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CaVenT Catheter-directed Venous Thrombolysis
結論 腸骨大腿深部静脈血栓症(DVT)患者において,標準治療(抗凝固療法+弾性ストッキング)へのカテーテル血栓溶解療法(CDT)の追加は,標準治療単独に比し,血栓後遺症(PTS)を減少させることにより長期転帰を改善した。腸骨大腿DVT患者のうち出血リスクが低い症例には,CDTの追加を考慮すべきである。
コメント 腸骨大腿静脈の急性深部静脈血栓症に対するカテーテル血栓溶解療法が,抗凝固療法と弾性ストッキング着用による標準治療と比較して,24カ月後の血栓後遺症の発生抑制効果を有することを示した最初のランダム化比較試験であり,意義深い論文である。残念ながら2012年に公表された静脈血栓塞栓症の治療に関する第9版ACCPガイドラインの改訂には間に合わず,その内容に今回の結果は反映されていないものの,今後は発症21日以内で出血のリスクが低い腸骨大腿静脈の急性深部静脈血栓症患者には血栓後遺症の発症抑制目的でカテーテル血栓溶解療法が推奨されることになることが予想される。(山田典一

目的 急性DVTに対する従来の抗凝固療法は血栓進展,再発を予防するが,血栓の溶解はしないため,多くの患者がPTSを発症する。本試験では,急性腸骨大腿静脈血栓症患者において,標準治療+alteplaseを用いたCDT(catheter-directed thrombolysis,カテーテルを静脈に挿入し,血栓溶解剤を血栓に直接投与する新しい治療法)が標準治療単独に比しPTSを減少させるか検討する。一次エンドポイント:24ヵ月後のPTS発症率(Villalta スコアによる),6ヵ月後の腸骨大腿静脈開存性。
デザイン 無作為割付,オープン。intention-to-treat解析。NCT00251771。
セッティング 多施設(20施設),ノルウェー。
期間 登録期間は2006年1月~2009年12月。
対象患者 209例。18~75歳,21日以内に症状が発現し,大腿部の上半分,総腸骨静脈,腸骨静脈合流部のDVTが画像診断により客観的に確認された患者。
【除外基準】登録前に7日以上の抗凝固薬投与,血栓溶解療法禁忌(出血性素因を含む),有痛性青股腫など血栓溶解療法の適応がある,重度の貧血,血小板減少症,重度の腎不全,重度の高血圧,妊娠または産後7日以内の血栓症,術後/外傷後14日以内,くも膜下/脳内出血の既往,同側の近位部DVT既往,化学療法を必要とする悪性腫瘍,登録の7日前までの血栓溶解療法施行など。
【患者背景】平均年齢はCDT群53.3±15.7歳,標準治療群50.0±15.8歳。各群の女性36%,38%。症状発現期間6.4±4.4日,6.8±4.8日。限局性骨盤DVT 3%,2%。腸骨大腿DVT 42%,34%。大腿DVT 50%,59%。左側DVT 60%,62%。VTEリスク因子なし34%,26%。一過性VTEリスク因子:3ヵ月以内の手術17%,13%,3ヵ月以内の外傷11%,15%,短期間の可動性制限22%,19%。永続性VTEリスク因子:VTE既往10%,9%,がん3%,1%,肥満10%,11%。
治療法 以下の2群に無作為割付。
標準治療群:99例。最初は低分子量heparin(LMWH,dalteparin/enoxaparin)+warfarinを併用し,その後warfarin(標的INR 2.0~3.0)単独投与。
CDT群:90例。最初はLMWHのみを投与し,CDTの8時間以上前に中止した。CDTは,おもに膝窩静脈から挿入したカテーテルを静脈造影で確認した血栓部位まで進め,alteplase 0.01mg/kg/時(最長96時間,最大用量は20 mg/24時間)を投与。同時に未分画heparinをAPTTが正常値上限の1.2~1.7倍を保つよう注入した。追加的抗血小板薬投与は行わなかった。CDT終了の1時間後からLMWH+warfarin(標的INR 2.0~3.0)併用投与を行った。
全例に膝の高さの弾性ストッキング(圧迫力クラスII)の24ヵ月の着用を推奨した。
追跡完了率 24ヵ月の追跡終了は189例(90%,CDT群90例,標準治療群99例)。
結果

●評価項目
CDT群のalteplase投与期間は2.4±1.1日であった。CDTによる血栓溶解率は,完全溶解:43例,部分的溶解(50~99%):37例,不成功(<50%):10例。
24ヵ月後のPTSはCDT群37 例(41.1%,95%CI 31.5-51.4)で,標準治療群55 例(55.6%,95%CI 45.7-65.0)に比し少なかった(p=0.047)。PTS発症率の差(絶対リスク減少)は14.4%(95%CI 0.2-27.9),治療必要数(NNT)は7(95%CI 4-502)であった。CDT群のPTS発症率は,血栓溶解の程度による差異はみられなかった。
6ヵ月後の腸骨大腿静脈開存例はCDT群58例(65.9%,95%CI 55.5-75.0)で,標準治療群45例(47.4%,37.6-57.3)に比し多かった(p=0.012)。

●有害事象
CDTに関連した出血合併症は20例で,うち大出血3例,臨床的に関連のある出血5例であった。標準治療群では出血性合併症はみられなかった。

文献: Enden T, et al.; CaVenT Study Group. Long-term outcome after additional catheter-directed thrombolysis versus standard treatment for acute iliofemoral deep vein thrombosis (the CaVenT study): a randomised controlled trial. Lancet 2012; 379: 31-8. pubmed
関連トライアル González-Fajardo JA et al, REVERSE PTS substudy, 急性腸骨大腿部DVT治療における血栓摘除術,カテーテル血栓溶解療法の効果
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