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APPRAISE-2 Apixaban for Prevention of Acute Ischemic Events 2
結論 虚血リスク因子を有する最近発症の急性冠症候群(ACS)患者において,標準的抗血小板療法へのapixabanの追加は,虚血イベントを抑制することなく大出血イベントを増加させる可能性が示唆された。
コメント 新規経口抗凝固薬は深部静脈血栓症の予防,治療にて用量設定を行い,心房細動の脳血栓塞栓症予防にて市場を拡大する戦略である。心房細動症例における脳梗塞発症リスクは年間数%にすぎないので,重篤な出血性合併症が年間3%程度起こることが明らかになった現状では,新規経口抗凝固薬は血栓イベントリスクの高い心房細動症例に限局的に使用されることに落ち着くと想定される。すなわち,心房細動の脳梗塞予防では市場は限られていることが明らかになった。欧米諸国では急性冠症候群などの虚血性心疾患の治療管理の進歩には注目が集まる。理論的に有効,安全と想定された経口抗Xa薬の急性冠症候群への適応拡大には期待が集まった。しかし,実臨床を素直に振り返れば,アスピリン/クロピドグレルにてすでに抗血栓効果としては十分強力である。仮にアスピリンが上部消化管傷害を惹起すれば出血イベントが抗Xa薬により増強することも危惧される。現在の標準的な抗血小板療法に追加するのではなくて,それと置き換えるような試験デザインを限局的な症例に適応することを将来考える必要があろう。(後藤信哉

目的 ACS患者では,抗血小板薬2剤併用療法を受けていてもしばしば虚血イベントの再発がみられる。本試験では,複数の虚血イベント再発リスク因子をもつACS患者において,標準的抗血小板療法にapixabanを追加することによる虚血イベント抑制のベネフィットが,出血リスク上昇を上回るか検討する。有効性の一次エンドポイント:心血管死,心筋梗塞,脳梗塞の複合。安全性の一次エンドポイント:TIMI出血基準大出血。
デザイン ランダム化,二重盲検。有効性:intention-to-treat解析,安全性:on treatment解析。NCT00831441。
セッティング 多施設(858施設),39カ国(日本含む)。
期間 患者登録期間は2009年3月17日~2010年11月18日。追跡期間中央値は241日。独立データモニタリング委員会の中止勧告により,当初予定よりも早期に中止。
対象患者 7392例。7日以内のACS(ST上昇型/非上昇型心筋梗塞,不安定狭心症)で,安静時に心筋虚血の症状が10分以上持続し,かつバイオマーカー上昇または0.1mV以上のST逸脱が認められた患者のうち,状態が安定しており,標準的抗血小板療法(aspirin単独またはaspirin+P2Y 12受容体拮抗薬併用)を受けている者。さらに,リスク因子(65歳以上,糖尿病,5年以内の心筋梗塞,脳血管疾患,末梢血管疾患,当該イベントに関連した心不全またはLVEF≦40%,クレアチニンクリアランス<60mL/分の腎障害,当該イベント後血行再建術を受けていない)を複数有する者。
【除外基準】重篤な持続性高血圧,重篤な腎障害(クレアチニンクリアランス<20mL/分),活動性出血または出血高リスク,既知の凝固障害,7日以内の脳梗塞,NYHAクラスIVの心不全,頭蓋内出血の既往,ヘモグロビン<9g/dL,血小板数<10万mm 3,抗凝固療法継続の必要,高用量aspirin(>325mg/日)または強力なCYP3A4阻害薬の必要,急性心膜炎,活動性肝胆汁性疾患など。
【患者背景】年齢中央値(IQR)はapixaban群67(59~73)歳,プラセボ群67(58~74)歳。女性32.6%,31.7%。リスク因子:65歳以上58.8%,59.0%,糖尿病48.7%,47.0%,5年以内の心筋梗塞24.9%,27.5%,脳血管疾患10.2%,9.9%,末梢血管疾患17.9%,18.3%,当該イベントに関連した心不全またはLVEF≦40% 40.2%,40.1%,腎障害28.3%,29.5%,当該イベント後血行再建術を受けていない55.6%,55.2%。イベント発症からランダム化まで6(4~7)日,6(4~7)日。当該イベント:ST上昇型心筋梗塞39.8%,39.4%,非ST上昇型心筋梗塞41.4%,41.8%,不安定狭心症18.2%,18.1%。
治療法 施設,抗血小板薬併用療法の予定により層別化後,apixaban群(3705例。5mg,1日2回)またはプラセボ群(3687例)にランダム化。クレアチニンクリアランス<40mL/分の患者(対象患者の8.5%)ではapixabanは2.5mg,1日2回に減量した。
ランダム化時,97%がaspirinを,81%がaspirin+P2Y 12受容体拮抗薬併用(おもにclopidogrel)投与を受けていたが,併用療法を受けていたうち1310例(21.5%)は試験中P2Y 12受容体拮抗薬の使用を中止した。
追跡完了率 追跡不能は50例(0.7%)。
結果

