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メタ解析
頸動脈解離による虚血性脳卒中に対する血栓溶解療法
Safety and functional outcome of thrombolysis in dissection-related ischemic stroke: a meta-analysis of individual patient data
結論 頸動脈解離による虚血性脳卒中に対する血栓溶解療法の安全性および転帰は,原因を問わない全脳卒中に対するそれと同様のようであった。本知見にもとづくと,頸動脈解離患者に対する血栓溶解療法は控えるべきではない。
コメント 大動脈解離に伴う虚血性脳卒中に対するrtPA血栓溶解療法は死亡率を高め,治療前診断例では避けるよう注意喚起されている。一方,頸部頸動脈解離例での転帰に及ぼす影響についてはこれまでまとまった分析はない。本論文は24時間以内の非ランダマイズ研究を取り扱っているものの,tPA治療指針の根拠の1つとなるであろう。わが国で頻度が高い椎骨動脈解離の割合が低く,更なる検討が望まれる。(岡田靖

目的 頸動脈解離による虚血性脳卒中は全体の約2%,50歳未満では10~25%を占めるとされているが,血栓溶解療法が施行可能かどうかは明確になっていない。本メタ解析では,症例報告のデータを用いて症候性頭蓋内出血発生率,死亡率を算出し, SITS-ISTR から抽出した年齢,脳卒中重症度を合致させた対照群と間接的に比較する。
方法 PubMed,EMBASE(2010年3月まで)を検索。検索用語は[“dissection”]AND[“carotid” or “vertebral” or “cervical” or “extracranial” or “stroke” or “brain ischemia” or “brain infarction”]AND[“thrombolysis” or “recombinant tissue plasminogen activator” or “rtPA” or “tissue plasminogen activator” or “tPA” or “urokinase” or “pro-urokinase”]。
Cochrane LibraryおよびCochrane Central Register of Controlled Trials,検索された文献のハンドサーチも実施。
対象 後ろ向き症例シリーズ14件+症例報告22件,180例。頸動脈解離による虚血性脳卒中に対し24時間以内に行われた血栓溶解療法(静脈内/動脈内)を調査したもの。
除外:解離が頭蓋内の血管に限定されている,頸動脈に進展している大動脈解離。
患者背景:男性32%。年齢46±11歳。外傷性17%。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)スコア中央値16(IQR 11~20)。解離の部位:頸動脈73%,椎骨動脈27%,両方1%。治療前の閉塞83%。頭蓋内への進展10%。発症から治療までの時間中央値165(IQR 125~225)分。治療:静脈内67%,動脈内33%。追跡期間中央値3.0(範囲2.0~18)ヵ月。
主な結果 ・全体の結果(180例)
症候性頭蓋内出血発生率は3.1%(95%CI 1.3-7.2)であった。
死亡率は8.1%(95%CI 4.9-13.2)であった。
脳卒中再発率は4.5%(95%CI 2.3-8.7)であった。
転帰優良(mRS 0~1)は41.0%(95%CI 31.4-51.4),転帰良好(mRS 0~2)は59.5%(95%CI 52.1-66.6)であった。

・静脈内血栓溶解療法を受けた121例の結果
症候性頭蓋内出血発生率は3.3%(95%CI 1.2-8.5)であった。
死亡率は6.7%(95%CI 3.4-13.8)であった。
脳卒中再発率は6.8%(95%CI 3.4-13.0)であった。
転帰優良は33.3%(95%CI 25.5-42.2),転帰良好は60.8%(95%CI 51.8-69.1)であった。

脳卒中の重症度は転帰の予測因子であった(転帰優良:OR 0.9,95%CI 0.8-0.9,転帰良好:OR 0.9,95%CI 0.8-0.9)。

SITS-ISTRから抽出した合致させた対照群と信頼区間が重複していたことから,症候性頭蓋内出血,死亡率,機能的転帰について関連のある差異は認められなかった。
NINDS基準症候性頭蓋内出血:5.9%(95%CI 3.0-10.9)。
ECASS II基準症候性頭蓋内出血:3.0%(95%CI 1.1-17.4)。
死亡率:8.8%(95%CI 5.1-14.5)。
転帰優良:37.4%(95%CI 30.3-45.8)。
転帰良好:52.2%(95%CI 44.2-60.1)。
文献: Zinkstok SM, et al. Safety and functional outcome of thrombolysis in dissection-related ischemic stroke: a meta-analysis of individual patient data. Stroke 2011; 42: 2515-20. pubmed
関連トライアル Bern Stroke Project, Bichat Clinical Registry, ECASS, ECASS III, Engelter ST et al, J-MARS, Mattle HP et al, MERCI and Multi MERCI, Sarikaya H et al (posterior circulation stroke), Schellinger PD et al, Singer OC et al, SITS-ISTR antiplatelet therapy, SITS-ISTR blood pressure, SITS-ISTR elderly, SITS-MOST, SITS-MOST multivariable analysis, Strbian D et al Ultra-Early Thrombolysis, Toni D et al, ultrasound-enhanced thrombolysisの安全性および有効性
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