抗血栓トライアルデータベース
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Madrid Stroke Network
結論 PT-INR<2の経口抗凝固薬を投与されていた虚血性脳卒中患者に対する血栓溶解療法は,症候性脳内出血を増加させなかったことから,安全に施行可能と考えられた。低分子量heparin(LMWH)前投与は症候性脳内出血,死亡,転帰不良を増加させたことから,血栓溶解療法施行は慎重に判断する必要がある。
コメント tPA静注前の抗凝固療法が転帰に及ぼす影響を検討。経口抗凝固薬(PT-INR<2.0,平均1.3)については,従来の治療ガイドライン(PT-INR<1.7)の妥当性を再検証したといえよう。
低分子量ヘパリン投与中の入院患者へのtPA静注が頭蓋内出血や死亡率を高めるとする点については,本患者群の入院理由やtPA直前の心血管イベント率が不明で,例数も少なく,更なる検討が必要であろう。(岡田靖

目的 抗凝固療法下に発症した虚血性脳卒中患者に血栓溶解療法を行うと,出血リスクが上昇するおそれがある。そのため臨床試験ではそのような患者は除外され,エビデンスが少ない。本論文では,経口抗凝固薬またはLMWH投与下の虚血性脳卒中患者に対する血栓溶解療法について,その有効性,安全性を評価する。
デザイン 観察研究。
セッティング 多施設(5施設),スペイン。
期間 治療期間は2003年2月~2010年10月。
対象患者 1,482例。2003年2月~2010年10月にtPA静注を受けた虚血性脳卒中患者全例。
【除外基準】―
【患者背景】年齢中央値はLMWH群64歳,経口抗凝固薬群77.5歳(p<0.001),抗凝固療法非実施群71歳。男性38.1%,37.1%(p=0.005),54.2%。血糖値125.7±55.5mg/dL,140±42.1mg/dL(p=0.009),129.7±42.5mg/dL。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア中央値15,15(p=0.013),13。発症から治療までの経過時間126.2±55.5分(p=0.022),159.1±54.4分,148.3±22.5分。高血圧52.4%,81.4%(p=0.001),61%。脂質異常症33.3%,51.4%(p=0.003),34%。脳卒中既往9.5%,24.3%(p<0.001),9.7%。心房細動42.9%(p<0.001),81.4%(p<0.001),14.7%。心原性塞栓症66.7%(p=0.012),88.6%(p<0.001),39.6%。ラクナ梗塞0%,0%,4.5%。(p値はすべて抗凝固療法非実施群に対する値を示す)
治療法 tPA静注は標準的な方法で行い,ECASS-IIIおよびSITS Registryの結果発表後は発症からの経過時間が4.5時間以内の患者に治療を行った。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
全例のうち21例(1.4%)がLMWHを,70例(4.7%)が経口抗凝固薬(acenocoumarol,平均PT-INR 1.3,範囲0.9~2.0)を投与されていた。
経口抗凝固薬群は年齢が高く,ベースライン時の血糖値が高く,発症から治療までの時間が長く,高血圧,脂質異常症,脳卒中既往,心房細動の割合が高かった(患者背景の項参照)。
3ヵ月後の転帰良好(mRS 0~2)はLMWH群33%(p=0.02),経口抗凝固薬群44%(p=0.02)で,抗凝固療法非実施群58%に対し低かった。
死亡はLMWH群30%(p=0.01),経口抗凝固薬群25%(p=0.001)で,抗凝固療法非実施群11.4%に対し高かった。
症候性脳内出血はLMWH群14.3%(p<0.001)で,抗凝固療法非実施群2.3%に対し高かったが,経口抗凝固薬群は2.9%で同等であった(p=0.73)。(ここまでのp値はすべて抗凝固療法非実施群に対する値を示す)
経口抗凝固薬群において,転帰はPT-INR値とは関連していなかった。
交絡変数を補正後,経口抗凝固薬の前使用は死亡を上昇させたが(OR 2.15,95%CI 1.1-4.2,p=0.026),症候性脳内出血(OR 1.16,95%CI 0.26-5.21,p=0.85),3ヵ月後の転帰良好(OR 0.78,95%CI 0.42-1.46,p=0.437)とは関連していなかった。
LMWHの前使用は死亡(OR 5.29,95%CI 1.81-15.48,p=0.002),症候性脳内出血(OR 8.42,95%CI 2.2-32.23,p=0.002),3ヵ月後の転帰良好(OR 0.32,95%CI 0.11-0.97,p=0.043)と関連していた。

●有害事象

文献: Matute MC, et al. Safety and Outcomes following Thrombolytic Treatment in Stroke Patients Who Had Received Prior Treatment with Anticoagulants. Cerebrovasc Dis 2012; 33: 231-9. pubmed
関連トライアル Chernyshev OY et al, Cronin CA et al, De Marchis GM et al, Guillan M et al, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, Helsinki Stroke Thrombolysis Registry, ICARO, ICARO-2, IMS III, Kellert L et al, Manawadu D et al, Murthy SB et al, Power A et al, RECANALISE, RESTORE, RIETE registry thrombolytic therapy, Ruecker M et al, SAINT postthrombolysis ICH, SAMURAI, SAMURAI CT versus DWI, SAMURAI rt-PA Registry early neurological deterioration, SAMURAI rtPA Registry SITS-MOST criteria, Sarikaya H et al, Sarikaya H et al (obese), Seet RC et al, Singer OC et al, SITS-ISTR, SITS-ISTR 2010, SITS-ISTR antiplatelet therapy, SITS-ISTR blood pressure, SITS-ISTR elderly, SITS-ISTR sex differences, SITS-ISTR within-day and weekly variations, SITS-ISTR young patients, SITS-ISTR/VISTA, SITS-MOST multivariable analysis, STRokE DOC, TASCC, Toni D et al, Tsivgoulis G et al, Tutuncu S et al, VISTA baseline severity, VISTA contraindications, 虚血性脳卒中患者に対するIV/IA併用療法, 血栓溶解療法後の頭蓋内出血, 内頸動脈閉塞に続発する脳梗塞に対するtPA静注および動脈内血管内療法
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