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ADOPT Apixaban Dosing to Optimize Protection from Thrombosis
結論 内科疾患による入院患者において,apixabanによる静脈血栓塞栓症(VTE)予防療法の延長はenoxaparin短期投与と比較して優越性は認められず,大出血が増加した。
コメント 内科領域の入院患者に対する静脈血栓塞栓症(VTE)の一次予防の至適期間はいまだ確立されていない。本研究ではエノキサパリンによる短期予防群とapixabanによる30日間まで延長しての長期予防群を比較して,有用性と安全性が検証された。残念ながらVTEの発生頻度は両群間で差がなく,むしろ大出血が長期予防群で有意に多く発生し,長期予防の正当性は立証されなかった。今後は内科領域の入院患者のなかでも長期一次予防を必要とするよりリスクの高い症例の抽出方法の検討が必要と考えられる。(山田典一

目的 内科的疾患による入院患者における退院日以降のVTE予防療法延長の有効性,安全性は明らかになっていない。本試験では,apixaban経口投与の延長はenoxaparinの短期間皮下注に比し有効であるという仮説を検討する。有効性の一次エンドポイント:30日間の試験薬投与期間におけるVTE関連死(死因から肺塞栓症を排除できない突然死など),致死的/非致死的肺塞栓症,症候性深部静脈血栓症(DVT),下肢近位部の無症候性DVT(両側性圧迫超音波検査による)の複合。安全性の一次エンドポイント:大出血,大出血ではないが臨床的に意味のある出血,担当医より報告されたすべての出血,心筋梗塞,脳卒中,血小板減少症,全死亡。
デザイン ランダム化,二重盲検,ダブルダミー。NCT00457002。
セッティング 多施設(302施設),35カ国。
期間 登録期間は2007年6月~2011年2月。試験薬投与期間はapixaban:24.9±10.0日,enoxaparin:7.3±4.0日。
対象患者 6528例。40歳以上で,うっ血性心不全,急性呼吸不全,感染症(敗血症性ショックを除く),急性リウマチ性疾患,炎症性腸疾患のため3日以上の入院が予定され,行動範囲の中等度~重度の制限*を受けた患者。うっ血性心不全および急性呼吸不全患者以外は,以下の追加的リスクを1つ以上有する者とした;年齢75歳以上,以前VTEの確定診断を受けたか,もしくはVTEのため6週以上抗凝固療法を受けた患者,がん,BMI≧30,卵胞ホルモン療法歴,慢性心不全,呼吸不全。
*:中等度;歩行は病室またはバスルーム内のみ許可,重度;行動範囲をベッド上またはベッドサイドの椅子に制限。
【除外基準】VTEの確定診断,抗凝固薬(経口,非経口を問わず)の服用を要する疾患,活動性肝疾患,貧血または血小板減少症,重度の腎疾患(クレアチニンクリアランス<30mL/分),enoxaparinに対するアレルギー,ヘパリン起因性血小板減少症既往,2剤以上の抗血小板薬またはaspirin>165mg/日を服用中,30日以内の外科的処置歴,14日以内にVTE予防のための抗凝固療法を受けている,活動性出血または出血高リスク,試験期間中に侵襲的手技を予定,検査値の異常(ヘモグロビン<9g/dL,血小板数<10万/mm 3,ALT/ASTが正常値上限の2倍以上の上昇,直接または総ビリルビンが正常値上限の1.5倍以上の上昇),妊娠またはその可能性,授乳中など。
【患者背景】年齢はapixaban群(3255例)66.8±12.0歳,enoxaparin群(3273例)66.7±12.0歳。各群の男性50.0%,48.2%。入院理由:うっ血性心不全39.0%,38.1%,急性呼吸不全37.1%,37.1%,感染症(敗血症性ショックを除く)21.5%,22.8%,急性リウマチ性疾患1.2%,1.1%,炎症性腸疾患0.8%,0.7%。追加的リスク因子:VTE既往4.3%,3.8%,がん既往9.6%,9.8%,慢性心不全47.0%,47.0%,慢性呼吸不全51.7%,52.0%,BMI≧30 44.5%,44.3%。
治療法 入院から72時間以内にapixaban群,enoxaparin群にランダム化。
apixaban群:2.5mg 1日2回,30日間投与。
enoxaparin群:40mg 1日1回,入院期間中(最低6日間)投与。
165mgを超えるaspirinの併用は禁止とした。
圧迫超音波検査を退院時(ランダム化日をday 1として,day 5~14の間)およびday 30に施行。
追跡完了率 有効性の一次エンドポイント評価可能は4495/6528例(除外理由はおもに超音波検査の非施行,評価不可能など)。
結果

●評価項目
day 30の一次エンドポイント(VTE関連死,致死的/非致死的肺塞栓症,症候性DVT,下肢近位部の無症候性DVTの複合)の発生率はapixaban群60/2211例(2.71%),enoxaparin群70例/2284(3.06%)と同等であった(RR 0.87,95%CI 0.62-1.23,p=0.44)。
二次エンドポイント(試験薬の非経口投与期間における全VTE,VTE関連死の複合)はapixaban群43/2485例(1.73%),enoxaparin群40例/2488(1.61%)と同等であった(RR 1.06,95%CI0.69-1.63)。

●有害事象
day 30までの大出血はapixaban群15/3184例(0.47%)と,enoxaparin群6/3217例(0.19%)に比し多かった(RR 2.58,95%CI 1.02-7.24,p=0.04)。
大出血および大出血ではないが臨床的に意味のある出血は2.67% vs. 2.08%(p=0.12),すべての出血イベントは7.73% vs. 6.81%(p=0.18)といずれも同等であった。

文献: Goldhaber SZ, et al.; ADOPT Trial Investigators. Apixaban versus enoxaparin for thromboprophylaxis in medically ill patients. N Engl J Med 2011; 365: 2167-77. pubmed
関連トライアル ADVANCE, ADVANCE-2, ADVANCE-3 , AMPLIFY, AMPLIFY-EXT, APPRAISE, APPRAISE-2, APROPOS, ARISTOTLE, ARISTOTLE previous stroke/TIA, ARISTOTLE renal function, ARISTOTLE risk score, ARTEMIS, ATLAS ACS 2-TIMI 51, AVERROES, AVERROES previous stroke/TIA, Botticelli, CASSIOPEA, dabigatran,rivaroxaban,apixabanによる関節置換術後の血栓予防, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, EINSTEIN-PE, Hokusai-VTE, LIFENOX, MAGELLAN, ODIXa-KNEE, ORTHO-TEP Registry, OTPE, PREVAIL, PREVENT 2004, PROTECT, RE-NOVATE, RECORD1, RECORD2, RECORD3, RECORD4, SAVE-ONCO, THRIVE, van Gogh Studies prophylaxis, WARFASA, 内科疾患患者に対するVTE予防薬延長投与
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