●評価項目
2010年11月,独立データモニタリング委員会は,apixaban群において臨床的に重要な出血の増加がみられた一方,これを補うに足る虚血イベントの抑制が認められなかったため試験中止を勧告し,同18日に患者登録が中止され,全例において試験薬投与が中止された。
有効性の一次エンドポイント(心血管死,心筋梗塞,脳梗塞の複合)はapixaban群279/3705例(7.5%,13.2/100例・年),プラセボ群293/3687例(7.9%,14.0/100例・年)と同等であった(HR 0.95;95%CI 0.80-1.11,p=0.51)。
この結果について,バックグラウンドの抗血小板療法(aspirin単独または併用)による差違は認められなかった; aspirin単独:apixaban群9.0%,プラセボ群9.8%(HR 0.92;0.66-1.29),併用:7.2% vs. 7.5%(HR 0.95;95%CI 0.79-1.15)(交互作用p=0.87)。
一次エンドポイントの各項目は以下の通り。
心血管死:2.8% vs. 3.0%,HR 0.96;0.73-1.25,p=0.76。
心筋梗塞:4.9% vs. 5.3%,HR 0.93;0.76-1.14,p=0.51。
脳梗塞:0.6% vs. 0.9%,HR 0.68;0.40-1.15,p=0.14。

●有害事象
大出血はapixaban群46/3673例(1.3%,2.4/100例・年)と,プラセボ群18/3642例(0.5%,0.9/100例・年)に比し上昇した(HR 2.59; 1.50-4.46,p=0.001)。
バックグラウンドの抗血小板療法別では,併用:1.3% vs. 0.6%(HR 2.27;1.28-4.02),aspirin単独:1.1% vs. 0.1%。
致死的出血[5例(0.1%)vs. 0例],頭蓋内出血[12例(0.3%)vs. 3例(0.1%),HR 4.06;1.15-14.38,p=0.03]はいずれもapixaban群の方が多かった。
肝毒性について群間差は認められなかった。

文献: Alexander JH, et al.; APPRAISE-2 Investigators. Apixaban with antiplatelet therapy after acute coronary syndrome. N Engl J Med 2011; 365: 699-708. pubmed
関連トライアル AAA, AAASPS 2003, ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, ACTIVE A, ADOPT, ADVANCE, ADVANCE-2, AMPLIFY, AMPLIFY-EXT, APPRAISE, APROPOS, ARISTOTLE, ARISTOTLE previous stroke/TIA, ARISTOTLE renal function, ARISTOTLE risk score, ARISTOTLE-J, ASPIRE, ATLAS ACS 2-TIMI 51, ATLAS ACS 2-TIMI 51 STEMI patients, ATLAS ACS-TIMI 46 , AVERROES, AVERROES bleeding, AVERROES previous stroke/TIA, Botticelli, CAD患者に対するPAR-1拮抗薬の安全性および有効性, CHAMPION PLATFORM, CHANCE, CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, COGENT, COMPASS, COURAGE, CREDO, DAC, ESPRIT , Flynn RW et al, Gurfinkel EP et al, J-LANCELOT, JPAD, MATCH, OPUS-TIMI 16, PARAGON-A, PLATO, PLATO history of stroke, PLATO total events, PRISM, PRISM-PLUS 1998, PRoFESS, PURSUIT 1998, REAL-LATE / ZEST-LATE, RESTORE, RUBY-1, SEPIA-ACS1 TIMI 42, SPS3, SYMPHONY, TRA 2P-TIMI 50, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction, TRA 2P-TIMI 50 prior ischemic stroke, TRACER, TRILOGY ACS, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 early and late benefits, TRITON-TIMI 38 PCI, TRIUMPH nuisance bleeding, WARCEF, WARFASA, WAVE, WHS, 急性脳梗塞/TIA患者への抗血小板療法:2剤併用療法と単剤療法の比較, 抗血小板療法中のACS後の患者に対する新規抗凝固薬の使用
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