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OTPE Outpatient Treatment of Pulmonary Embolism
結論 選択された低リスクの肺塞栓症(PE)患者では,入院ではなく外来治療でも安全,効果的に治療しうる。
コメント 本研究は,pulmonary embolism severity indexに基づいた急性期死亡リスクの低い急性症候性肺血栓塞栓症患者を対象として,低分子量ヘパリン(エノキサパリン)を用いた外来治療が入院治療と同等の効果と安全性を有していることを示した意義深いランダム化比較試験である。過去に報告された別の基準によるリスク評価を行ったランダム化比較試験では,死亡例が許容範囲以上に発生したことを理由に早期に中断されたという経緯があり,安全に外来治療を行う上で患者を選別するリスク評価基準が重要であることが示唆された。本研究で用いられた低分子量ヘパリンは本邦では肺血栓塞栓症に対する治療薬としては承認されておらず,今後は本邦でも使用可能なフォンダパリヌクスや,将来的には現在開発中の新しい経口抗Xa薬や抗IIa薬による外来治療の検討が望まれる。(山田典一

目的 ガイドラインでは血行動態が安定している一部のPE患者には外来治療を推奨しているが,実際にはほとんどの患者に対し入院治療が行われている。本試験では,pulmonary embolism severity index(PESI)を用いて死亡リスクの低い急性症候性PE患者を選択し,外来治療が入院治療に比し非劣性を示すか検討する。一次エンドポイント:割り付けから90日以内の客観的に確認された症候性静脈血栓塞栓症(PEまたは深部静脈血栓症)。二次エンドポイント:割り付けから14日または90日以内のISTH出血基準大出血,90日以内の全死亡。
デザイン PROBE(prospective,randomized,open,blinded endpoints),非劣性試験(非劣性マージン4.0%)。NCT00425542。
セッティング 多施設(19施設),4カ国(スイス,フランス,ベルギー,米国)。
期間 患者登録期間は2007年2月~2010年6月。
対象患者 344例。18歳以上;客観的に診断された急性症候性PE患者連続例で,死亡リスクが低い(PESI IまたはII)症例。
【除外基準】動脈低酸素血症,SBP<100mmHg,非経口オピオイドを必要とする胸痛,活動性出血,出血高リスク(10日以内の脳卒中),14日以内の消化管出血または血小板数<75000mm3,重度の腎不全,過度の肥満,ヘパリン起因性血小板減少症の既往,PE診断時の抗凝固療法(INR≧2.0),妊娠,PEの診断が23時間以上前など。
【患者背景】年齢は外来群47±16歳,入院群49±15歳。各群の男性49%,51%。静脈血栓塞栓症既往18%,24%。癌1%,2%。72時間超の臥床8%,8%。4週以内の手術8%,7%。エストロゲン療法23%,20%。血栓性素因の既往4%,4%。最初の入院期間0.5±1.0日,3.9±3.1日。
治療法 以下の2群にランダム化。
外来群:171例。enoxaparin皮下注射(1mg/kg,1日2回)を自分で行えるよう指導し,割り付けから24時間以内に退院させた。自己注射が不可能な患者には,介護者に注射方法を教えるか,もしくは注射のための訪問看護を手配して在宅注射を可能にした。
入院群:168例。入院にてenoxaparin 1mg/kg,1日2回皮下注。
両群とも経口ビタミンK拮抗薬(warfarinなど)の早期開始および90日以上の服用を推奨した。enoxaparinは5日以上投与後,INRが2日連続して2.0以上になった時点で中止とした。
追跡完了率 追跡不能3例(外来群1例,入院群2例),試験参加同意撤回2例。
結果

●評価項目
INR治療域内時間(TTR)は外来群51.8%,入院群52.5%と同等であった。
90日以内の静脈血栓塞栓症再発は外来群1例(0.6%),入院群0例で,外来治療の入院治療に対する非劣性が認められた[差の95%信頼区間上限(UCL)2.7%,非劣性p=0.011)。外来群の1例はday 83に発症したPEであった。
90日以内の全死亡は両群各1例(0.6%)で,上記同様に非劣性が認められた(差の95%UCL 2.1%,非劣性p=0.005)。

●有害事象
14日以内の大出血は外来群2例(1.2%),入院群0例で,外来治療の入院治療に対する非劣性が認められた(差の95%UCL 3.6%,非劣性p=0.031)。外来群の出血はいずれも筋肉内出血であった。
90日以内の大出血は外来群3例(1.8%),入院群0例で,非劣性基準に合致しなかった(差の95%UCL 4.5%,非劣性p=0.086)。外来群における出血の内訳は筋肉内出血2例,機能性子宮出血1例であった。

文献: Aujesky D, et al. Outpatient versus inpatient treatment for patients with acute pulmonary embolism: an international, open-label, randomised, non-inferiority trial. Lancet 2011; 378: 41-8. pubmed
関連トライアル ACE , ADOPT, ADVANCE-2, AMADEUS, CASSIOPEA, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, EINSTEIN-PE, FIDO, Hestia Study, Matisse Study, PREVAIL, PREVENT 2004, PROTECT AF, RECORD1, RECORD2, RECORD3, RECORD4, THRIVE, TIMI 11B, van Gogh Studies prophylaxis
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