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ROCKET AF Rivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation
結論 非弁膜症性心房細動患者の脳卒中,非中枢神経系塞栓症予防において,rivaroxabanはwarfarinに対し非劣性を示した。重大な出血の発生率は同等であったが,頭蓋内出血および致死的出血はrivaroxaban群で抑制された。
コメント ようやくROCKET AF試験が論文化された。2010年のAHAで発表されたものに加えてより詳細な結果が示されている。本試験では,リバーロキサバンのワルファリンに対する非劣性が,二重盲検比較試験において確認された。なお,ITT解析群(割り付けられた患者全例)の治療中と中止後をみると,治療中はリバーロキサバン群で有意にprimary event発生率が低いが,中止後から試験終了まででは,優越性は認められなかった。Appendixによれば,リバーロキサバン群のうち治験薬を中止した症例では,ワルファリンへの切り替えに際し,PT-INRが治療域に達するまでに時間を要している(平均13日)。したがって,実際の医療現場では,治療域到達までに長時間を要するワルファリンに切り替える場合には,塞栓症のリスクにさらされる期間が生じることを考慮し,より慎重な対応が必要と考えられる。大出血に関しては,トータルでは有意差はないが,消化管出血がワルファリンに比し多いことに留意すべきである。頭蓋内出血はワルファリンに比し有意に少ないが,これはダビガトラン同様第VII因子を減少させないことから,新規経口抗凝固薬に共通した利点であろう。(是恒之宏

本研究を通して,非弁膜症性心房細動に伴う「脳卒中と全身塞栓症」予防効果における経口抗Xa薬であるリバーロキサバンのワルファリンに対する非劣性が二重盲検比較試験で証明された。同時に頭蓋内出血発症率はリバーロキサバン投与群で有意に低いことが明らかにされた。この事実は非弁膜症性心房細動に伴う脳梗塞再発予防を図る脳卒中診療医にとって素晴らしいニュースである。なぜなら脳梗塞の既往は脳梗塞再発の大きな危険因子であるとともに,頭蓋内出血の大きなリスクでもあるからだ。十分な抗凝固作用を発揮し,頭蓋内出血が少ないというプロファイルは脳梗塞再発予防にきわめて好ましい。頭蓋内出血が少ないのは,①ワルファリンと比較して凝固抑制ポイントが少ないこと,②安全域が広いこと,③血中濃度にピークとトラフを有し,トラフでは出血が少ないと期待されること,④第VII因子濃度に影響を及ぼさないため,組織損傷時に脳に多い組織因子と活性型第VII因子がすみやかに複合体を形成し,凝固カスケードが発動しやすいためと推定される。本薬の実地診療における脳梗塞二次予防の臨床効果が期待される。(矢坂正弘

