(バルサルバ法の間にbubble studyにより心房レベルで右-左シャントが認められた)患者。
【除外】臨床的に意味のある頸動脈狭窄,大動脈弓アテローム,左室機能障害,左室瘤,心房細動など,卵円孔開存以外の脳梗塞/TIAの原因が同定された患者。
【患者背景】平均年齢は閉鎖群46.3±9.6歳,薬物療法群45.7±9.1歳。各群の男性52.1%,51.5%。人種:アジア系1.6%,1.7%,黒人4.2%,5.6%,白人89.0%,89.6%。病歴:高血圧33.8%,28.4%,高コレステロール血症47.4%,40.9%,心血管疾患家族歴55.3%,55.6%,弁機能不全11.0%,9.7%,不整脈5.8%,4.1%。試験参加対象イベント:原因不明の脳梗塞72.6%,71.4%,TIA 27.4%,28.6%。経食道心エコー検査:中程度~多量のシャント55.9%,50.0%,≧10mmの心房中隔動脈瘤37.6%,35.7%。
治療法 施設,心房中隔瘤の有無により層別化後,以下の2群にランダム化。
閉鎖群:447例。ランダム化後可能な限りすみやかに(できれば1週間以内)経皮的デバイスによる卵円孔閉鎖術を施行し,術後は全例に標準的抗血小板療法(clopidogrel 75mg/日,6ヵ月間およびaspirin 81または325mg/日,2年間投与)を実施した。薬物療法群:462例。医師の裁量により用量調節warfarin(標的PT-INR 2.0~3.0)またはaspirin 325mg/日,もしくはその両方を投与。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
閉鎖群における閉鎖手技成功は362例(89.4%),2年後も効果的な閉鎖が維持されていたのは320例(86.7%)であった。6ヵ月以内に,経食道心エコー検査により4例(1.1%)に左心房内の血栓が確認され,うち2例は脳卒中が再発した。
2年後のintention-to-treat populationにおける一次エンドポイント累積発症率(Kaplan-Meier estimate)は閉鎖群5.5%,薬物療法群6.8%と同等であった(補正後HR 0.78,95%CI 0.45-1.35,p=0.37)。
個別の発症率は以下の通りであった。
脳卒中:2.9% vs. 3.1%(HR 0.90,95%CI 0.41-1.98,p=0.79)。
TIA:3.1% vs. 4.1%(HR 0.75,95%CI 0.36-1.55,p=0.44)。
30日までの死亡は両群とも0例で,2年の追跡期間中に神経学的原因による死亡もみられなかった。
神経イベント再発患者の大部分(閉鎖群20/23例,薬物療法群22/29例)では,心房細動新規発症,左心房内の血栓など奇異性塞栓症以外の原因が明らかであった。

●有害事象
手技関連主要血管合併症は閉鎖群3.2%,薬物療法群0%に発生した(p<0.001)。
心房細動も閉鎖群5.7%で薬物療法群0.7%に比し多かった(p<0.001)。

文献: Furlan AJ, et al.; CLOSURE I Investigators. Closure or medical therapy for cryptogenic stroke with patent foramen ovale. N Engl J Med 2012; 366: 991-9. pubmed
関連トライアル CHANCE, CLOSURE I, FORI, German Stroke Study Collaboration, PC Trial, PROTECT AF, RESPECT, WARCEF, WARSS, WASID
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