抗血栓トライアルデータベース
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RUBY-1
結論 急性冠症候群(ACS)患者において,標準抗血小板薬併用療法へのdarexaban追加は,予期された通り用量依存的に2~4倍の出血発生率の上昇がみられた。他に安全性の問題は認められなかったが,有効性の兆候もみられなかった。
コメント 心筋梗塞は,動脈硬化巣破綻部位への血小板の集積,活性化,その後の凝固系活性化と血管閉塞性フィブリン血栓の形成により惹起される。急性冠症候群を心筋梗塞の前段階ととらえれば,選択的抗Xa薬による凝固系の阻害は心筋梗塞発症予防に有用と想定される。この仮説の検証は難しい。アピキサバンの試験(APPRAISE-2)は出血性合併症を上回るメリットがないとして中途で中断された。リバーロキサバンの試験は継続中であり,今後の結果の発表に期待が集まる。ダレキサバンは日本のアステラス製薬の開発品であるが,残念ながらphase IIにて脱落した。病態から考えて十分に意味のある試験と思われるので,症例の選択基準,エンドポイント,併用薬などにどれだけ工夫を加えられるか?が勝負であるが,ダレキサバンはphase IIIの勝負に挑む前に脱落してしまった。(後藤信哉

目的 ACS患者の虚血イベント予防として,標準治療(aspirinかつ/またはclopidogrel)へのdarexaban追加の安全性,忍容性を検討する。一次エンドポイント:試験期間中のISTH出血基準による大出血および臨床的に問題となる非大出血。有効性のエンドポイント:死亡,脳卒中,心筋梗塞(MI),全身性塞栓症,重度の虚血再発の複合。
デザイン ランダム化,二重盲検,phase II試験。modified intention-to-treat解析。NCT00994292。
セッティング 多施設(152施設),24カ国。
期間 登録期間は2009年9月~2010年7月。
対象患者 1279例。18歳以上,心バイオマーカー上昇,臨床的に安定,標準的抗血小板療法を受けている,発作から7日以内のST上昇型ACS(ST-ACS)/非ST上昇型ACS(NSTE-ACS)患者。NSTE-ACS患者では,追加的虚血イベントリスク[ST逸脱,65歳以上,12ヵ月前までのACS既往,多枝疾患,12ヵ月以上前までの脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)既往,2型糖尿病,末梢動脈疾患]を有する者。
【除外基準】抗凝固療法/線溶療法/GP IIb/IIIa受容体拮抗薬/他の抗血小板療法を必要とする疾患,出血リスク上昇をともなう侵襲的手技を60日以内に予定,活動性出血または出血高リスク,12ヵ月前までの脳卒中/TIA既往,持続性高血圧,肝機能障害,クレアチニンクリアランス<60mL/分など。
【患者背景】年齢は全darexaban群56.6±10.4歳,プラセボ群57.5±10.4歳。各群の女性19.2%,24.1%。人種:白人78.2%,80.6%,黒人0.9%,0%,アジア人17.7%,16.9%。喫煙:喫煙経験22.8%,26.0%,現喫煙41.6%,43.9%。高血圧60.3%,60.8%。脂質異常症50.5%,48.0%。2型糖尿病23.1%,18.8%。当該イベント:STEMI 71.8%,69.0%,NSTEMI 28.2%,31.0%。当該イベントに対しPCI施行74.9%,73.7%。clopidogrel併用96.5%,96.9%。
治療法 国,clopidogrel使用の有無により層別化後,darexaban群(5mg×2回群:160例,10mg×1回群:163例,15mg×2回群:161例,30mg×1回群:158例,30mg×2回群:158例,60mg×1回群:155例),プラセボ群(324例)にランダム化,26週投与。
標準治療として,地域の基準にしたがいaspirin 75~325mg/日(75~81mg/日を推奨)またはclopidogrel 75mg/日(aspirinが禁忌または忍容性がない場合),もしくはaspirin 75~325mg+clopidogrel 75mg/日併用投与(当該イベントの7日後まではclopidogrel の150mgまでの投与を許可)。
追跡完了率 安全性の解析対象は1258/1279例。
結果

●評価項目
試験薬中止はdarexaban群23.7%,プラセボ群21.3%。
ISTH出血基準による大出血および臨床的に問題となる非大出血発生率は,数値上は全darexaban群の方が高かった(pooled HR 2.275;95%CI 1.13-4.60,p=0.022)。プラセボを参照とすると(発生率3.1%),darexaban群の用量依存性の出血リスク上昇が認められた(p=0.009,5mg×2回群6.8%,10mg×1回群5.6%,15mg×2回群7.5%,30mg×1回群5.6%,30mg×2回群11.3%,60mg×1回群7.3%)。30mg×2回群はプラセボ群に比し有意に高かった(p=0.002)。 致死的出血,頭蓋内出血は認められなかった。
darexaban による有効性のエンドポイントの抑制はみられなかったが(5mg×2回群4.3%,10mg×1回群4.3%,15mg×2回群7.4%,30mg×1回群7.3%,30mg×2回群6.9%,60mg×1回群9.3%,プラセボ群5.2%),本試験は有効性については検出力不足であった。

●有害事象
darexabanの肝毒性はみられなかった。

文献: Steg PG, et al.; on behalf of the RUBY-1 Investigators. RUBY-1: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial of the safety and tolerability of the novel oral factor Xa inhibitor darexaban (YM150) following acute coronary syndrome. Eur Heart J 2011; 32: 2541-54. pubmed
関連トライアル ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, AMPLIFY, AMPLIFY-EXT, APPRAISE, APPRAISE-2, APROPOS, ARISTOTLE, ATLAS ACS 2-TIMI 51, ATLAS ACS 2-TIMI 51 STEMI patients, ATLAS ACS-TIMI 46 , Botticelli, CREDO, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, HORIZONS-AMI , J-LANCELOT, OASIS-5 and 6, OASIS-6, ODIXa-HIP, ODIXa-KNEE, On-TIME 2 pooled analysis, PLATO, RESTORE, SEPIA-ACS1 TIMI 42, SYNERGY, TAO, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction, TRACER, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 PCI
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