目的 非弁膜症性心房細動患者において,rivaroxaban 1日1回投与がwarfarin用量調整投与に対し非劣性を示すか検討する(非劣性マージン1.46)。有効性の一次エンドポイント:脳卒中(虚血性/出血性),非中枢神経系塞栓症の複合。安全性の一次エンドポイント:ROCKET AF出血基準による重大な出血および重大ではないが臨床的に問題となる出血の複合。
解析は次の3つの解析を順次実施した。
(1)大きなプロトコール違反がなく治験薬を1回以上投与された集団の治験薬投与下(投与終了・中止2日後まで)におけるrivaroxabanのwarfarinに対する非劣性の検証(Per-protocol, as treated population during treatment)
 解析対象:rivaroxaban群6958例,warfarin群7004例
(2)プロトコール遵守状況にかかわらず治験薬を1回以上投与された集団の治験薬投与下(投与終了・中止2日後まで)におけるrivaroxabanのwarfarinに対する優越性の検証(Safety, as treated population during treatment)
 解析対象:rivaroxaban群7061例,warfarin群7082例
(3)割り付けられた患者全例の試験終了までにおけるrivaroxabanのwarfarinに対する非劣性と優越性の検証(intention-to-treat population followed up until notification of study termination)
 解析対象:rivaroxaban群7081例,warfarin群7090例
デザイン ランダム化,二重盲検,ダブルダミー。NCT00403767。
セッティング 多施設(1178施設),45カ国。
期間 ランダム化期間は2006年12月18日~2009年6月17日。試験終了は2010年5月28日。治験薬投与期間中央値は590日,追跡期間中央値は707日。
対象患者 14264例。18歳以上,心電図で確定診断され,かつ心房細動の医学的証拠を有する非弁膜症性心房細動患者で,脳卒中リスクが中等度~高度の症例(CHADS2スコア≧2)。なお,脳梗塞,一過性脳虚血発作(TIA),非中枢神経系塞栓症の既往のない症例,およびリスク因子が2つしかない症例は全体の10%となるよう制限し,残りの症例は血栓塞栓症の既往もしくは3つ以上のリスク因子を有することを必須とした。
【除外基準】血行動態的に重篤な僧帽弁狭窄,人工心臓弁,電気的除細動の予定,治療可能な疾患による一時的な心房細動,心房粘液腫または左室血栓,活動性心内膜炎,活動性内部出血,出血高リスク,侵襲的手技の予定,血小板数<9万/mm3,管理不良の高血圧,3カ月以内の重症脳卒中,14日以内のすべての脳卒中,3日以内のTIA,心房細動以外の抗凝固療法を要する疾患,>100mg/日のaspirin,5日以内のaspirin+チエノピリジン併用,5日以内の抗血小板薬静注,10日以内の線溶療法(≦100mg/日のaspirin単独およびチエノピリジン単独療法は許可),NSAIDsの長期使用が予測される,4日以内の強力なcytochrome P450 3A4阻害薬の全身投与または投与予定,貧血,クレアチニンクリアランス<30mL/分,既知の重篤な肝疾患など。
【患者背景】年齢はrivaroxaban群73(65~78)歳,warfarin群73(65~78)歳。女性39.7%,39.7%。BMI 中央値28.3,28.1。心房細動:持続性81.1%,80.8%,発作性17.5%,17.8%。薬剤投与歴:aspirin 36.3%,36.7%,ビタミンK拮抗薬62.3%,62.5%。CHADS2スコア3.48±0.94,3.46±0.95。脳卒中/非中枢神経系塞栓症/TIA既往54.9%,54.6%。うっ血性心不全62.6%,62.3%,高血圧90.3%,90.8%,糖尿病40.4%,39.5%,心筋梗塞既往16.6%,18.0%,末梢血管疾患5.6%,6.1%,慢性閉塞性肺疾患10.6%,10.4%。クレアチニンクリアランス67(52~88)mL/分,67(52~86)mL/分。
治療法 以下の2群にランダム化。
rivaroxaban群:7131例。rivaroxaban 20mg/日(クレアチニンクリアランス30~49mL/分の腎障害患者では15mg/日)1日1回投与。
warfarin群:7133例。PT-INR 2.0~3.0となるよう用量調整投与。
追跡完了率 99.8%(追跡不能は14264例中32例)。
結果

●評価項目
warfarin群のINR治療域内時間(TTR)は58(IQR 43~71)%。
治験薬服用の早期中止はrivaroxaban群23.7%,warfarin群22.2%。

一次エンドポイント(脳卒中,非中枢神経系塞栓症の複合)は以下の通りであった。
(1)大きなプロトコール違反がなく治験薬を1回以上投与された集団の治験薬投与下における解析では,rivaroxabanのwarfarinに対する非劣性が認められた。
rivaroxaban群188例(1.7/100人・年)vs. warfarin群241例(2.2/100人・年)(HR 0.79;95%CI 0.66-0.96,非劣性p<0.001)。
(2)プロトコール遵守状況にかかわらず治験薬を1回以上投与された集団の治験薬投与下における解析では,rivaroxabanのwarfarinに対する優越性が示された。
189例(1.7/100人・年)vs. 243例(2.2/100人・年)(HR 0.79;0.65-0.95,優越性p=0.02)。
(3)割り付けられた患者全例の試験終了までにおける解析では,rivaroxabanのwarfarinに対する非劣性が認められたが,優越性は認められなかった。
269例(2.1/100人・年)vs. 306例(2.4/100人・年)(HR 0.88;0.74-1.03,非劣性p<0.001,優越性p=0.12)。
なお,試験期間のうち治験薬投与下ではrivaroxabanの優越性が認められたが,治験薬中止後の期間では認められなかった。
【治験薬投与下】188例(1.7/100人・年)vs. 240例(2.2/100人・年)(HR 0.79;0.66-0.96,優越性p=0.02)。
【治験薬中止後】81例(4.7/100人・年)vs. 66例(4.3/100人・年)(HR 1.10;0.79-1.52,優越性p=0.58)。

全脳卒中:184例(1.65/100人・年)vs. 221例(1.96/100人・年),p=0.092。
出血性脳卒中:29例(0.26/100人・年)vs. 50例(0.44/100人・年),p=0.024。
脳梗塞:149例(1.34/100人・年)vs. 161例(1.42/100人・年),p=0.581。
非中枢神経系塞栓症:5例(0.04/100人・年)vs. 22例(0.19/100人・年),p=0.003。

●有害事象
重大な出血および重大ではないが臨床的に問題となる出血はrivaroxaban群1475例(14.9/100人・年),warfarin群1449例(14.5/100人・年)と同等であった(HR 1.03;0.96-1.11,p=0.44)。
重大な出血:395例(3.6/100人・年)vs. 386例(3.4/100人・年),p=0.58。
重大ではないが臨床的に問題となる出血:1185例(11.8/100人・年)vs. 1151例(11.4/100人・年),p=0.35。
頭蓋内出血,致死的出血はrivaroxaban群で抑制された。
頭蓋内出血:55例(0.5/100人・年)vs. 84例(0.7/100人・年),p=0.02。
致死的出血:27例(0.2/100人・年)vs. 55例(0.5/100人・年),p=0.003。

文献: Patel MR, et al.; the ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91. pubmed
関連トライアル ACTIVE A, AFASAK 2 1999, AMADEUS, ARISTOTLE, ARISTOTLE previous stroke/TIA, ARISTOTLE risk score, ARISTOTLE time in therapeutic range, ARISTOTLE type and duration of AF, ATLAS ACS 2-TIMI 51, ATLAS ACS-TIMI 46 , AVERROES, AVERROES bleeding, BAATAF, BAFTA, dabigatran,rivaroxaban,apixabanの間接比較, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, EINSTEIN-PE, ENGAGE AF-TIMI 48, Hokusai-VTE, Hylek EM et al, J-ROCKET AF, J-ROCKET AF renal impairment, JNAF-ESP, Larsen TB et al, MAGELLAN, ODIXa-OD-HIP, Olesen JB et al, Pengo V et al, PROTECT AF, RE-ALIGN, RE-COVER, RE-LY, RE-LY Asian subgroup, RE-LY concomitant use of antiplatelet, RE-LY exposure of VKA, RE-LY previous TIA or stroke, RE-LY quality of INR control, RE-LY risk of bleeding, RECORD1, RECORD2, RECORD3, RECORD4, ROCKET AF cardioversion/ablation, ROCKET AF East Asian patients, ROCKET AF elderly patients, ROCKET AF major bleeding, ROCKET AF post hoc analysis, ROCKET AF previous stroke/TIA, ROCKET AF renal dysfunction, ROCKET AF temporary interruption, ROCKET-AF persistent vs. paroxysmal, SPAF, SPAF II 1996, SPAF III 1996, SPORTIF elderly patients, SPORTIF II , SPORTIF III, SPORTIF pooled analysis, SPORTIF risk of bleeding, SPORTIF V, Veterans Affairs Stroke Prevention
in Nonrheumatic Atrial Fibrillation
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